ジュースやピューレを作る過程で出る野菜や果物の搾りかす、皮、種などの「副産物」は、食品業界で大量に発生しています。こうした副産物は多くの場合廃棄されていますが、ビタミンやポリフェノールなどの成分をまだ含んでいることが多く、有効活用できれば環境負荷の軽減と資源の有効利用の両方につながる可能性があります。今回紹介する研究では、トマト、リンゴ、オレンジの副産物を対象に、乳酸菌を使った発酵によってこれらを価値ある食品素材に変えられないか、さらに人工知能(AI)を使って発酵条件を効率よく見つけられないかが検討されました。

研究チームは、トマト・リンゴ・オレンジそれぞれの副産物に、Lactiplantibacillus plantarum(ラクチプランティバチルス・プランタルム)という乳酸菌の菌株を加えて発酵させ、発酵中の菌の増殖の様子を経時的に観察しました。同時に、得られた実験データをもとに機械学習モデルを構築し、発酵中の菌の増殖の速さや、増殖が始まるまでの時間(ラグタイム)などを予測できるようにしたと報告されています。このモデルの精度を確かめるため、32℃・菌の接種量約10の8乗CFU/mLという条件での菌の増殖を予測し、実際の実験結果と比較したところ、両者はおおむね一致し、予測誤差を示す指標(RMSE)は基質や増殖パラメータによって0.143(リンゴにおける最大増殖速度)から7.155(オレンジにおけるラグタイム)の範囲にとどまり、モデルは信頼できる予測性能を示したとされています。

発酵副産物を使った食品では抗酸化に関する指標が向上

モデルによる検証を経たのち、研究チームは相性の良い副産物と菌株の組み合わせを選び、それらを使って実際に食品を試作しました。発酵させた副産物を機能性の原料として食品に配合したところ、できあがった製品はDPPH法という手法で調べた抗酸化活性と、フェノール化合物の総量(総フェノール含量)がいずれも高まったことが確認されたと報告されています。具体的には、総フェノール含量は56.56 mg GAE/100 g、抗酸化活性はTrolox換算で33.76 mg Trolox eq./100 gという値まで統計的に有意(p < 0.05)に増加したとされています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、果物加工の副産物を乳酸菌発酵によって価値化し、AIによる予測モデルで発酵条件の最適化を支援するという一連のプロセスを、トマト・リンゴ・オレンジという具体的な素材で検証した事例研究です。抗酸化活性や総フェノール含量の向上が示されたことは、副産物を機能性を持つ食品原料として再利用できる可能性を示唆するものですが、これは実験室レベルでの検討結果であり、これらの食品を摂取することによる健康への効果を直接示したものではありません。あくまで一つの研究であり、今後さらなる検証を通じて知見が積み重ねられていく段階にあると考えられます。

まとめ

本研究は、食品加工で生じるトマト・リンゴ・オレンジの副産物を乳酸菌発酵によって価値ある素材へと変え、AIを活用して発酵条件を予測・最適化するという試みを紹介したものです。発酵させた副産物を配合した食品では抗酸化活性と総フェノール含量の向上が確認されており、食品廃棄物の削減と資源循環(サーキュラーバイオエコノミー)に向けた一つのアプローチとして注目されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:果物副産物・廃棄物管理に関する統合的事例研究:乳酸菌の開発、人工知能によるスマート実装、および食品サプライチェーンへの再統合(フーズ・2026年08月)