この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Industrial Crops and Products

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

デンプンとタンパク質を組み合わせた複合体は、これまで広く研究されてきました。一方、そこにフェノール酸を加えた三成分の系については十分に調べられていないと著者らは指摘しています。特に、油と水の境界(界面)での働きを高め、「高内相エマルションゲル(HIPEG)」の安定化に生かす研究はまだ少ないといいます。

エマルションとは、マヨネーズのように油と水の一方が細かな液滴となり、もう一方の中に分散した状態のことです。高内相エマルションは、液滴として分散している側(内相)の割合が非常に高いエマルションを指し、それがゲル状になったものが高内相エマルションゲルです。研究チームは、米デンプン、ゼラチン、フェノール酸の一種であるプロトカテク酸(PA)を組み合わせ、このゲルを安定させる材料をつくることを目指しました。

何を調べたか

研究チームは、米デンプン(RS)、ゼラチン(GLT)、プロトカテク酸(PA)を集合させて「RS-GLT-PA複合体」をつくり、高内相エマルションゲルの安定化に用いました。PAを組み込むことで、複合体の構造や性質がどう変わるかを調べています。

構造の分析には、FTIR(赤外分光法)、XPS(X線光電子分光法)、XRD(X線回折)といった手法が使われました。これらは、分子どうしの結びつき方や、物質が規則正しい結晶状態にあるかどうかなどを調べる方法です。

主な結果

抄録によると、PAを組み込むことで複合体の構造的・機能的な性質が向上しました。複合の度合いを示す指標(複合指数)は84.04%から増加し、PAを12%加えた条件では97.20%に達したと報告されています。

構造分析からは、水素結合や疎水性相互作用(水を避ける性質をもつ部分どうしが集まろうとする働き)が強まり、規則正しい結晶構造をもたない「非晶質」の構造が強まっていることが示されました。その一方で、新たな共有結合(原子どうしが電子を共有する強い化学結合)は形成されていなかったとしています。

さらに、PAを12%加えた複合体で安定化した高内相エマルションゲルは、乳化する能力、保存中の安定性、遠心分離にかけたときの安定性が向上しました。遠心安定性の指標であるTSIは0.5未満だったと報告されています。

この研究が示すこと

著者らは、フェノール酸を介して構造を調整することが、多機能なデンプン系の界面材料を開発する有望な方法になると述べています。また、安定した高内相エマルションの系や、脂肪を減らしたエマルション食品への応用の可能性も挙げています。米デンプンとゼラチンの組み合わせにフェノール酸を加えるという工夫によって、エマルションを支える材料の性質を調整できることを示した研究といえます。

著者:Meng Guo(School of Food Science and Engineering, Wuhan Polytechnic University, Wuhan, 430023, China)、Jiahui Wang(School of Food Science and Engineering, Wuhan Polytechnic University, Wuhan, 430023, China)、Qingyun Lyu(Key Laboratory for Deep Processing of Major Grain and Oil, Wuhan Polytechnic University, Ministry of Education, Wuhan, 430023, China)、Lijie Zhu(Key Laboratory for Deep Processing of Major Grain and Oil, Wuhan Polytechnic University, Ministry of Education, Wuhan, 430023, China)、Lei Chen(Key Laboratory for Deep Processing of Major Grain and Oil, Wuhan Polytechnic University, Ministry of Education, Wuhan, 430023, China)、Xi Chen(Key Laboratory for Deep Processing of Major Grain and Oil, Wuhan Polytechnic University, Ministry of Education, Wuhan, 430023, China)、Xianhui Chang(Key Laboratory for Deep Processing of Major Grain and Oil, Wuhan Polytechnic University, Ministry of Education, Wuhan, 430023, China)、Wenping Ding(Key Laboratory for Deep Processing of Major Grain and Oil, Wuhan Polytechnic University, Ministry of Education, Wuhan, 430023, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Meng Guo, Jiahui Wang, Qingyun Lyu, et al. Protocatechuic acid-regulated rice starch-gelatin ternary composite particles: Structural modulation, interfacial behavior, and high internal phase emulsion gel stabilization. Industrial Crops and Products 2026-10-01. DOI: 10.1016/j.indcrop.2026.124530. 原著ライセンス:CC BY.