この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Growth Innovation and Nutrition Science in Indonesia

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究のねらい

スタンティング(発育阻害)とは、長期間の栄養不足やくり返す感染症などのために、年齢に対して身長が基準よりも低い状態を指します。論文によると、インドネシアでは低栄養、微量栄養素の不足、過栄養が同時に存在しており、スタンティングは今も深刻な栄養課題とされています。

著者らは、スタンティングに関わる要因の一つとして、養育のあり方、特に離乳食(補完食)を準備・調理する母親の知識に注目しました。この研究の目的は、ムリョレジョ村でスタンティングのリスクがある幼児に、どのような栄養ケアを行えばよいかを明らかにすることです。研究チームは、生後2年までの時期が予防的な取り組みに重要だとする考え方を背景に挙げています。

どのように調べたか

研究は、生後18か月の女児1人を対象とした質的な事例研究です。女児は、年齢に対する身長の指標が基準の分布から見て低い範囲にあり、スタンティングの基準に該当していました。また、エネルギー摂取量は必要量の90%未満でした。研究チームは約1か月にわたって家庭を訪問し、支援を行いました。

支援の中心は母親への個別の教育と相談です。内容は、スタンティングの説明、成長の記録と確認、月齢に合った補完食の与え方、高エネルギー・高たんぱくの食事でした。家庭で作りやすい献立の例として、エビ入りチャーハンやタロイモ団子も紹介されました。

データは、母親への聞き取り、直接の観察、体重と身長の測定、食事調査から集めました。食事調査では、前日に食べたものを詳しく聞き取る方法を期間中に5回行い、それ以前の食習慣も質問票で把握しました。そのうえで、支援の前後の変化を記述的に比較しています。

主な結果

支援を始めた時点の女児は体重8.0kg、身長73.1cmでした。年齢に対する体重や、身長に対する体重は正常の範囲内でした。一方、年齢に対する身長は低く、問題の中心は急性の栄養不良ではなく、長期的な身長の伸びの遅れにあると判断されました。栄養評価では、発熱にともなう食事量の不足、成長に適していない食品の選び方、期待より遅い成長の三つが課題として挙げられました。

支援の後、母親はスタンティングの基本的な考え方や成長を確認することの大切さ、成長に関わる栄養素、幼児に適した高たんぱく食品を説明できるようになりました。母親の知識の評価は「非常に良い」に分類されたと報告されています。

1日のエネルギー摂取量は、1週目の806.3kcalから4週目には888.6kcalに増えました。一方、たんぱく質は週ごとに変動しました。3週目には1日29.3gまで下がり、4週目は37.0gで、1日の必要量(39.4g)をわずかに下回ったままでした。最終測定では身長75.4cm、体重8.3kgに増えていました。ただし、年齢に対する身長の区分は変わらず、女児は引き続きスタンティングに分類されていました。

この研究が伝えること

著者らは、補完食の適切な準備と調理について母親の知識を高めることが、幼児の成長を支えうると結論づけています。同時に、1か月間の体重と身長の増加は支援への初期の良い反応にとどまり、身長の遅れを取り戻す「追いつき成長」が達成されたとはいえないとしています。

対象は1人だけで、比較する集団もありません。そのため著者らは、体重や身長の変化をすべて支援の効果とみなすことはできず、自然な成長や発熱からの回復が影響した可能性もあると述べています。この事例は、家庭で一人ひとりに合わせた栄養支援が食事の与え方の改善につながりうることを示しています。一方で、たんぱく質の摂取が安定しなかったことから、継続した見守りが必要であることも浮かび上がりました。

著者:Neila Sulung(Universitas Fort De Kock, Indonesia)、Mila Sari(STIKES Dharma Landbouw, Indonesia)、Masyitha Azis(Universitas Negeri Makassar)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Neila Sulung, Mila Sari, Masyitha Azis. Nutritional Care for 18-Month-Old Female Toddlers and the Risk of Stunting. Growth Innovation and Nutrition Science in Indonesia 2026-09-22. DOI: 10.69855/gizi.v1i2.755. 原著ライセンス:CC BY.