寝る前についスマートフォンを眺めてしまう、部屋の照明をつけたまま眠ってしまう——こうした光との付き合い方は、私たちの睡眠や食生活とどのようにつながっているのでしょうか。夜間の光が体内時計に影響しうることは知られていますが、日常生活における光の浴び方(光曝露行動)と、睡眠の質、食べ方のクセ、さらには腸内細菌に関わるとされる食事パターンまでを一つの調査枠組みでまとめて調べた研究は多くありません。今回、ヨルダンの首都アンマンで行われた横断研究が、この関係を探っています。
どのように調べたのか
研究の対象は、ヨルダン・アンマンに住む18歳から64歳の成人518人です。2026年4月から5月にかけて、便宜的な抽出方法(近くにいる対象者を集める方法)でデータが集められました。調査には、光曝露行動を測る尺度(LEBA)、睡眠の質を評価するアラビア語版ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)、食行動を尋ねるアラビア語版の食行動質問票(TFEQ-R18)、そして腸内細菌を意識した食品摂取頻度を尋ねる質問票(FFQ-GM)が用いられました。集まった回答は、Spearmanの順位相関分析と多変量線形回帰で解析され、複数の項目を同時に検定することによる誤検出を防ぐため、Benjamini-Hochberg法という統計的な補正も行われています。
わかったこと
まず目を引くのは、対象者の87.3%がPSQIの総合得点で5点を超えていたという結果です。PSQIでは一般に5点を超えると睡眠の質が良くないと判断されるため、調査対象となった集団の多くが何らかの形で睡眠に問題を抱えていた可能性が示されました。
光の使い方との関連では、いくつかの傾向が見られました。スマートフォンなどのブルーライトフィルター機能を使っている人ほど、PSQI総合得点が高い(睡眠の質が悪い方向に傾いている)という正の関連が示され、その関連の強さを表す回帰係数はβ=0.29でした。一方で、就寝前にベッドの中でスマートフォンを使う行動と、就寝前に光を浴びる行動については、いずれもPSQI総合得点と負の関連(β=-0.43、β=-0.51)が示されました。数値だけを見るとやや直感に反するようにも感じられますが、著者らはこうした関連について、多重比較の補正を行った後には大半が統計的な有意水準を下回らなかったとしており、確定的な結論ではなく探索的な所見として位置づけています。
この研究をどう読むか
この研究は横断研究、つまりある一時点での状態を調べたものであるため、光曝露行動と睡眠の質、食行動などの間にどちらが先に影響を与えたのかという時間的な順序や、因果関係そのもの、またそれを引き起こす生物学的な仕組みまでは明らかにできないという限界が著者らによって述べられています。ブルーライトフィルターの使用と睡眠の質の関連にしても、「フィルターを使うほど睡眠が悪化する」と単純に読むのではなく、もともと睡眠に不安を感じている人がフィルターを使う傾向にある、といった逆方向の関係を含め、さまざまな解釈の余地が残されている点に注意が必要です。研究チームはヨルダンのアプライド・サイエンス・プライベート大学(アンマン)およびサウジアラビアのノーザン・ボーダー大学に所属する研究者らによって行われました。
まとめ
今回の調査では、ヨルダンの成人518人を対象に、日常の光の浴び方と睡眠の質、食行動、腸内細菌に関わる食事パターンとの関連が探られ、対象者の多くが睡眠の質の低下を示す一方、ブルーライトフィルターの使用や就寝前の光曝露・スマートフォン使用と睡眠の質との間にいくつかの統計的な関連が観察されました。ただし多重比較補正後にはその多くが有意水準に届かず、横断研究という性質上、因果関係も明らかにされていません。一つの研究として得られた探索的な知見であり、今後さらなる研究による検証が必要といえます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Anfal AL-Dalaeen, Nour Batarseh, Rama Aboalrob, et al. Associations Between Light Exposure Behaviors, Sleep Quality, Eating Behaviors, and Gut Microbiota-Related Dietary Patterns Among Adults. 国際環境研究・公衆衛生ジャーナル (2026). DOI: 10.3390/ijerph23091183. 原著ライセンス: cc-by.