著者の所属・活動拠点の国は、ドイツ、フィンランドです。
掲載誌:Food Chemistry
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
コーヒーの品質を安定させるには、豆を焙煎している最中にその状態を把握できることが重要です。しかし抄録によると、現在の評価方法は時間と手間がかかり、多くは焙煎が終わった後に行われています。研究チームは、焙煎中に出るガスを連続的に分析し、そこから出来上がるコーヒーの味わいをその場で予測できるかを調べました。
何をどのように調べたか
著者らは、アラビカ種コーヒーを工業規模で焙煎する際に発生するガス(焙煎ガス)を、光イオン化飛行時間型質量分析(PI-TOFMS)という方法で連続的に分析しました。これは、光を当てて気体中の分子をイオン(電気を帯びた粒子)に変え、その重さの違いから成分を見分ける手法です。研究では、性質の異なる二つの光イオン化の方式(共鳴多光子イオン化と単光子イオン化)を組み合わせ、互いに補い合う形で成分を捉えています。
比較の基準として、焙煎のさまざまな段階で取り出した豆の焙煎度を色を測る装置(Colorette)で評価し、その豆から淹れたコーヒーを、人による官能評価パネルと、味を数値化する装置である電子舌で評価しました。そのうえで、質量分析の結果と味の評価とを結びつける統計モデル(部分最小二乗回帰)を作成しました。
主な結果
論文によると、質量分析データから作ったモデルは、人による官能評価の6項目を予測でき、その予測誤差(RMSEP)は10〜17%で、人の評価者どうしのばらつきと同程度だったと報告されています。また、電子舌で測った6つの味の項目についても、予測誤差1.3〜7.8%で予測できたとしています。
さらに、どの成分が予測に大きく寄与しているかを調べた結果、フルフリルアルコールやフルフリルチオールなどが重要な要素として挙げられました。
研究が示すこと
著者らは、この質量分析と統計モデルの組み合わせにより、焙煎の最中に1秒単位でコーヒーの味わいを予測できるとしています。焙煎後に時間をかけて評価するのではなく、焙煎しながらその場で品質を見通す手段となり得ることを示した研究で、論文は工程の管理や品質の最適化に役立つ迅速な方法として位置づけています。
原著論文の著者・所属:Hendryk Czech(Chair of Analytical and Environmental Chemistry, University of Rostock, Rostock, Germany. Electronic address: [email protected])、Jan Heide(Chair of Analytical and Environmental Chemistry, University of Rostock, Rostock, Germany; Photonion GmbH, Schwerin, Germany)、Sven Ehlert(Photonion GmbH, Schwerin, Germany)、Thomas Koziorowski(PROBAT SE, Emmerich am Rhein, Germany)、Ralf Zimmermann(Chair of Analytical and Environmental Chemistry, University of Rostock, Rostock, Germany; Department of Chemistry and Sustainable Technology, University of Eastern Finland, Joensuu, Finland; Department of Environmental and Biological Sciences, University of Eastern Finland, Kuopio, Finland)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hendryk Czech, Jan Heide, Sven Ehlert, et al. Coffee brew quality approved by photoionization mass spectrometry: Predicting sensory perception of coffee beverage during the roasting process in real-time. Food Chemistry 2026-10-29. DOI: 10.1016/j.foodchem.2026.151824. 原著ライセンス:CC BY.