著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。

掲載誌:BMC Pregnancy and Childbirth

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

研究チームは、妊娠後期の鉄に関する血液指標とビタミンDの状態が、産後早期の抑うつ症状、疲労、授乳への自信とどのように関連するかを調べました。妊娠後期には鉄不足とビタミンD不足が同時に起こることがありますが、これらの指標と産後の心身の状態をまとめて捉えることが研究の狙いでした。

何を、どのように調べたか

研究は2025年7~11月、トルコのマルマラ地方にある大学病院で行われました。妊娠28~40週の健診を受けた18~49歳の女性のうち、参加条件を満たして同意した人を募り、産後の質問票の集計には169人のデータが示されています。重い妊娠・出産の合併症や診断済みの精神疾患がある人などは対象から除かれました。

妊娠後期の血液指標として、酸素を運ぶヘモグロビン、血液中で赤血球が占める割合を示すヘマトクリット、体内の鉄の蓄えを反映するフェリチン、ビタミンDの状態を示す25(OH)Dを扱いました。産後早期には質問票で疲労と活力、抑うつ症状、授乳を行う自信である「授乳自己効力感」を評価し、血液指標との関連を分析しました。抑うつ症状の質問票であるEPDSは、うつ病の診断ではなく、リスクを見つけるための尺度です。

主な報告結果

研究チームは、妊娠後期のヘモグロビン、ヘマトクリット、フェリチンが高いほど、産後早期の疲労と抑うつ症状の得点が低い傾向を報告しました。また、ヘモグロビンとフェリチンが高いほど、授乳自己効力感の得点が高い傾向がありました。EPDSが研究で用いたリスク判定基準の12点以上だった女性は30.5%でした。

ビタミンDの血中濃度が高いほど、疲労の得点は低い傾向がありました。研究でビタミンD欠乏とされた10 ng/mL未満の群では、疲労尺度の総得点は平均89.81点で、正常とされた20 ng/mL超の群の81.56点より高くなっていました。一方、ビタミンD濃度と抑うつ症状、授乳自己効力感との相関は、統計的に有意ではありませんでした。

産後の状態同士にも関連があり、疲労が強いほど抑うつ症状の得点が高く、授乳自己効力感の得点が低い傾向が報告されました。抑うつ症状が強いほど、授乳自己効力感も低い傾向にありました。

この報告が示すこと

著者らは、産後の状態を捉える際には、心理面の確認だけでなく、疲労や鉄に関する血液指標も併せて評価することが重要だと述べています。授乳への自信についても、知識や経験だけでなく、母親の身体的・心理的な状態と結びつけて考える必要があるという解釈です。

ただし、研究は一つの大学病院で行われ、産後の評価は本人の回答に基づいています。著者らは、評価時点の違いに加え、睡眠の質や周囲からの支援など、分析に含まれなかった要因が結果に関わった可能性を限界として挙げています。この報告は各指標の関連を示すもので、鉄やビタミンDを補充すれば症状や授乳への自信が改善することを確かめた試験ではありません。

原著論文の著者・所属:Sevde Aksu、Figen Efe Camili

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sevde Aksu, Figen Efe Camili. Impact of third-trimester maternal iron parameters and vitamin D status on early postpartum depression, fatigue, and breastfeeding self-efficacy. BMC Pregnancy and Childbirth 2026-11-06. DOI: 10.1186/s12884-026-10234-w. 原著ライセンス:CC BY.