著者の所属・活動拠点の国は、タイ、ベルギーです。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
豆乳や代替肉などに使われる大豆分離タンパク質(SPI)は、粉末のままだと粒が細かく、べたついて扱いにくいうえ、水に溶かそうとしても表面が水をはじきなかなか馴染まないという弱点があります。この弱点を解決する加工法のひとつが「流動層造粒」で、細かい粉末に水などの結合剤(バインダー)を霧状に吹きかけながら、熱風で粒同士をくっつけて大きな粒に育てる方法です。ただし液体を吹きかけすぎると粒同士がくっつきすぎたり、装置内の流動状態が乱れたりする問題があるため、どれだけ水を加えるかの匙加減が難しいとされてきました。
タイのマハーサラカム大学、カセサート大学、ベルギーのゲント大学の研究グループは、この匙加減を自動で調整する仕組みを試作し、その効果を検証しました。
装置の外に出る空気の湿度を見張って、水やりを自動でオン・オフ
実験では、初期水分量7.14%(湿量基準)の大豆分離タンパク質粉末300gを、直径30cm・高さ1mの円筒形装置に入れ、70℃の熱風で流動させながら加工しました。バインダーには蒸留水を使い、直径0.8mmの二流体ノズルから粉末の上方30cmの位置に霧状に噴射しています。この研究の特徴は、装置の排気口に設置した湿度センサー(SHT31、精度は±2%RH)で排気の相対湿度(RH)をリアルタイムに測定し、その値が70%を超えたら電磁弁を切り替えて水の行き先をノズルから排水ラインへ逃がし、70%を下回ったら再びノズルへ戻すという制御を行った点です。ポンプ自体は30分間の加工中ずっと動かし続け、水の行き先だけを切り替える方式が採られました。なお、この70%という設定値は、事前の実験ですべての条件で30分以内に到達することを確認したうえで選ばれた「実証用の値」であり、加湿しすぎの限界値として文献から導いたものではないと著者らは断っています。
比較のため、(1)霧吹き圧力(0.5・1.0・1.5バール)、(2)ポンプの設定流量(3.8・4.7・5.6mL/分)、(3)湿度制御ありなしの2通りの運転方法、を組み合わせた条件で加工を行いました。
湿度を自動調整すると、乾燥した粒がより多く、より大きく育った
湿度制御をしない連続噴霧の場合、排気の相対湿度は30分間を通じてほぼ右肩上がりに上昇し続け、条件によっては最終的に85.8%まで達しました。これに対し湿度フィードバック制御を行うと、噴霧のオン・オフを繰り返すことで排気湿度を70%付近に留めることができ、その結果、噴霧が実際にオンだった時間の割合(デューティ比)は0.67〜0.96に、実際に使われた水の量は1回あたり102.6〜131.0mLとなり、同じポンプ設定での連続噴霧に比べて4〜33%少ない水量で済んだことが示されました。
この「水を減らしつつ、当てるタイミングを絞る」制御の結果、湿度制御ありの条件では、検証した9つの条件すべてで最終的な粉末の水分含量が連続噴霧より低くなり、9条件中7条件で製品の回収率(850μmのふるいを通過した割合)が高くなりました。また粒の大きさ(中央粒径D50)はすべての条件で湿度制御ありのほうが大きく、粒径のばらつき(スパン)は9条件中7条件で小さくなるという結果も得られています。もともと粉末を造粒すること自体で、粒の詰まりやすさ(圧縮性指数やハウスナー比)や水になじむまでの時間(湿潤時間)は未加工の粉末より改善しましたが、湿度制御の有無がこうした粉体特性・湿潤時間・分散性に与える影響は、霧吹き圧力や実際に加わった水の量によって条件ごとにまちまちだったとも報告されています。
この研究の位置づけと注意点
著者らは、排気湿度に基づく制御は水分や湿度を扱った過去の造粒研究の中でも独自の切り口である一方、装置内部(粉末層そのもの)の水分やベッド内圧力、壁面への付着、流動状態の安定性は直接測定していないと明記しています。そのため、排気湿度の安定化が製品の違いを生んだ「唯一の要因」と単純には言えず、あくまで「湿度を見ながら水量とタイミングの両方を変える制御戦略全体」の効果として結果を解釈すべきだとしています。また、噴霧を止めている間もポンプ自体は動き続ける方式であるため、名目上の設定流量と実際にベッドへ届いた水の量は異なる点にも注意が必要です。製造工程の歩留まり(回収率)についても、ふるいを通過しなかった粗大粒やサイクロンで捕集された微粉などは計算に含まれておらず、完全な物質収支を示すものではないと著者らは述べています。これは実験室規模の一つの研究であり、その結果がそのまま工業規模の製造にあてはまるかどうかは、今後さらに大きな設備での検証が必要とされています。
まとめ
この研究は、大豆タンパク質の粉末を扱いやすく水に溶けやすい粒へと造粒する工程において、排気空気の湿度をセンサーで見張りながら結合剤(水)の供給を自動でオン・オフする制御方法の実現可能性を示したものです。湿度に応じて水の使用量とタイミングを調整することで、より乾いた製品を、より高い歩留まりで、より大きな粒として得られる傾向が確認された一方、粉体の流動性や溶けやすさへの影響は条件によって異なり、装置内部の水分や流動安定性への影響は今回測定されていません。ひとつの実験室規模の研究であり、今後の追加検証が待たれる段階にあります。
原著論文の著者・所属:Prarin Chupawa(Research Unit of Mechatronics Engineering, Faculty of Engineering, Mahasarakham University, Maha Sarakham 44150, Thailand)、Chanat Vipattanaporn(Faculty of Engineering, Mahasarakham University, Maha Sarakham 44150, Thailand)、Jatupon Saijantha(Faculty of Engineering, Mahasarakham University, Maha Sarakham 44150, Thailand)、Surachet Suanjan(Faculty of Engineering, Mahasarakham University, Maha Sarakham 44150, Thailand)、Frederik Ronsse(Department of Green Chemistry and Technology, Faculty of Bioscience Engineering, Ghent University, 9000 Gent, Belgium)、Jan Pieters(Department of Plants and Crops, Faculty of Bioscience Engineering, Ghent University, 9000 Gent, Belgium)、Donludee Jaisut(Department of Farm Mechanics, Faculty of Agriculture, Kasetsart University, Bangkok 10900, Thailand)、Wasan Duangkhamchan(Research Unit of Process Design and Automation, Faculty of Engineering, Mahasarakham University, Maha Sarakham 44150, Thailand)
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Prarin Chupawa, Chanat Vipattanaporn, Jatupon Saijantha, et al. Outlet-Air Relative-Humidity Feedback for Adaptive Binder Delivery During Pulsed Fluidized-Bed Agglomeration of Soy Protein Isolate. フーズ (2026). DOI: 10.3390/foods15162846. 原著ライセンス: cc-by.