著者の所属・活動拠点の国は、ブラジル、オランダです。
掲載誌:Food Structure
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
水を油の中に細かな滴として大量に分散させた食品素材は「油中水型高内相エマルション(W/O HIPE)」と呼ばれます。研究チームは、この素材が機能性食品や栄養補助食品で従来の油脂の代わりに使える可能性があるとしています。食品の構造は脂質の消化に影響します。しかし、こうしたエマルション、特に植物由来のワックス(ろう)で構造を持たせたものについて、内部の構造の組み立て方が消化にどう関わるかは十分に分かっていませんでした。
そこで研究チームは、3種類の成分でエマルションを安定化させて比べました。乳化剤のポリグリセロール縮合リシノレイン酸エステル(PGPR)、ひまわりワックス、加水分解したひまわりワックスの3種類です。そして、体外で消化を再現する2つの実験条件、静的条件と半動的条件(マイクロチップ)の下で、構造の変化と脂質の分解(脂肪分解)の程度を調べました。
消化前後の構造の変化
著者らによると、作製直後のPGPRのエマルションでは、水滴の大きさの分布に2つの山がありました。ひまわりワックスを使ったものは水滴が小さく、構造がより安定していることを示していました。加水分解ワックスを使ったものは水滴が大きく、大きさもばらばらで、構造が弱いことがうかがえました。
消化の過程では、どのエマルションも胃の段階で滴同士が合体しました。続く腸の段階では構造が徐々に組み替わり、油が水の中に分散した状態に近づいていったと報告されています。消化の終わりの状態はエマルションによって異なりました。ひまわりワックス2.0%(重量比)のエマルションは小さくそろった滴を保っていました。一方、加水分解ワックスのエマルションは大きな塊を作っていました。
脂肪分解の程度と2つの消化モデルの違い
静的条件のモデルで脂肪分解の割合が最も高かったのは、加水分解ワックス0.5%のエマルションで、33.5%でした。ひまわりワックス2.0%のエマルションは17.8%、PGPRのエマルションは12.6%でした。研究チームは、構造が安定しているものほど脂質が分解されにくいという逆の関係が示されたとしています。
研究チームは、もう一つのモデルとして、微細な流路を持つチップの中で消化を再現する半動的なモデルも用いました。2つのモデルでは、流れの状態を表すレイノルズ数を求めて比べています。レイノルズ数は、小さいほど層をなす滑らかな流れ、大きいほど乱れた流れであることを示します。チップ内の値は約0.4で、著者らが生理的条件に近いとする層状の流れでした。静的モデルでは約13,000で、非常に乱れた流れでした。こうした違いがあっても、脂肪分解の傾向は両モデルで似ていました。ただし、チップ内での分解の程度は静的モデルより低かったと報告されています。
研究が示すこと
著者らは、使うワックスの種類と濃度、さらに消化を再現する条件が、このエマルションの安定性と消化のされ方に強く影響したと結論づけています。油脂の代わりとなる素材では、内部構造の作り方と、それを評価する消化モデルの条件の両方が結果を左右しうることを示した研究です。
原著論文の著者・所属:Larissa Ribas Fonseca(Department of Food Engineering and Technology, School of Food Engineering, University of Campinas (UNICAMP), 13083-862 Campinas, SP, Brazil)、Ana Elisa Ramos Magalhães(Department of Food Engineering and Technology, School of Food Engineering, University of Campinas (UNICAMP), 13083-862 Campinas, SP, Brazil)、Fernando Divino Oliveira Júnior(Department of Food Engineering and Technology, School of Food Engineering, University of Campinas (UNICAMP), 13083-862 Campinas, SP, Brazil)、Tatiana Porto Santos(Laboratory of Food Process Engineering, Wageningen University and Research, Bornse Weilanden 9, 6708, WG, Wageningen, the Netherlands)、Rosiane Lopes Cunha(Department of Food Engineering and Technology, School of Food Engineering, University of Campinas (UNICAMP), 13083-862 Campinas, SP, Brazil)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Larissa Ribas Fonseca, Ana Elisa Ramos Magalhães, Fernando Divino Oliveira Júnior, et al. Stability and lipolysis of W/O HIPEs under gastrointestinal conditions: Effects of fluid dynamics in static and microfluidic models. Food Structure 2026-10-01. DOI: 10.1016/j.foostr.2026.100573. 原著ライセンス:CC BY.