著者の所属・活動拠点の国は、南アフリカです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

タマネギ・土壌・灌漑水の細菌を調べる

研究チームは、南アフリカのベンベ地域で、タマネギとその栽培環境にどのような腸内細菌が存在するかを調べました。特に、植物と関わりを持ち、一部は病気にも関与するエンテロバクター属に注目しました。この地域では、タマネギ、土壌、灌漑水に含まれるこれらの細菌について、情報が限られていました。

対象は、川の水で灌漑する自給的な農場2か所と、井戸水を使う商業農場1か所です。タマネギ、土壌、水から計36検体を採取し、細菌を培養しました。研究チームは、培地上で増えた集落の見た目をもとに代表的な36株を選び、生化学的な性質による同定や、一部の菌の遺伝子配列の解析、抗菌薬への反応を調べました。

タマネギで多く見つかったエンテロバクター

選ばれた36株からは13種の細菌が確認されました。最も多かったのは、近縁な細菌をまとめたエンテロバクター・クロアカエ複合群の10株で、タマネギ由来が8株、土壌と灌漑水由来が各1株でした。このほか、セレウス菌が9株、クレブシエラ・オキシトカが4株見つかり、試料の種類によって細菌の構成が異なっていました。

研究チームがクロアカエ複合群の10株について、細菌の識別に使われる16S rRNA遺伝子の配列を比較したところ、すべてがエンテロバクター・ルドウィギイの参照株と近いグループに入りました。著者らは、同地域のタマネギ、土壌、灌漑水でこの菌を見いだした初の報告と位置づけています。一方で、近縁なエンテロバクター属の菌を種まで確定するには、この遺伝子の解析だけでは十分でないとも記しています。

抗菌薬への耐性も報告

抗菌薬への反応を調べた6種の細菌では、薬剤ごとに異なる耐性が見られました。論文によると、クロアカエ複合群は試験した19剤のうち10剤に耐性を示し、6種の中で最も多くの薬剤に耐性がありました。また、6種すべてでコリスチンへの耐性が報告されました。ただし、この研究は薬剤への反応を調べたもので、耐性の原因となる遺伝子は調べていません。

今回の研究は、タマネギだけでなく、土壌や灌漑水にも、病気に関わりうる細菌や抗菌薬に耐性を示す細菌が存在することを報告しました。著者らは、食品の衛生を考えるうえで、作物とともに水や土壌を含む栽培環境にも目を向ける重要性を示しています。

原著論文の著者・所属:Afsatou Ndama Traoré(Biochemistry and Microbiology Department, University of Venda, Thohoyandou 0950, South Africa)、Elelwani Lukheli(Biochemistry and Microbiology Department, University of Venda, Thohoyandou 0950, South Africa)、Damien Georges Jacobs(Biochemistry and Microbiology Department, University of Venda, Thohoyandou 0950, South Africa)、Ceryl Mphedziseni Mampheu(Biochemistry and Microbiology Department, University of Venda, Thohoyandou 0950, South Africa)、Tiisetso Colleen Maphaisa(Biochemistry and Microbiology Department, University of Venda, Thohoyandou 0950, South Africa)、Natasha Potgieter(Biochemistry and Microbiology Department, University of Venda, Thohoyandou 0950, South Africa)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Afsatou Ndama Traoré, Elelwani Lukheli, Damien Georges Jacobs, et al. First Report of Enterobacter ludwigii and Other Potentially Pathogenic Enteric Bacteria in Onions, Soil, and Irrigation Water from the Vhembe Region, South Africa. Foods 2026-08-28. DOI: 10.3390/foods15173046. 原著ライセンス:CC BY.