塩分の摂りすぎが体に良くないことは広く知られていますが、「知っていること」と「実際に減塩を意識した行動をとること」は必ずしも同じではありません。今回紹介するのは、米国カリフォルニア州南部の大学生を対象に、ナトリウム(塩分)に関する知識の種類と、日々の食行動との関連を調べた研究です。大学という場は、若い世代の食習慣が形づくられる時期でもあり、栄養教育や食環境づくりの効果を考えるうえで注目されている場面のひとつです。

どのように調べたのか

この研究は2018〜2019年度にかけて、南カリフォルニアにある3つの大規模州立大学の学生3,094人を対象に実施されたウェブ調査のデータを、後から分析し直したものです。対象校には、ロサンゼルス郡が進める減塩の取り組み「LACSRI(Los Angeles County Sodium Reduction Initiative)」の対策が導入された大学も含まれており、この大学に通っていたかどうかを「LACSRIへの曝露」として扱い、食行動との関連も合わせて検討しています。分析では、ナトリウムに関する知識を4つの領域(1日の推奨摂取量の理解、栄養成分表示の読み取り、高塩分食品の識別など)に分け、それぞれが「調理中に塩を控える」「加工食品を控える」「パッケージ食品を控える」「植物性中心の食事を選ぶ」といった4つの塩分関連の食行動とどう結びついているかを、多変量解析で確認しています。

わかったこと

1日の推奨摂取量を「小さじ1杯(1teaspoon)以下の塩」と正確に答えられた学生は、調理中に塩を加える頻度が低い傾向(調整オッズ比1.44、95%信頼区間1.23〜1.68)や、高塩分の加工食品を食べる頻度が低い傾向(調整オッズ比1.26、95%信頼区間1.07〜1.47)が見られました。一方、推奨摂取量を「1,500〜2,300mg」という数値で正しく答えられた学生では、パッケージ食品の摂取を控える傾向(調整オッズ比1.30、95%信頼区間1.01〜1.66)や、植物性中心のメニューを選ぶ傾向(調整オッズ比1.95、95%信頼区間1.47〜2.59)との関連が示されました。ただし、栄養成分表示からナトリウム量を読み取る力や、高塩分食品を見分ける正確さについては、行動との関連が一貫しておらず、結果はまちまちだったとされています。また、LACSRIの対策が行われた大学に通っていた学生は、4つの食行動すべてで良好な傾向が高いオッズ比として示されましたが、パッケージ食品に関する関連はp値0.049とぎりぎりの水準だったと報告されています。

この研究を読むうえでの注意

この結果は、南カリフォルニアの3大学に通う学生という特定の集団を対象にした横断調査(ある一時点でのデータ)に基づくものであり、知識と行動の両方が本人の自己申告によって得られている点にも留意が必要です。そのため、知識が増えれば行動が必ず変わるという因果関係を証明したものではなく、あくまで両者の間にどのような関連が見られたかを示した一つの研究です。実際、知識の領域によって行動との結びつきの強さや方向性にばらつきがあったことからも、単純に「知識が増えれば減塩行動が進む」とは言い切れない複雑さがうかがえます。

まとめ

この研究では、大学生の塩分に関する知識のうち、推奨摂取量についての正しい理解が、複数の減塩に関わる食行動と関連していることが示唆されました。一方で、栄養表示の読み取りや高塩分食品の識別といった知識では関連が一様ではなく、知識の種類によって行動への結びつき方が異なる可能性が示されています。著者らは、大学が栄養教育と、政策・環境面での取り組みを組み合わせた多面的な戦略を実施するうえで、有利な立場にある可能性を指摘していますが、これは一つの研究の結果であり、結論が確定したものではありません。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Brenda Robles, Brett Young, Tony Kuo. Associations between university students’ sodium knowledge and sodium-related dietary behaviors. ビーエムシー・ニュートリション (2026). DOI: 10.1186/s40795-026-01472-4. 原著ライセンス: cc-by.