著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:REAKTOR

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

捨てられるニンニクの皮を油の浄化に使う

揚げ物などで繰り返し使った食用油は、加熱を重ねるにつれて品質が落ちていきます。遊離脂肪酸(油の成分である脂肪が分解して生じる酸)や過酸化物価(油の酸化の進み具合を示す指標)が上がり、色が濃くなり、嫌な臭いも出てきます。論文は、こうした劣化油を長く使い続けることには健康上の懸念もあると指摘しています。

これまでにも、ココナッツの殻やバナナの皮など農業由来の廃棄物を吸着剤として使い、使用済み油の質を改善する試みが報告されてきました。吸着剤とは、表面に特定の物質をくっつけて取り除く材料のことです。一方、セルロースなどを含むニンニクの皮は、ほとんど活用されておらず、使用済み油の浄化にどれだけ役立つのか、どんな仕組みで働くのかは明らかになっていませんでした。

インドネシアの研究チームは、ニンニクの皮を使用済み食用油の浄化用吸着剤として評価しました。遊離脂肪酸、酸価、過酸化物価の3つの品質指標がどれだけ下がるかを調べ、吸着の挙動や仕組みも分析することを目的としています。

どのように調べたか

研究チームは、よく洗って天日で乾燥させたニンニクの皮を粉砕し、粒の大きさをそろえた粉末を作りました。この粉末をそのまま使うもの(未活性化)と、薄い塩酸に浸して処理したもの(活性化)の2種類を用意し、性能を比べました。

使用済み油は地元の家内工業から入手し、ろ過などで固形物を取り除いてから実験に使いました。油100ミリリットルに吸着剤を18〜24グラム加え、70℃に加熱しながら15分、30分、45分かき混ぜた後、吸着剤を分離して油の品質を測定しました。各条件の実験は3回ずつ行われています。

さらに、吸着がどのように起きているかを理解するため、実験データを代表的な吸着モデルや速度モデルに当てはめて解析し、電子顕微鏡で吸着剤の表面の様子も観察しました。

主な結果

実験前の油の遊離脂肪酸は1.367%でした。吸着剤24グラムで45分処理すると、未活性化の吸着剤では0.370%、塩酸で活性化した吸着剤では0.318%まで下がりました。低減率はそれぞれ72.93%と76.74%で、活性化した方が高い効果を示しました。減少は最初の15分間で最も急速に進み、その後は緩やかになって45分ごろに落ち着く傾向でした。著者らは、インドネシアのパーム食用油の国家規格と照らし合わせ、活性化した吸着剤ではどの量でも遊離脂肪酸が2級品の基準(0.5%以下)を下回り、24グラムの条件では1級品の基準(0.3%以下)に近づいたと報告しています。

酸価も吸着剤の量を増やすほど下がり、24グラム・45分の条件で未活性化では0.578、活性化では0.560(mg NaOH/g)でした。一方、過酸化物価では逆の傾向が見られ、同じ条件で未活性化の吸着剤のほうが低い値(4.440 meq O₂/kg)となり、活性化したものは6.660 meq O₂/kgでした。いずれも規格の上限である10以下に収まっています。著者らは、塩酸処理によってニンニクの皮にもともと含まれる抗酸化成分が減った可能性を考察しています。

吸着剤1グラムあたりが取り込んだ遊離脂肪酸の量は、20グラムの条件で最も多く、24グラムではかえって少なくなりました。量を増やしすぎると粒子が固まり合い、表面が有効に使われにくくなるためと著者らは説明しています。

データの解析では、吸着剤の表面に分子が一層に並んで付着するという考え方(ラングミュアモデル)がよく当てはまりました。活性化によって最大吸着量はほとんど変わらなかった一方、吸着の強さを示す定数は大きくなりました。吸着の速さについては、化学的な結びつきが主体となる吸着でよく見られるモデルに合っていたと報告されています。電子顕微鏡による観察では、未活性化の表面が比較的なめらかで詰まった状態だったのに対し、活性化後はでこぼこが増え、細かな孔が発達していました。

研究から見えること

この研究は、ふだん捨てられているニンニクの皮が、使用済み食用油の遊離脂肪酸や酸価を大きく下げる吸着剤として働きうることを示しました。塩酸による活性化は遊離脂肪酸の除去を高めましたが、過酸化物価の低下ではむしろ未活性化のほうが有利でした。処理の仕方によって得意な指標が異なる、という点も報告の特徴です。

同時に、著者らは限界も明記しています。今回の評価は吸着剤を1回使った場合に限られ、繰り返し再利用できるかどうかは調べていません。また、活性化による表面の化学的な変化は直接測定しておらず、仕組みの説明は解析結果や表面観察と整合する解釈として示されています。それでも、農業廃棄物を低コストで環境にやさしい材料として活かす一つの道筋を示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Iqbal Kamar(Center of Excellence Technology Natural Polymer and Recycle Plastics, Malikussaleh University,, Indonesia; Department Chemical Engineering, Faculty of Engineering, Universitas Malikussaleh,, Indonesia)、Sujaka Retno(Department Informatics Engineering, Faculty of Engineering, Universitas Malikussaleh, , Indonesia; Lhokseumawe, Indonesia, Indonesia)、Wiza Ulfa Fibarzi(Center of Excellence Technology Natural Polymer and Recycle Plastics, Malikussaleh University,, Indonesia; Department Chemical Engineering, Faculty of Engineering, Universitas Malikussaleh,, Indonesia)、Faisal Faisal(Department Chemical Engineering, Faculty of Engineering, Universitas Malikussaleh,, Indonesia)、Putri Savira(Graduated at Department Chemical Engineering, Faculty of Engineering, Universitas Malikussaleh, Indonesia)、Sri Mei Rifkaliani Ritonga(Graduated at Department Chemical Engineering, Faculty of Engineering, Universitas Malikussaleh, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Iqbal Kamar, Sujaka Retno, Wiza Ulfa Fibarzi, Faisal Faisal, Putri Savira, Sri Mei Rifkaliani Ritonga Garlic Peel Waste as an Eco-Friendly Biosorbent for Used Cooking Oil Regeneration: Adsorption Efficiency and Mechanistic Evaluation. REAKTOR 2026-08-14. DOI: 10.14710/reaktor.84348. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。