この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Journal of Social Science and Business Studies

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

低価格で売られる地域のサツマイモ

インドネシア・西バンドン県のチカロン村は、サツマイモの生産に適した土地を持つ地域です。しかし著者らによれば、収穫されたサツマイモはほとんどが加工されないまま、仲買人(現地でバンダルと呼ばれる買い手)に売られています。価格は買い手側が決め、時期や品質によって1キログラム3,000ルピア程度から5,000ルピア程度まで変動すると報告されています。論文は、県レベルの行政計画データとして2024年のサツマイモ生産量が収穫面積254ヘクタールから3,657トンであり、2020年の5,049トンから減少していたことにも触れています。また農業省の統計では、2024年のサツマイモの生産者価格は平均で1キログラムあたり約5,013ルピアだったとされています。

著者らが問題の中心に置いたのは、サツマイモが手に入らないことではありません。そうではなく、地元にある原材料としての可能性と、それを規格の整った販売可能な付加価値製品へ変える住民側の力との間にある隔たりです。この論文が報告するのは、その隔たりを埋めるために行われた地域貢献活動(コミュニティ・サービス)の取り組みです。具体的には、サツマイモを乾燥させてデーツ(ナツメヤシの実)に似た食感と見た目に仕上げる加工品を開発し、チカロン地域やチラタダムの観光地で売られる「ご当地みやげ」として通用する水準まで持っていくことを目指しました。著者らは、目標とする製品の条件として、べたつかない程度の弾力があること、繊維がはっきり見えないこと、デーツに似ていること、軽い甘さであることを挙げています。

12人への研修と、試作を繰り返す伴走支援

参加者は、チカロン村の起業志望者・住民12人です。活動は大きく研修と伴走支援(メンタリング)の段階に分けられました。研修は2026年6月1日、参加者の一人であり自身もサツマイモ畑を持つ住民の自宅で行われました。当日は村役場が祝日で閉まっていたため、会場を民家に変更したという経緯も記されています。研修の内容は、デーツ風サツマイモを作る実演のほか、起業家精神、新製品開発・イノベーション・ダウンストリーミング(原材料を半製品や完成品へ加工して付加価値を高めること)、イスラームのビジネス倫理、そしてShopeeなどのデジタル販売プラットフォームの活用に及びました。

理解度の変化を測るため、研修の前後で同じ10問を使った事前テストと事後テストが実施されました。設問は、サツマイモの収穫時期、保存性の高い加工品にできるかどうか、海外向けに売れる製品があるかどうか、デジタルプラットフォームでの販売方法やShopeeセラーを操作できるかどうか、といった内容です。

研修後の段階として、参加者が自宅で試作を行い、PKM(地域貢献)チームが日程を決めて助言と評価を行う伴走支援が続きました。加工には時間がかかるため、この支援は1日で終わるものではなく、必要に応じて何度も行われました。活動にあたっては、トレイ、包丁、たらい、バケツ、蒸し器、コンロ、乾燥用の敷物、包装資材、真空包装機などの器具が調達され、村へ提供されて意欲のある参加者が使える形にされています。

知識は伸びたが、製品はまだ販売可能な段階に届かなかった

テストの結果、参加者の知識と技能には測定可能な向上が見られました。平均点は事前テストの60%から事後テストの87%へと上がり、著者らはこれを27ポイントの上昇、相対的には45%の改善だと説明しています。一方で、Shopeeセラーのアプリを操作できると答えた人は事後テストでも12人のうち4人にとどまり、デジタル販売の実務面には不安が残ったことが報告されています。

製品づくりの方はより手強いものでした。最初の試作では期待した特性が得られませんでした。2回目は蜂蜜を使うなど原材料に手を加えたものの、なお改良が必要な仕上がりだったといいます。そこで3回目の試作が計画され、特に仕上げの工程、すなわち副材料の調整と加工技術の見直しに焦点が置かれました。試作の過程で得られた具体的な手がかりも記されています。普通のサツマイモと、甘みで知られるチレンブ種を比べたところ、チレンブ種のほうが良い結果が感じられたこと。使うサツマイモは収穫直後のものではなく3〜6日置いたものでなければならないこと。乾燥は長すぎても乾きすぎてもいけず、しんなりし始めた程度がよいこと。そして、天日干しと乾燥オーブンのどちらが良い結果になるかは、なお比較実験が必要だということです。

著者らは、活動期間内に製品が販売可能な段階に達しなかったことを明確に述べています。理由として、生産工程に約9日を要する点、そして乾燥の工程があるため試作を1回では済ませられず乾季を待つ必要がある点が挙げられています。その結果、製品の経済的な効果や販売実績は、この実施期間中には測定できませんでした。

研修だけでは製品は生まれない、という記録

この報告が示しているのは、二つの異なる隔たりの存在です。一つは知識と技能の隔たりであり、研修と事前・事後テストが扱ったのはこちらでした。もう一つは製品開発そのものの隔たりで、一貫した品質の売れる製品にたどり着くには試作の反復が要るという事実です。著者ら自身が、研修を行えばそれだけで商業的な収入がすぐに生まれるとは前提にしていない、と書き添えています。

地域の農産物に付加価値をつける取り組みを紹介する記録として、この論文は達成された部分と届かなかった部分を並べて示しています。参加者の理解は測定できる形で伸び、原料の選び方や乾燥の程度といった技術的な手がかりも蓄積されました。同時に、加工食品の開発が持つ時間の厚み——気候を待ち、試作を重ね、仕上げを詰めていく過程——が、活動期間という枠とどう折り合わないかもはっきりと記されています。

著者:Rabiatul Adwiyah(Bandung Islamic University)、Dede R. Oktini(Bandung Islamic University)、Nurdin(Bandung Islamic University)、Nina Maharani(Bandung Islamic University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rabiatul Adwiyah, Dede R. Oktini, Nurdin, et al. Development of Sweet Potato Commodities as an Innovation and Downstreaming Effort. Journal of Social Science and Business Studies 2026-09-29. DOI: 10.61487/jssbs.v4i3.333. 原著ライセンス:CC BY.