おやつを我慢できずに食べてしまう、目の前にお菓子があるとつい手が伸びてしまう――こうした経験は誰にでもあるものです。とりわけ13歳から17歳の青年期は、食習慣が大きく変化しやすい時期とされています。今回紹介する研究は、青年たちの日常生活の中で『その瞬間』に何を感じ、何を食べていたのかをスマートフォンで記録してもらい、食べ物が手近にあること(食物入手可能性)や食べたい気持ちの強さ(食欲的駆動)が、甘い物や塩辛い・揚げ物、加糖飲料の摂取、さらには『食べ過ぎてしまう』『コントロールを失って食べてしまう』といった失調的な摂食パターンとどう関連するのかを調べたものです。
どんな方法で調べられたのか
研究チームは、米国南カリフォルニア大学(University of Southern California)とジョージ・メイソン大学(George Mason University)に所属する研究者らで構成されています。対象となったのは地域サンプルの青年74名(13〜17歳)で、10日間にわたりスマートフォンを使った生態学的瞬間評価(EMA)という手法が用いられました。参加者は1日に3〜7回、半分ランダムなタイミングで届く質問に答えるほか、実際に何かを食べた際にはそのつど『食事イベント』として記録を行いました。分析では、甘い食べ物、塩辛い・揚げ物、加糖飲料(SSB)の摂取のほか、瞬間的な『コントロール喪失感を伴う食べ方(LOCE)』や過食症状も評価対象とされています。統計解析には一般化線形混合モデルが用いられ、個人の中での瞬間ごとの変動(ある人がいつもより食べ物が身近にあると感じた時)と、個人間の平均的な違い(もともと食べ物が身近にある環境で暮らしている人かどうか)とを分けて検討した点が特徴です。さらに、『パワー・オブ・フード・スケール』という尺度で測定された特性的な快楽的空腹感(美味しそうな食べ物に対して感じやすい欲求の強さの個人差)が、これらの関連を強めたり弱めたりする調整要因として働くかどうかも調べられました。
研究でわかったこと
まず、特性としての快楽的空腹感が高い青年ほど、甘い食べ物や加糖飲料を摂取する見込みが高く、コントロール喪失を伴う食べ方や過食の症状も多い傾向が見られたと報告されています。次に、瞬間ごとの変動に着目すると、ある人がいつもより『食べ物が身近にある』と感じた直後の食事イベントでは、甘い食べ物を摂取する見込みが高まることが示されました。また個人間で比較すると、日頃から食べ物が身近にある環境にいる青年ほど、塩辛い・揚げ物を摂取する見込みが高いという関連も見られています。一方、食欲的駆動(食べたいという気持ちの強さ)そのものは、甘い食べ物の摂取とは逆方向、つまり食欲的駆動が高い瞬間ほど甘い食べ物の摂取が少なくなるという関連が示されました。さらに、特性的な快楽的空腹感が高い青年では、食欲的駆動とその後の塩辛い・揚げ物の摂取、およびコントロール喪失を伴う食べ方との正の関連が強まることも確認されています。これらの結果から、瞬間ごとの状況(何がそばにあるか、どれだけ食べたい気持ちが強いか)と、個人がもともと持つ食への反応しやすさの両方を合わせて見ることの重要性が指摘されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は74名という比較的小規模な地域サンプルを対象にしたものであり、得られた関連はあくまで統計的な傾向として報告されているものです。特定の食品や成分が問題を引き起こす、あるいは解決するといった断定的な結論を示すものではなく、瞬間ごとの環境要因(食べ物の近さ)と気持ちの動き、個人の特性が絡み合って摂食行動に関連している可能性が示唆されている、という位置づけで捉えるのが妥当です。一つの研究であり、これだけで結論が確定したわけではない点にも留意が必要です。
まとめ
この研究では、青年期における間食や失調的な摂食パターンが、その瞬間に食べ物がどれだけ身近にあるか、そしてどれだけ強く食べたいと感じているかという状況要因と、快楽的空腹感という個人の特性の両方に関連している可能性が示されました。健康的な食習慣を支える方策を考える際には、日常のふとした瞬間の状況と、個人差のある食への反応しやすさの両方に目を向ける必要があると報告されています。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Yue Luo, Jeremy C. Morales, Kathryn E. Smith, et al. Associations of momentary food availability and appetitive drive with adolescents' food intake and dysregulated eating in a community sample of adolescents: The moderating role of trait hedonic hunger. アプライド・サイコロジー:ヘルス・アンド・ウェルビーイング (2026). DOI: 10.1111/aphw.70213.