7月上旬、店先の桃がようやく色づき始めた。まだ走りの時期で、これから盛りを迎えていく果物だが、ひと口かじれば夏の甘さがじわりと広がる。その甘い果肉に、実は意外な成分が隠れていることはあまり知られていない。もも 白肉種 生には、コーヒー豆に多く含まれる成分として知られる「クロロゲン酸」が可食部100gあたり2.2mg含まれている。ポリフェノールの一種だ。桃を選ぶときに甘さや香りは気にしても、コーヒーとの意外な共通点まで意識する人は少ないだろう。

クロロゲン酸という顔

クロロゲン酸をめぐっては、特定の関与成分・配合量で構成された機能性表示食品において「食後の血糖値上昇を緩やかにする」旨の機能が消費者庁に届け出られた例がある。ただしこれは事業者による届出であり、国が個別に効果を審査・許可したものではない。また届出の対象は特定の製品・配合量の話であって、桃に含まれる量や、桃を食べること自体の効果とは前提がまったく異なる。※本記事は特定の食品の効果を示すものではありません。 とはいえ、甘い果実の中にこうした成分が息づいていると知ると、桃を頬張る一口が少し違って見えてくる。

桃はほかに、りんごやぶどうなど果実に広く含まれる代表的な酸味成分の一つ、リンゴ酸も0.3g(可食部100gあたり)を含む。桃特有の爽やかな後味を支える成分の一つと考えると、甘みと酸味のバランスもうなずける。ちなみに桃という名前の由来には諸説あり、実が赤いことから「燃実(もえみ)」が転じたという説などが伝えられている。植物としては桃は「核果類」に分類され、縫合線・果肉・種核・種子・果柄という構造を持つ。表面に毛のある実を桃、つるりとした実をネクタリンと呼び分けるが、どちらも桃類の仲間だ。エネルギーは可食部100gあたり38kcalと控えめで、たんぱく質0.6g、脂質0.1g、炭水化物10.2g、食物繊維1.3gという成分構成は、夏にすっきりと食べたい果物らしい軽やかさを物語っている。

今どき・食べどきの桃

桃はこれから盛りへ向かう季節の果物だ。日本人の食事摂取基準と照らすと、たんぱく質0.6gは女性30〜49歳の推奨量50g/日のわずか1%ほどで、桃はたんぱく源というよりみずみずしさと甘みを楽しむ果物と捉えるのがしっくりくる。1個の目安は250g程度で、冷やして丸かじりするのが一番の贅沢だが、まだ硬い実を買ってしまったときは常温に置いて追熟させるとよい(冷蔵庫に入れると甘みが出にくいとされる)。食べきれない分は皮ごとラップで包んで冷凍しておけば、まるごとなら2カ月ほど、カットしたものでも1カ月ほど楽しめる。凍らせた桃は常温に30秒ほど置くと皮がするりとむけるので、シャーベット感覚でそのまま食べても、ヨーグルトに添えても心地よい。

まとめ

桃はコーヒー豆と同じクロロゲン酸を持つ果実だった。機能性表示食品での届出例はあるものの、それは特定の製品・配合量での話であり、桃そのものの効果とは切り離して考えたい。それでも、甘い果肉の裏にこんな成分が息づいていると知ると、次に桃を選ぶときの視点が一つ増える。まだ走りの季節、これから盛りへと向かう桃を、今日のおやつや食後のデザートに味わってみてはどうだろう。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準