近年、健康だけでなく地球環境への影響も考えた「持続可能な食事」という考え方が注目されています。その代表例が、人の健康と環境の両方に配慮した食事のあり方を示す指標「EAT-Lancet食事指数」です。しかし、こうした環境に配慮した食のあり方について「知っていること」や「そう思っていること」は、実際の食生活にどこまで結びついているのでしょうか。今回紹介するのは、トルコの成人を対象に、食の持続可能性に関する知識や態度と、実際の食事内容がどう関連しているかを調べた研究です。

研究でわかったこと

この研究は、19歳から65歳までのさまざまな職業に従事するトルコ人成人3446人を対象に行われた横断研究です。参加者には、属性を尋ねる質問紙、食の持続可能性に関する知識・態度を測る質問紙、そして食事内容を尋ねる質問紙(食物摂取頻度調査)が実施されました。この食物摂取頻度調査の回答をもとに、14の食品グループの摂取頻度から、健康と環境の両立を目指す食事にどれだけ近いかを示す「EAT-Lancet指数」(0〜42点、点数が高いほど適合度が高い)が算出されています。

全参加者の平均スコアは23.41±3.61点でした。「持続可能な食事は健康的な食事と同じだと思うか」という考え方の違いによっては、スコアに統計的に有意な差は見られませんでした(p=0.240)。一方で、肉・牛乳・卵といった動物性食品を「環境に負荷がかかる」と認識している人は、そうでない人に比べて有意にスコアが高いという結果が示されました(すべての比較でp<0.05)。

また、「持続可能な方法で作られた食品により多くお金を払ってもよい」という意志の強さとEAT-Lancet指数との間には、非常に弱いながらも統計的に有意な正の相関が見られました。一方で、食の持続可能性に関する知識の量や態度そのものとスコアとの間には、意味のある関連は見られなかったと報告されています。さらに回帰分析では、婚姻状況・飲酒習慣・慢性疾患の有無・BMI(体格指数)が、EAT-Lancet食事パターンへの適合度と有意に関連していることが示されました。なお、年齢・性別・学歴といった従来注目されやすい人口統計学的な要因については、有意な関連は見られなかったとされています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、トルコの成人という特定の集団を対象にした一つの横断研究であり、ここで示された関連が他の国や集団にも同様に当てはまるかどうかは、この要旨だけからは分かりません。また横断研究という性質上、「知識や態度が食生活に影響を与えた」のか「もともとの食生活が知識や態度に影響した」のかという因果の方向性までは明らかにされていません。この研究は、食の持続可能性への理解を深めるための一つの手がかりとして捉えるのが適切で、結論が確定したものではない点に留意が必要です。

まとめ

今回の研究では、動物性食品を環境負荷が高いと捉えているかどうかや、持続可能な食品によりお金を払う意欲といった要因が、健康と環境に配慮した食事パターンへの適合度と関連していた一方、知識や態度そのものとの関連は乏しいことが示唆されました。また婚姻状況・飲酒・慢性疾患・BMIといった生活背景の要因も関わっていることが報告されています。持続可能な食のあり方を考えるうえで、単なる知識の普及だけでなく、こうした多面的な要因を踏まえる必要があることを示す研究といえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:トルコ人成人における食の持続可能性に関する知識とEAT-Lancet食事パターンへの態度の評価(ジャーナル・オブ・ヘルス・ポピュレーション・アンド・ニュートリション・2026年08月)