牛乳を使わない「植物性ヨーグルト」は、環境への配慮や健康志向の高まりから注目を集めています。しかし、水っぽい食感になりやすい、タンパク質量が少ない、味の面で好みが分かれるといった課題があり、市場での広がりを妨げてきました。今回紹介する研究は、大豆から作られる「大豆分離タンパク質(SPI)」を使ったヨーグルトに着目し、発酵の時間や貯蔵の経過によって、その物理化学的な性質や、粘りけ・弾力性といったレオロジー(流動・変形)特性、そして微細構造がどのように変化するのかを調べたものです。

研究でわかったこと

この研究では、大豆分離タンパク質(SPI)を異なる濃度で用意し、0時間、15時間、24時間という発酵時間で発酵させたのち、24時間の貯蔵を行い、乳製品(牛乳由来のヨーグルト)を対照として比較する形で実験が行われました。

まず酸性度の指標であるpHについては、発酵前後で対照(乳製品)とさまざまな濃度のSPI試料との間に、統計的に意味のある差は見られなかったと報告されています。一方で、発酵によって生じる乳酸の割合は、SPIの濃度が高いほど多くなる傾向が示され、乳製品と各濃度のSPIとの間には統計的に有意な差(p<0.05)が確認されたとされています。

食感に関わる重要な指標である「離水(液体がにじみ出る現象)」についても検討されており、SPIの濃度が高いほど、にじみ出る液体の割合が少なくなる傾向が示されました。特に9%濃度のSPIでは、48時間の時点で乳製品との間に統計的な差が見られなかったと報告されています。これは、離水しにくい=なめらかな食感を保ちやすい可能性を示す結果として位置づけられています。

白色度(WI、色の明るさ・白さを示す指標)は、発酵時間や試料によって数値に幅があり、0時間では59.29〜88.41、15時間では68.59〜87.28、24時間では67.96〜87.08、48時間では68.37〜87.15の範囲で変動したとされています。

さらに、レオロジー特性の解析では、SPIは弾性的な性質を示す指標(G′)が、粘性的な性質を示す指標(G″)を上回る「弱い粘弾性ゲル」を形成し、両者とも角周波数が増すにつれて増加する挙動が観察されたと報告されています。また、SPIの濃度が高くなるほど、発酵後の粘度が増加する傾向も示されました。

これらの結果を総合すると、研究チームは6%〜9%程度のSPI濃度について、その挙動や応用可能性についてさらなる研究が必要だとしています。全体として、この研究はSPIが植物性ヨーグルトにおいて、とろみを与える「ハイドロコロイド」や増粘剤、食感改良剤として活用できる可能性を示すものだと位置づけられています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究はあくまで実験室レベルでの物理化学的・レオロジー的な特性評価であり、SPIヨーグルトの味や実際の商品としての完成度、あるいは健康への効果を直接評価したものではない点に注意が必要です。要旨の中でも、植物性ヨーグルトの物理化学的・レオロジー的特性を改善することが、製品としての魅力を高め、持続可能な乳製品代替品を後押しする可能性がある、という方向性が示されているにとどまり、断定的な効果が述べられているわけではありません。

また、研究チームは今後の課題として、発酵させたSPI系における微生物学的な安全性の評価が必要だと述べています。つまり、この研究だけで植物性ヨーグルトとしての実用化が確立されたわけではなく、一つの基礎研究として位置づけるのが適切です。

まとめ

今回の研究は、大豆分離タンパク質を使ったヨーグルトが、発酵時間や濃度によって酸味のもとになる乳酸の量、離水のしにくさ、色合い、そして粘りけや弾力性といった食感面の性質を変化させることを、実験データに基づいて示したものです。特に6%〜9%程度の濃度が今後注目される可能性が示唆されていますが、味や安全性を含めた実用化の検証はこれからの課題とされています。植物性ヨーグルトの食感改善に向けた基礎的な知見として、今後の研究の広がりが期待されるところです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:発酵・貯蔵中の大豆分離タンパク質ヨーグルトの物理化学的、レオロジー的、微細構造的特性の検討(ジャーナル・オブ・フード・クオリティ・2026年01月)