著者の所属・活動拠点の国は、ナイジェリアです。
掲載誌:FUDMA Journal of Sciences
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
魚の体の部位ごとに微生物を調べる理由
魚は世界中で重要な動物性たんぱく質源であり、ナイジェリアでも内水面漁業が家庭の栄養や雇用、収入を支えています。ナイルパーチ(Lates niloticus)は成長が速く身の質がよいことから商業的価値の高い淡水魚で、アフリカ各地の川や湖、ダムに広く分布しています。一方で、魚は生息する水の環境から漁獲、輸送、加工、販売に至るまで、さまざまな段階で微生物に汚染される可能性があり、その衛生面が課題とされています。
魚の体表や体内にはもともと多様な微生物がすみついており、その量や種類は体の部位や周囲の水質、取り扱い方によって変わります。なかでも頭部、えら、うろこ(皮膚)は水に直接さらされやすい部位です。著者らは、これまでの研究が主に魚の身(筋肉)の汚染や水質全般に注目しており、部位ごとの微生物の分布については情報が限られていたと指摘しています。そこで研究チームは、ナイジェリア北部カノ州のカニェダムで獲れたナイルパーチについて、頭部・えら・うろこに見られる微生物を調べ、部位ごとに比較しました。
調査の方法
カニェダムは漁業のほか、灌漑や家畜の水飲み場、生活用水などにも使われている貯水池です。研究チームは、地元の漁師から獲れたばかりの外見上健康な成魚27匹を入手し、氷で冷やして大学の研究室へ運び、採取から6時間以内に分析を始めました。
各魚の頭部、えら、うろこからそれぞれ約10グラムを取り出してすりつぶし、薄めた液を培養しました。酸素のある条件で増える細菌の総数、酸素のない条件で増える細菌(嫌気性菌)の数、カビなどの真菌の数を、培地上にできた集落の数(CFU、1グラムあたりの生きた微生物の数の目安)として数えています。あわせて、大腸菌群と糞便性大腸菌群も測定しました。大腸菌群は水や食品の衛生状態を判断する指標としてよく使われる細菌のグループで、その数は統計的な推定値(MPN)で表されます。
さらに、培養で得た細菌を、特定の細菌の性質を見分ける培地での育ち方、細胞壁の性質で細菌を大きく二つに分けるグラム染色、さまざまな生化学的な検査を組み合わせて調べ、どのような細菌かを推定しました。
主な結果
生きた細菌はすべての部位から見つかりました。細菌の総数は頭部が最も多く1グラムあたり平均164.67 CFU、次いでえら148.50 CFU、うろこ143.83 CFUでした。嫌気性菌も頭部(153.83 CFU)とうろこ(153.17 CFU)が多く、えらはやや少ない結果でした。真菌は逆にえらで最も多く(136.50 CFU)、頭部、うろこの順に少なくなりました。著者らは、三つの部位で細菌数が比較的近いことから、汚染が特定の部位に限られたものではなく、生息する水環境の微生物の状態を反映していると考察しています。
糞便性大腸菌群はどの部位も100ミリリットルあたり24 MPNで同じ値でした。大腸菌群の総数は12.40〜13.33 MPNの範囲で、部位による差はわずかでした。著者らは、すべての部位で糞便性大腸菌群が検出されたことは、生息する水環境が糞便に由来する汚染を受けていることを示唆するとしています。
細菌の種類としては、エンテロバクター属、大腸菌(Escherichia coli)、バチルス属、ブドウ球菌属、赤痢菌属(Shigella)が推定されました。最も多く分離されたのはエンテロバクター属で、頭部では分離された細菌の100%、えらでは75%、うろこでは50%を占めました。バチルス属はえらからのみ、赤痢菌属とブドウ球菌属はうろこからのみ見つかり、うろこが最も多様な細菌を持っていました。グラム染色では、どの部位でもグラム陰性の棒状の細菌が主体で、頭部はすべてグラム陰性菌でした。グラム陽性菌は主にえらとうろこで見られました。
研究が示すこと
この研究は、カニェダムのナイルパーチの頭部、えら、うろこにそれぞれ異なる特徴をもつ微生物がすみついていることを報告しています。衛生状態の指標となる大腸菌群や、病気を起こす可能性のある細菌が見つかったことから、著者らは水環境や取り扱いに関連した汚染の可能性を指摘しました。そのうえで、魚を衛生的に扱うこと、食べる前に十分に加熱すること、そして定期的な微生物の監視が、消費者の安全を守るうえで必要だと結論づけています。
原著論文の著者・所属:Nmesoma Eunice Eze(Department of Fisheries and Aquaculture, Bayero University, Kano, Kano State, Nigeria)、Halimat Sadiyat Ahmad、Kadijat Humi Aliyu、Musa Abdurrauf Aliyu、R.asheed Olatunji Moruf、Olayemi Philip Olateju
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nmesoma Eunice Eze, Halimat Sadiyat Ahmad, Kadijat Humi Aliyu, et al. Microbial Flora Associated with Different Body Parts of Nile Perch (Lates niloticus) from Kanye Dam, Kano State, Nigeria. FUDMA Journal of Sciences 2026-08-21. DOI: 10.33003/fjs-2026-1013-5796. 原著ライセンス:CC BY.