著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Tropical Plantation Journal

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:パーム油の品質を左右する「蒸し」の工程

パーム油の原料となるアブラヤシの果房は、収穫後に工場で蒸気により加熱されます。この工程は「殺菌(ステリライゼーション)」と呼ばれます。主な目的は二つあります。果実にもともと含まれる酵素リパーゼのはたらきを止めることと、果肉を柔らかくして油を搾りやすくすることです。

リパーゼは、油の主成分である中性脂肪(トリグリセリド)を分解し、遊離脂肪酸(FFA)を生じさせます。遊離脂肪酸が多い原油は品質が低いとされ、精製の手間や商品価値に影響します。インドネシアの国家規格(SNI)は、パーム原油の遊離脂肪酸を5.00%以下と定めています。

研究チームは、果房を蒸す時間が遊離脂肪酸の量にどう影響するかを調べました。あわせて、蒸し器(殺菌装置)を品質を支える重要な「設備資産」ととらえ、その性能が製品の品質とどう関係するかも検討しました。

何を調べたか:温度調節のない手作業の蒸し器で実験

実験には、テネラ種のアブラヤシの果房を使いました。蒸し器はステンレス製の小型のもので、ガスコンロで直接加熱します。工業用の装置は加圧蒸気を使い、温度を約120〜130℃に管理します。これに対し、この蒸し器には自動の温度調節機能がありません。そのため実験中の温度は揺れ動き、正確には制御できませんでした。著者らはこの温度変動を、結果に影響しうる制御できなかった要因と位置づけています。また、この装置は温度変動が起こりやすい小規模な条件を模したものだと説明しています。

蒸す時間は30分、45分、60分の3通りです。それぞれ2つの群を設け、計6群としました。蒸した果実は房から外してつぶし、手動の油圧プレスで原油を搾りました。原油に含まれる遊離脂肪酸の量は「滴定」という方法で測りました。これは、アルカリ溶液を少しずつ加えて酸を中和し、その使用量から酸の量を求める方法です。滴定は各群3回ずつ行っています。

主な結果:同じ時間でも大きく異なった遊離脂肪酸

遊離脂肪酸の量は群によって大きく異なりました。30分の2群は6.44%と4.68%、45分の2群は4.70%と13.13%、60分の2群は13.30%と2.50%でした。

全体で最も低かったのは60分の群の2.50%です。規格を満たした唯一の結果として、論文はこれを最も良い処理としています。一方、最も高かったのも60分のもう一方の群で、13.30%でした。45分の群でも、2群の差は8.43ポイントに達しました。

著者らが注目したのは、蒸す時間が同じでも結果が大きくずれた点です。論文には、加熱中の具体的な温度の推移や数値は報告されていません。そのうえで著者らは、このずれは時間だけでは説明できないと考えています。手作業の加熱による温度の不安定さが影響した、という解釈です。

論文は、温度が不安定になると、二つの方向から遊離脂肪酸が増えうると説明しています。一つは、加熱が足りなかったり、むらがあったりすると、リパーゼが働き続けて分解が進むことです。もう一つは、急な過熱によって果肉の細胞が壊れたり、油が酸化したりすることです。これらを踏まえ、著者らは次のように結論づけています。手作業の蒸し条件のもとでは、蒸す時間よりも温度の安定性のほうが遊離脂肪酸の生成に強く影響した、というものです。

設備の観点からは、遊離脂肪酸の量を蒸し器の性能を示す指標として扱いました。論文の位置づけでは、値が低く安定していれば設備がよく機能していることになります。逆に、ばらつきが大きければ運転が不安定で、品質上のリスクが高いことを示します。

研究が示す意味

この研究は、蒸す時間を延ばすだけでは遊離脂肪酸を確実には抑えられないことを示唆しています。加熱中の温度を安定させることが重要だという見方です。著者らは、蒸し器は品質を直接左右する重要な設備だと述べています。そのうえで、温度の監視や保守を含めた管理が、パーム原油の品質を安定させるうえで欠かせないとしています。

原著論文の著者・所属:Rizka Nurjanah(Akademi Komunitas Perkebunan Yogyakarta)、Arief Panca Putra(Akademi Komunitas Perkebunan Yogyakarta)、Bagus Nugroho(Akademi Komunitas Perkebunan Yogyakarta)、Elita Nurfitriyani Sulistyo(Akademi Komunitas Perkebunan Yogyakarta)、Subakho Aryo Saloko(Akademi Komunitas Perkebunan Yogyakarta)、Agus Manto(Akademi Komunitas Perkebunan Yogyakarta)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rizka Nurjanah, Arief Panca Putra, Bagus Nugroho, Elita Nurfitriyani Sulistyo, Subakho Aryo Saloko, Agus Manto Effect of Sterilization Time and Temperature Stability on Free Fatty Acid Formation in Crude Palm Oil: Implications for Sterilizer Asset Performance. Tropical Plantation Journal 2026-07-30. DOI: 10.56125/tpj.v5i2.104. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。