著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。

掲載誌:Food Bioscience

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

スピルリナ(学名Limnospira platensis)は、フィコシアニン(C-PC)という色素たんぱく質を含む藍藻です。フィコシアニンは水に溶けるたんぱく質で、研究チームはこの成分を細胞から取り出す抽出の方法に注目しました。

研究チームは、パルス電界(PEF)処理によってフィコシアニンの抽出を高められるかを調べました。パルス電界処理とは、短い電気パルスを与えて細胞に作用させ、中の成分を外へ出しやすくする技術です。著者らは処理条件の組み合わせに加え、収穫してから処理するまでの冷蔵保存期間が抽出にどう影響するかも検討しました。

調べたこと

抄録によると、研究チームはまずパルス電界処理の条件を変えて比較しました。変えた条件は、試料1キログラムあたりに与えるエネルギー量(比エネルギー、100〜200 kJ/kg)、電界の強さ(1.2〜1.6 kV/cm)、そして1回の電気パルスの持続時間であるパルス幅(10〜50マイクロ秒)です。

次に、この結果をもとに、収穫したスピルリナを4℃で冷蔵保存し、収穫から処理までの保存期間が抽出に与える影響を3日間にわたって調べました。抽出液については、フィコシアニンの量に加え、抗酸化能、総フェノール含量、可溶性たんぱく質量、そしてクロロフィルやカロテノイドといったほかの色素の含量も評価しています。

主な結果

抽出量が最も多かったのは、比エネルギー150 kJ/kg、電界強度が最も高い1.6 kV/cm、パルス幅が最も長い50マイクロ秒の条件でした。比エネルギーと電界強度を同じにしたままパルス幅だけを短くすると、抽出量は有意に低くなりました。著者らはこの結果から、各条件が組み合わさって効果を生むこと、なかでもパルス幅が重要な条件であることを報告しています。

冷蔵保存については、保存期間が長くなるほどパルス電界処理の効果が高まり、フィコシアニンの抽出量が増えました。抽出量の増加は、抽出液の抗酸化能、総フェノール含量、可溶性たんぱく質量の増加と正の相関を示したと報告されています。

一方で、2日を超える冷蔵保存では、目的のフィコシアニンを選んで取り出す度合い(選択性)が下がり、抽出液に含まれるクロロフィルやカロテノイドが増えました。著者らは、冷蔵保存によって細胞がパルス電界処理を受けやすくなり抽出効率が上がる一方、保存が長すぎると細胞の劣化が進み、フィコシアニンの純度が下がると結論づけています。

研究が示すこと

この研究は、パルス電界処理がスピルリナからのフィコシアニン抽出を高める方法として有効であり、その効果は処理条件の組み合わせ、特にパルス幅に左右されることを報告しています。また、収穫から処理までの冷蔵保存期間が、抽出量を増やす方向にも、純度を下げる方向にも働きうることが示されており、抽出の量と質の両方を考えるうえで処理前の保存条件も重要な要素であることがうかがえます。

原著論文の著者・所属:Busra Oktar(Department of Agricultural and Food Sciences, University of Bologna, Piazza Goidanich, 60, 47521 Cesena, Italy)、Federico Drudi(Department of Agricultural and Food Sciences, University of Bologna, Piazza Goidanich, 60, 47521 Cesena, Italy)、Laura Pezzolesi(Department of Biological, Geological and Environmental Sciences Via Sant’Alberto 163, 48123 Ravenna, Italy)、Urszula Tylewicz(Department of Agricultural and Food Sciences, University of Bologna, Piazza Goidanich, 60, 47521 Cesena, Italy; Interdepartmental Centre for Agri-Food Industrial Research, University of Bologna, Via Q. Bucci 336, 47521 Cesena, Italy)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Busra Oktar, Federico Drudi, Laura Pezzolesi, et al. Combined Effects of PEF Parameters and Refrigerated Storage on Phycocyanin Extraction and Bioactive Compounds from Spirulina (Limnospira platensis). Food Bioscience 2026-10-01. DOI: 10.1016/j.fbio.2026.110237. 原著ライセンス:CC BY.