この研究は、タイの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Life
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
植物性ヨーグルトは牛乳を使わない選択肢として注目されていますが、栄養価や機能性をどう高めるかは研究が続くテーマです。今回紹介する研究では、発酵させた緑米乳ヨーグルトに、水面に浮かぶ小さな水生植物「アオウキクサ(Wolffia globosa)」の粉末とタイ産の緑茶を加え、その栄養成分や機能性代謝物のネットワークを詳しく調べています。
研究チームは、アオウキクサ粉末(WGP)の配合比率を0%から15%まで変えた4種類の処方(F1〜F4)を作成し、比較しました。その結果、WGPを最も多く(15%)配合したF4処方では、食物繊維(乾燥重量あたり42.45%)、でんぷん(26.55%)、タンパク質(22.48%)、脂質(2.29%)といった栄養成分の含有量が高くなったと報告されています。
さらにF4処方は、総フェノール含量(52.99 mg GAE/g)や総フラボノイド含量(60.45 mg QUE/g)、β-カロテン含量(1.81 mg/g)といった機能性成分でも最も高い値を示したとされています。抗酸化力を示すDPPH法(5.48 mg TROE/g)、ABTS法(424.15 mg TROE/g)、FRAP法(106.35 mg TROE/g)の各指標に加え、糖の消化に関わる酵素であるα-グルコシダーゼの阻害活性(IC50 1.41 mg/mL)についても、F4処方が最も強い働きを示したと report されています。
研究チームはこれらのヨーグルトを、UPLC-MS/MSという分析手法を用いた非標的メタボロミクス(代謝物を網羅的に調べる解析)によって評価しました。その結果、発酵の過程で生じる代謝物と、緑茶由来のポリフェノール、アミノ酸、フィトステロール、カロテノイドなどが相互に関わり合うネットワークを形成していることが示唆されています。こうした代謝プロファイル全体からは、抗酸化能の向上、炎症負荷の軽減、糖代謝の改善、腸内細菌叢への影響、心血管系や神経系の保護に関連する可能性が示唆されたとまとめられています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は、特定の配合を施した植物性ヨーグルトの成分分析と、それに基づく代謝物ネットワークの解析結果を報告するものです。要旨で述べられている「抗炎症」「糖代謝の改善」「腸内細菌叢への影響」「心血管保護」「神経保護」といった可能性は、あくまで代謝物プロファイルから示唆される内容であり、ヒトでの摂取試験によって効果が確認されたものではない点に注意が必要です。一つの研究であり、これをもって健康効果が確定したわけではありません。
まとめ
今回の研究では、アオウキクサ粉末と緑茶を加えた緑米乳ヨーグルトについて、配合比率を高めることで食物繊維やタンパク質、フェノール類、抗酸化活性、抗糖尿病活性に関連する指標が高まったことが報告されました。また、非標的メタボロミクスによって、発酵由来の代謝物と植物由来成分が織りなす複雑な機能性ネットワークの一端が示されています。植物性食品の機能性を高める一つのアプローチとして、今後さらなる検証が期待される研究といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):非標的メタボロミクスによるアオウキクサ添加緑米乳ヨーグルトの機能性生理活性代謝物ネットワークの解明(ライフ・2026年08月)
著者:Pongpat Kiatprasert(Department of Mathematics and Science, Faculty of Agriculture and Technology, Rajamangala University of Technology Isan Surin Campus, Surin 32000, Thailand)、Sukrita Punyauppa-path(Department of Mathematics and Science, Faculty of Agriculture and Technology, Rajamangala University of Technology Isan Surin Campus, Surin 32000, Thailand)、Nonthiwat Taesuk(Department of Biology, Faculty of Science, Mahasarakham University, Mahasarakham 44150, Thailand)、Sujira Maneerat(Department of Biology, Faculty of Science, Mahasarakham University, Mahasarakham 44150, Thailand)、Watchara Kanchanarach(Faculty of Public Health, Mahasarakham University, Mahasarakham 44150, Thailand)、Priyapa Najomtien(Department of Biology, Faculty of Science, Mahasarakham University, Mahasarakham 44150, Thailand)、Srisan Phupaboon(Department of Biology, Faculty of Science, Mahasarakham University, Mahasarakham 44150, Thailand)