この研究は、韓国の研究機関の研究論文です。
掲載誌:Gut Microbes
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を明らかにしようとしたのか
腸内にすむ細菌の集まり(腸内細菌叢)のバランスが崩れた状態は、「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」や糖尿病と関係があると指摘されてきました。MASLDとは、肥満や糖代謝の異常などの代謝の問題を背景に、肝臓に脂肪がたまる病気を指す呼び方です。
ただし、プロバイオティクス(健康への働きが期待される生きた微生物)の候補となる菌が、こうした病気の広がりの中で代謝にどのような影響を及ぼすのかは、まだ十分に分かっていません。研究チームはこの点を調べることを目的としました。
どのように調べたか
研究チームはまず、臨床コホート(実際の患者などを集めた集団)で、病気に関連する腸内細菌のパターンを確認しました。そのうえで、候補となる菌としてラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)を選びました。
この菌の効果は、性質の異なる複数のマウスのモデルを組み合わせて検討されています。欧米型の食事、果糖・パルミチン酸・コレステロールを含む食事、高脂肪食を与えたマウスに加え、食欲や代謝を調節するホルモンであるレプチンを作れない ob/ob マウスが用いられました。
報告された主な結果
論文によれば、L. acidophilus の投与は、複数のモデルで肝臓への脂肪の蓄積(脂肪肝)と炎症による傷害をやわらげ、ob/ob マウスでは糖の処理能力(耐糖能)を改善しました。
こうした変化にともない、肝臓では炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)の発現が低下し、エネルギー状態を感知する AMPK に関わるシグナルに変化がみられました。また、脂肪をつくる働きに関わる遺伝子(Srebf1、Acc)や、糖を新たにつくり出す働きに関わる遺伝子(Pepck、G6pc)の発現が下がり、Ppara の発現は上がったと報告されています。著者らは、これらを糖と脂質の代謝がそろって調節された可能性を示すものとしています。
遺伝子の働きを網羅的に調べる解析(トランスクリプトーム解析)では、Lpin1 の発現変化や、栄養状態の感知と代謝調節に関わる経路の変化など、より広い代謝ネットワークへの影響が示されました。さらに、マウスでは腸内細菌の集まりの構成が変化し、ヒトのコホート解析では、代謝疾患の状態ごとに Lactobacillus、Akkermansia、酪酸をつくる Firmicutes に関わる、文脈によって異なる細菌のパターンが認められたとされています。
この報告が示すこと
著者らは以上の結果から、L. acidophilus が肝臓での代謝調節と腸内細菌の変化という二つの面を通じて代謝の異常を改善しうると述べ、MASLD や糖尿病に関連する代謝疾患に対するプロバイオティクス候補としての可能性を支持するものだとまとめています。
ここで紹介したのは、主に動物モデルでの観察と、ヒト集団における細菌パターンの解析です。腸内の細菌と肝臓の代謝を結びつけて考える研究の一例として読むことができます。
著者:Hee Jin Park(Institute for Liver and Digestive Diseases, Hallym University)、In Gyu Park(Institute for Liver and Digestive Diseases, Hallym University)、Jeong Ha Park(Institute for Liver and Digestive Diseases, Hallym University)、Hyunjoon Park(Institute for Liver and Digestive Diseases, Hallym University)、Jin Ju Jung(Institute for Liver and Digestive Diseases, Hallym University)、Sang Hak Han(Department of Pathology, Hallym University College of Medicine)、Ki Tae Suk(Institute for Liver and Digestive Diseases, Hallym University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hee Jin Park, In Gyu Park, Jeong Ha Park, et al. Effects of Lactobacillus acidophilus on hepatic and microbial dysregulation in MASLD and diabetes. Gut Microbes 2026-09-19. DOI: 10.1080/19490976.2026.2734705. 原著ライセンス:CC BY.