著者の所属・活動拠点の国は、マレーシアです。

掲載誌:Quantum Journal of Social Sciences and Humanities

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

マレーシア半島東海岸に隣り合うクランタン州とトレンガヌ州では、甘さが伝統料理や菓子の特徴の一つになっています。両州は共通する食文化を持つ一方、料理の甘さには違いがあると捉えられています。研究チームは、地元の成人が伝統食の甘さをどう感じ、どのような甘さを好むのか、また、その好みに家庭での経験や地域の文化がどう関わっているのかを探りました。

何を、どのように調べたか

研究チームは、それぞれの州の伝統料理や食文化に詳しい30~40歳の成人6人を、研究目的に合う条件で選びました。参加者はクランタン州とトレンガヌ州から各3人でした。

対面のインタビューでは、地元の食べ物の甘さをどう捉えているか、両州の甘さの好みにどのような違いを感じるか、その好みに何が影響しているかを尋ねました。回答に応じて詳しく聞き取り、録音を書き起こした文章から、繰り返し現れる考え方や経験を整理しました。食品の糖分量や試食による評価ではなく、参加者自身の語りを調べた研究です。

主な報告結果

著者らは、参加者がクランタン州の伝統食をトレンガヌ州より甘いと捉えていたと報告しています。例えば、米料理のナシダガンに添えるカレーは、クランタン州ではより甘く、トレンガヌ州では香辛料がより強いと語られました。一部の参加者は、クランタン州の甘い味付けに、隣接するタイ南部との文化的なつながりが影響していると考えていました。

甘さの好みについては、幼い頃から家庭で食べ慣れてきたことや、親の味付けの影響が語られました。研究チームは、家庭のレシピが世代を超えて受け継がれ、地域の共同の催しでも一定の味が保たれることが、慣れ親しんだ甘さを支えていると解釈しています。

参加者は、どの料理にも同じ甘さを求めているわけではありませんでした。伝統菓子のクイには甘さがあるべきだとする一方、甘い菓子ではない料理には甘さをほとんど、あるいは全く求めないという語りがありました。著者らは、料理ごとに期待される甘さが、その料理らしさを判断する基準になっていると報告しています。

健康を意識するようになっても、伝統的な甘い食べ物を完全にやめるのではなく、食べる量や頻度を控えるという対応も語られました。甘すぎる飲み物を飲み切らない、菓子を一つだけ食べて残りを人と分けるといった例がありました。研究チームは、伝統食に期待する味を保ちながら、実際の食べ方を調整していると捉えています。

この報告が示すこと

著者らの結論は、甘さの好みを個人の味覚だけでなく、地域への帰属意識や家庭で受け継ぐ食習慣と結び付けて理解する必要がある、というものです。また、伝統食らしい味を大切にすることと、生活状況に合わせて食べ方を変えることは、両立しうるとしています。

ただし、著者らは、対象が両州の参加者に限られ、主に地域の内側からの見方を反映していると述べています。この報告は、地元の人々にとって甘さがどのような意味を持つかを、その経験から描いたものです。

原著論文の著者・所属:NUR HAZLINA MOHD HANAFI(Department of Culinary Arts and Gastronomy, Universiti Teknologi MARA (UiTM) Penang Branch, Penang, Malaysia)、NUR AFIQAH MAZALAN @ MAZLAN(Department of Culinary Arts and Gastronomy, Universiti Teknologi MARA (UiTM) Penang Branch, Penang, Malaysia)、MOHAMAD FARHAN AZMI(Department of Culinary Arts and Gastronomy, Universiti Teknologi MARA (UiTM) Penang Branch, Penang, Malaysia)、FADZHIATUL AZWA FUDZALI(Department of Culinary Arts and Gastronomy, Universiti Teknologi MARA (UiTM) Penang Branch, Penang, Malaysia)、WAN RUSNI WAN ISMAIL(Department of Pastry Arts, Universiti Teknologi MARA (UiTM) Penang Branch, Penang, Malaysia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):NUR HAZLINA MOHD HANAFI, NUR AFIQAH MAZALAN @ MAZLAN, MOHAMAD FARHAN AZMI, et al. EXPLORING ADULTS’ PERCEPTIONS AND SWEETNESS PREFERENCES FOR LOCAL TRADITIONAL FOODS IN KELANTAN AND TERENGGANU. Quantum Journal of Social Sciences and Humanities 2026-11-07. DOI: 10.55197/qjssh.v7si5.1736. 原著ライセンス:CC BY.