この研究は、スリランカの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Sri Lanka Journal of Medicine

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

何を明らかにしようとしたのか

ビタミンDは、カルシウムやリンのバランスを保ち、骨の発達や筋骨格の健康を支える脂溶性の物質です。研究チームによれば、その働きは骨の代謝にとどまらず、免疫の調節や炎症、細胞の分化にも関わると考えられています。

ビタミンDは日光(紫外線B)を浴びることで皮膚でつくられるため、日差しの強い熱帯地域では不足しにくいと思われがちです。しかし著者らは、生活習慣や文化的な慣習によって日光を浴びる機会が減ると、熱帯でも不足が広くみられることを先行研究が示していると述べています。論文では、南アジアの成人のおよそ68%にビタミンD不足があるとする系統的レビュー・メタ解析の推計が紹介されています。

一方で、スリランカの臨床現場に来た患者でどのような要因がビタミンD不足と関係しているかを調べた資料は限られていました。そこで研究チームは、ある三次医療機関でビタミンD検査を依頼された患者を対象に、人口統計的・行動的・臨床的な要因との関連を調べることを目的としました。

どのように調べたか

対象となったのは、スリランカ・ラガマのコロンボ北教育病院で2021年3月1日から2022年3月1日までに血清25-ヒドロキシビタミンD[25(OH)D]の検査を受けた患者427人です。妊婦は、妊娠中はビタミンDの必要量や基準値が変わるため除外されました。過去の記録をさかのぼって分析する後ろ向き研究です。

血液中のビタミンDの量は化学発光免疫測定法で測定され、論文では米国内分泌学会の診療ガイドラインに従い、血清25(OH)Dが30 ng/mL未満の場合をビタミンD不足と定義しています。あわせて、面接方式の質問票により、年齢や性別などの背景、喫煙の有無、日光を浴びる習慣、日よけなどの日光防御行動、ビタミンDを多く含む食品の摂取、服薬状況、慢性疾患の有無が聞き取られました。

こうした複数の要因を同時に考慮したうえで、それぞれが独立してビタミンD不足と関連するかを調べるため、多変量ロジスティック回帰分析が行われました。

著者らが重ねて注意を促しているのは、この集団が「医師の臨床的判断で検査に回された患者」であるという点です。つまり、ビタミンD不足が疑われた人が選ばれて集まっており、スリランカの一般の人々を代表する集団ではありません。

報告された主な結果

検査を受けた427人のうち353人(82.7%)がビタミンD不足に該当しました。ただし前述のとおり、これは検査に紹介された患者における割合であり、著者らは一般人口における不足の頻度を示す数値として解釈すべきではないとしています。

複数の要因を調整した解析では、三つの要因が独立して関連していました。まず、年齢が高いほどビタミンD不足の可能性(オッズ)は低くなり、1歳上がるごとの調整オッズ比は0.969(95%信頼区間0.948〜0.990)でした。次に、女性は男性に比べておよそ2倍高く(調整オッズ比2.210、95%信頼区間1.167〜4.186)、日傘や帽子、長袖の衣類、日焼け止めといった日光防御行動をとっている人も高くなっていました(調整オッズ比2.378、95%信頼区間1.315〜4.302)。ここでいうオッズ比とは、ある特徴をもつ人ともたない人とで不足の起こりやすさを比べた指標で、1より大きければ起こりやすい、小さければ起こりにくいことを表します。

一方、民族、喫煙の有無、ビタミンDを多く含む食事の摂取、服薬、慢性疾患の有無については、調整後に統計的に意味のある関連は認められませんでした。

年齢については、高齢ほど不足しやすいとする国際的な報告が多いなかで、今回は逆の向きの関連でした。著者らはこの点について、南アジアでも若い世代で不足が多いという報告があることに触れ、屋内での仕事や学業、座りがちな生活、美容目的の日焼け回避などが背景にある可能性を考察として述べています。ただし、これは観察された関連についての解釈であり、因果関係が確かめられたわけではありません。

限界も明示されています。観察研究であるため原因と結果の判断はできないこと、体格指数(BMI)、職業、社会経済的状況、衣服による体の被覆の程度、身体活動、季節変動といったビタミンD状態に関わる重要な要因のデータがなく調整できなかったこと、日光曝露や食習慣が自己申告であるため思い出しの偏りが生じうることが挙げられています。

この研究が示すこと

著者らは結論として、ビタミンD検査に紹介されたこの病院集団では、若い年齢、女性であること、日光防御行動が、それぞれ独立してビタミンD不足と関連していたとまとめています。

この報告が伝えるのは、日差しに恵まれた熱帯の国であっても、環境に十分な日光があることがそのまま体内のビタミンDの充足につながるわけではない、という点です。誰がどのように日光と関わって暮らしているかという行動や生活の側面が、ビタミンDの状態に関わりうることを、この研究は臨床の現場のデータから示しています。

著者:S. A. Ratnayake(Faculty of Medicine , University of Kelaniya)、D. N. Ratnatilleke(Faculty of Medicine , University of Kelaniya)、S. I. Rupasinghe(Faculty of Medicine , University of Kelaniya)、M. U. Sajana(Faculty of Medicine , University of Kelaniya)、N. R. Samarakkodi(Faculty of Medicine , University of Kelaniya)、K. Fernando(Department of Biochemistry and Clinical Chemistry , Faculty of Medicine , University of Kelaniya)、C. D. Mettananda(Department of Pharmacology , Faculty of Medicine , University of Kelaniya)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):S. A. Ratnayake, D. N. Ratnatilleke, S. I. Rupasinghe, et al. Factors Associated with Vitamin D Deficiency Among Patients Referred for Vitamin D Testing in a Sri Lankan Tertiary Care Hospital: A Retrospective Analysis. Sri Lanka Journal of Medicine 2026-09-16. DOI: 10.4038/sljm.v35i2.726. 原著ライセンス:CC BY.