著者の所属・活動拠点の国は、ナイジェリアです。

掲載誌:Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research)

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

スヤは、牛肉などを串に刺し、「ヤジ」と呼ばれる香辛料をまぶして直火で焼く西アフリカの料理です。ナイジェリアでは手頃な値段ですぐに食べられる肉料理として広く親しまれ、路上の屋台で多く売られています。一方で、屋外で調理・陳列され、そのまま食べられるため、微生物に汚染されやすい食品でもあると著者らは指摘しています。

ナイジェリアのほかの都市では、スヤの微生物汚染に関する報告がすでにあります。しかし、ベヌエ州の州都マクルディにある大規模な市場、ワダタ市場については、最新の詳しいデータが不足していました。そこで研究チームは、この市場で売られる屋台のスヤについて、細菌やカビの量と種類、健康上問題となる病原菌の有無、販売者ごとの違いを調べました。

何をどのように調べたか

研究チームは、ワダタ市場の6つの販売者から、4週間にわたって牛肉のスヤを計60検体(1販売者あたり10検体)集めました。ある時点の状態を切り取って調べる「横断研究」と呼ばれる設計です。

検体は実験室で細かくすりつぶして薄め、培地で培養しました。そのうえで、生きている細菌の総数(総生菌数)とカビ・酵母などの真菌の総数を数えました。数は「cfu/g」で表しています。これは、食品1グラムあたりに含まれ、培地上で目に見える集落(コロニー)をつくれる生きた菌の数を示す単位です。

あわせて、大腸菌、サルモネラ属菌、黄色ブドウ球菌という3種類の病原菌が検体に含まれているかを調べました。分離された細菌と真菌は、見た目や顕微鏡観察、生化学的な検査で種類を特定しています。得られた菌数は、国際食品微生物規格委員会(ICMSF)の基準と比べ、販売者間の差は統計的に検討しました。

主な結果

60検体すべてで総生菌数が多く、平均は1グラムあたり4.1×10⁷ cfu(約4100万)でした。研究チームが用いたICMSFの基準では、すぐに食べられる食品は1グラムあたり10⁵ cfu(10万)を超えると「許容できない」水準とされます。今回は全検体がこの水準を上回り、「満足」や「許容範囲」に分類された検体はありませんでした。真菌も全検体から見つかり、平均は1グラムあたり6.5×10³ cfuでした。

病原菌については、大腸菌が全検体(100%)、黄色ブドウ球菌が88.3%、サルモネラ属菌が46.7%の検体から検出されました。こうした病原菌は、すぐに食べる食品では含まれないことが求められます。そのため研究チームは、この観点からも全検体が基準を満たしていないと報告しています。

細菌は全部で9つの属が分離されました。多かった順に、大腸菌、黄色ブドウ球菌、バチルス属菌(75.0%)です。真菌は6つの属が見つかり、最も多かったのはクロコウジカビ(アスペルギルス・ニガー、75.0%)、次がアスペルギルス・フラバス(63.3%)でした。アスペルギルス・フラバスは、発がん性のあるカビ毒「アフラトキシン」をつくることが知られています。ただし今回の研究では、カビ毒そのものの量は測っていません。

販売者別にみると、菌数が最も多かったのは販売者5、最も少なかったのは販売者4でした。総生菌数には販売者間で統計的に意味のある差は見られず、研究チームはこれを、問題が市場全体に共通していることを示すものと解釈しています。一方、大腸菌と黄色ブドウ球菌の菌数には、販売者間で統計的に意味のある差がありました。

研究が示すこと

著者らは、ワダタ市場で売られる屋台のスヤが、安全とされる水準を大きく超える細菌やカビに汚染されていたと結論づけています。そのうえで、加工、取り扱い、保存の改善と、規制の徹底が必要だとしています。

今回の調査は一つの市場だけを対象にしたもので、病原菌の薬剤耐性やカビ毒の量、販売者の衛生知識は調べていません。それでも、身近な屋台料理の衛生状態を具体的な数値で示した点に、この研究の意味があります。

原著論文の著者・所属:Bem, Alexander Adi(Department of Plant Science and Biotechnology, Federal University Dutsin-Ma)、Dawen, Debora E(Plateau State University Bokkos)、Sendeh, Dooember Evelyn(Department of Biology, Faculty of Science, Benue State University, Makurdi, Nigeria)、Bem, Linda Sewuese(Department of Plant Science and Biotechnology, Federal University Dutsin-Ma)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Bem, Alexander Adi, Dawen, Debora E, Sendeh, Dooember Evelyn, et al. MICROBIOLOGICAL QUALITY ASSESSMENT OF STREET-VENDED SUYA (SPICED GRILLED MEAT) SOLD IN WADATA MARKET, MAKURDI METROPOLIS. Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research) 2026-08-07. DOI: 10.5281/zenodo.21840692. 原著ライセンス:CC BY.