著者の所属・活動拠点の国は、メキシコです。
掲載誌:Revista Rosa dos Ventos - Turismo e Hospitalidade
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームは、メキシコ州マリナルコで、観光の広がりとともに飲食店や食の売られ方がどう変化しているかを調べました。とくに、地域の食文化が保たれているのか、それとも観光客などに向けた高価格帯の店や商品が広がり、従来の商いが押し出される「食のジェントリフィケーション」が進んでいるのかを明らかにしようとしました。
背景には、地域の歴史や文化を観光に生かす「プエブロ・マヒコ」という国の制度による指定後、マリナルコで観光客向けの飲食サービスや消費の場が変化してきたことがあります。
何を、どのように調べたか
研究チームは、観光客の多い中心部の通りを対象に、6か月にわたって現地調査を行いました。休暇・祝祭期、週末、平日に加え、朝・昼・夜と訪問の時間帯も変え、現場に身を置いて観察する参与観察を実施しました。
調査では飲食物を販売する46店舗を訪れ、メニュー、料理、接客、内装や店舗のデザインを調べました。観光客、給仕スタッフ、地元商人、飲食店の責任者との非公式な会話も手がかりに、観光客向けの店と伝統的な食品を扱う場の特徴や分布を検討しました。
主な報告結果
著者らは、調査した店舗の多くが、料理人の独自性を打ち出した料理や専門料理を提供していたと報告しています。イタリア料理、日本料理、地中海料理のほか、高級感を打ち出したメキシコ料理が見られました。一部のアイスクリーム店では、以前は「手作り」として販売していた同じ商品を「グルメ」と呼び、価格を上乗せしていました。一方、主要道路から数区画離れた場所では、従来どおりの売り方が続いていました。
こうした店の分布にも特徴がありました。中心部への主要な入口となるイダルゴ通りには、独自の料理を提供するレストランや専門性を打ち出したカフェ、菓子店などが集まっていました。ビセンテ・ゲレロ通りとマリナルコ通りには、酒類や「グルメ」と称するアイスクリームを扱う店が多く見られました。調査対象のうち伝統的な食事を提供する店は少なく、家庭料理の定食を出す店には、主に地元住民や巡礼先から立ち寄る人々が訪れていました。
その一方で、研究チームは、伝統的な食品や販売方法が残る場所を「抵抗の空間」と位置づけました。イダルゴ通りとマリナルコ通りの一角には、季節の果物、煮込み料理のタコス、伝統的なパンやアイスクリームなどを扱う、ほぼ常設の露店市場がありました。ただし、地域の産物として売られる果物の中には、宅地開発などによって地域内で生産されなくなり、卸売市場から仕入れられているものもあると報告しています。
この報告が示すこと
著者らは、観光客向けの新たな消費の場が広がることで、従来の店が徐々に押し出され、市場の要求に合わせた変更を迫られていると結論づけています。その見方では、地域の食文化が続いていることと、商いの仕組みが変わっていることは両立します。伝統が残っていても、その担い手が以前と同じ条件で営業できているとは限らない、という意味を持つ報告です。
調査範囲は飲食店が集中する中心部に限られ、ニジマス料理を提供する飲食店街など、自治体全域を含んではいません。また著者らは、地域の変化には飲食観光だけでなく、別荘や短期宿泊施設の広がりも関わっていると述べています。
原著論文の著者・所属:Luis Felipe García-Rodea(Universidad Autónoma del Estado de México)、Carla Ivonne Ortega Gonzalez(Tecnologico de Estudios Superiores de Tianguistenco)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Luis Felipe García-Rodea, Carla Ivonne Ortega Gonzalez. Turismo gastronómico y transiciones alimentarias en Malinalco, Estado de México. Revista Rosa dos Ventos - Turismo e Hospitalidade(出版社:University of Caxias do Sul) 2026-11-04. DOI: 10.18226/21789061.v18ipe180110. 原著ライセンス:CC BY.