著者の所属・活動拠点の国は、中国、サウジアラビアです。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
捨てられがちな種子のタンパク質を使いやすくするために
赤トウガラシを加工すると大量の種子が残りますが、その多くは十分に活用されていません。論文によると、先行研究ではトウガラシの種子はおよそ16〜21%のタンパク質を含み、必須アミノ酸も多いことが報告されており、植物性タンパク質の供給源として期待されています。
一方で、種子から取り出したタンパク質(研究では「赤トウガラシ種子タンパク質単離物」と呼ばれています)は、ほかの多くの植物タンパク質と同じく水に溶けにくく、分子が密に折りたたまれています。そのため、泡立ちや乳化(油と水を混ぜ合わせた状態を保つ働き)といった、食品の素材として求められる性質を十分に発揮しにくいという課題があります。
そこで研究チームは、粒子を細かく砕く「微細化処理」と、短い高電圧のパルスを繰り返しかける「パルス電界処理」という、どちらも加熱に頼らない方法を組み合わせ、このタンパク質の構造と性質がどう変わるかを調べました。著者らは、この2つを組み合わせて赤トウガラシ種子タンパク質への影響を評価した研究は、まだ少ないと位置づけています。
どのような処理と測定を行ったか
研究チームは、脱脂した赤トウガラシ種子の粉末から、アルカリで溶かし出して酸で沈殿させる方法でタンパク質を取り出しました。得られた試料のタンパク質純度は約80%と報告されています。
このタンパク質を水に分散させ、高速で回転する刃による強いせん断(微細化処理)をかけたもの、1センチ当たり15キロボルトまたは20キロボルトの電界でパルス電界処理をしたもの、そして微細化処理の後にパルス電界処理を行ったものを用意し、未処理の試料と比べました。
比較したのは、液中の粒子の大きさとそのばらつき、粒子表面の電荷、タンパク質の立体構造の手がかりとなる蛍光や赤外線吸収、顕微鏡で見た表面の形、熱に対する変性のしにくさ、さらに溶けやすさ、濁り、泡立ち、乳化のしやすさなどです。
粒子は小さくなり、構造が部分的にほどけた
液中での平均的な粒子の大きさは、未処理の約2,144ナノメートルに対し、微細化処理のみで約1,771ナノメートル、パルス電界処理のみで約1,376〜1,523ナノメートルと小さくなりました。2つを組み合わせた処理では約522〜548ナノメートルまで小さくなり、最も大きな低下が見られたと報告されています。粒子の大きさのばらつきを示す指標も処理によって下がり、分散の均一さが増したと著者らは述べていますが、完全にそろった状態ではないことも併せて記しています。
粒子表面の電荷はどの試料でもマイナスのままでしたが、その大きさは処理によって小さくなりました。著者らはこれを、表面の構造が組み替わったことの表れと解釈しています。
タンパク質内部にあるトリプトファンというアミノ酸の蛍光は、処理によって弱まり、組み合わせ処理で特に大きく低下しました。一方で、光の強さが最も大きくなる波長はほぼ変わりませんでした。研究チームはこれを、タンパク質の立体構造が部分的にほどけたものの、完全に壊れたわけではないことを示すものとみています。ほかにも、遊離のチオール基(硫黄を含む反応しやすい部分)の増加、赤外分光で調べた二次構造(らせん構造やシート構造などの割合)の変化、電子顕微鏡で見た断片化なども報告されました。
熱分析では、処理後にタンパク質が変性する温度が上がり、熱に対する安定性が高まったとされています。さらに論文は、組み合わせ処理によって溶けやすさ、泡立ちやすさ、乳化の性質が向上し、濁りが減ったと報告しています。
研究が示すこと
この研究は、加熱を使わない2つの物理的な処理を組み合わせることで、赤トウガラシ種子のタンパク質の構造を部分的にほどき、食品素材として重要な性質を変えられることを示しました。著者らは、この成果が捨てられがちな種子という副産物に価値を加え、植物性タンパク質を付加価値の高い素材に変える加工方法を考えるうえでの手がかりになるとまとめています。
著者:Murtaza Ali(Guangdong Provincial Key Laboratory of Intelligent Food Manufacturing, School of Food Science and Engineering, Foshan University)、Muhammad Faisal Manzoor(Guangdong Provincial Key Laboratory of Intelligent Food Manufacturing, School of Food Science and Engineering, Foshan University)、Xin‐An Zeng(Guangdong Provincial Key Laboratory of Intelligent Food Manufacturing, School of Food Science and Engineering, Foshan University)、Muhammad Talha Afraz(School of Food Science and Engineering, South China University of Technology)、Isam A. Mohamed Ahmed(Department of Food Science & Nutrition, College of Food and Agricultural Sciences, King Saud University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Murtaza Ali, Muhammad Faisal Manzoor, Xin‐An Zeng, et al. Micronization-assisted pulsed electric field treatment on functional and structural modification of red pepper seed protein isolates. Frontiers in Nutrition 2026-10-13. DOI: 10.3389/fnut.2026.1936132. 原著ライセンス:CC BY.