著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。
掲載誌:Revista Rosa dos Ventos - Turismo e Hospitalidade
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
誰かと食事を共にする「共食」と、料理をすることは、いずれも文化や社会関係と結びついた営みです。しかし著者によると、それぞれについて多くの研究がある一方、両者の関係には十分な注意が向けられてきませんでした。
そこで著者は、既存の研究文献を通じて、料理をする行為と共食が、理論や概念の上でどのようにつながるのかを整理しました。食卓だけでなく、食事を作る過程も含めて、人が食を通じて関わる姿を捉え直すことが目的です。
何を、どのように調べたか
著者は、料理や調理の技能・知識などを表す検索語を、ポルトガル語、英語、スペイン語で用いて文献を探しました。発表年による制限は設けず、料理と共食の接点を扱っているかどうかを基準に、要旨と本文を確認しました。最初に集めた英語の38論文とポルトガル語・スペイン語の42論文から、最終的に29論文を分析対象に選びました。
研究は、検索・選定を体系的な手順で網羅するシステマティックレビューではなく、文献の内容を読み解いて論点をまとめるナラティブレビューとして行われました。著者は分析用ソフトを補助に使い、気遣い、贈り物としての料理、記憶、帰属意識、知識や技術のやり取りなどに関する記述を整理し、そこから料理の社会的な側面を表す分類を導きました。
主な報告結果
著者が導いたのは、「誰かのために料理する」「一緒に料理する」「誰かにそばにいてもらいながら料理する」という三つの分類です。「一緒に料理する」では、その場の人が調理に積極的に参加します。一方、「そばにいてもらいながら料理する」では、調理を担当しない人も同じ空間にいて、作り手と時間を共有します。「誰かのために料理する」では、食べる相手への気遣いや、料理を贈るという意味が重視されます。
文献を整理した結果、著者は、料理が食事の共有のあり方に直接・間接に関わると報告しています。台所は調理だけでなく、家族や客が集まり、作りながら食べたり飲んだりする場にもなります。また、共同で料理をすることは、家族や共同体のつながり、料理の知識・技術の伝達、文化的な帰属意識と結びついていました。客が調理に参加すると、料理を提供する側と受け取る側の役割の隔たりが和らぐという議論も紹介されています。
ただし、料理は人を結びつけるだけではありません。著者は、ある集団にとっては故郷や文化を感じさせる料理の香りが、異なる文化的背景を持つ人からは違いの印として受け止められ、差別につながる場合もあると整理しました。そのような排除は、異なる集団の人々が食事を共にする妨げになり得ると論じています。
この報告が示すこと
著者が示した中心的な提案は、共食を理解する際に、食べ物と食べる行為だけでなく、その間にある「料理すること」を含めて考えるというものです。一方、著者は、体系的ではない文献収集とナラティブレビューによる分析を研究の限界に挙げています。料理が共食の衰退を食い止められるかどうかも、未解決の問いとして残されています。この報告は、食卓での関係を理解するには、台所で誰が誰と、誰のために作っているかにも目を向ける必要があると示しています。
原著論文の著者・所属:Rafael Cunha Ferro(Universidade Federal Rural do Rio de Janeiro)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rafael Cunha Ferro. Cozinhar um exercício teórico de expansão do conceito de comensalidade. Revista Rosa dos Ventos - Turismo e Hospitalidade(出版社:University of Caxias do Sul) 2026-11-04. DOI: 10.18226/21789061.v18ip026030. 原著ライセンス:CC BY.