大豆やアーモンド、ココナッツなどを原料にした「植物性ヨーグルト」は、健康志向や環境配慮の高まりを背景に、スーパーの売り場でも見かける機会が増えました。世界的な食生活の指針でも植物性食品への移行が呼びかけられており、乳製品ヨーグルトの代わりにこうした製品を選ぶ人も増えているようです。しかし、見た目や食感は似ていても、栄養面でも本当に「代わり」になるのでしょうか。この点を検証したのが、フロンティアーズ・イン・ニュートリション誌に2026年08月に掲載予定の論文です。研究チームは、スイスで販売されている発酵タイプの植物性ヨーグルト代替食品を対象に、栄養成分の実態と、乳製品ヨーグルトを置き換えた場合に微量栄養素の摂取量がどう変わるかを調べました。
研究でわかったこと
この研究では、2025年にスイスの主要な小売店を対象に、発酵させた植物性ヨーグルト・ヨーグルト様製品の市場調査が行われました。製品パッケージの表示から栄養成分や微量栄養素の強化状況が集められ、さらにスイスの食品成分データベース、国の摂取量データ、栄養摂取基準を用いて、乳製品ヨーグルトを大豆ベース・ココナッツベースの代替品に置き換えた場合の影響がシミュレーションされました。
調査の結果、合計98種類の製品が確認され、そのうち大豆ベースが36.6%、ココナッツベースが26.8%と、この2つの原料が中心であることが示されました。大豆ベースの製品はたんぱく質含有量が乳製品ヨーグルトに最も近く、総エネルギーや飽和脂肪は乳製品より低い傾向が見られました。一方でココナッツベースの製品は、エネルギー密度が高く飽和脂肪も多いのに対し、たんぱく質は少ないという特徴が示されています。
また、微量栄養素で「強化」されていた製品は全体のわずか18.4%にとどまっていました。強化されていない植物性代替品を乳製品ヨーグルトと1対1で置き換える想定でシミュレーションを行ったところ、カルシウム、ヨウ素、リン、亜鉛、ビタミンA、B2、B5、B12の摂取量が減少するという結果が示されました。一方で、大豆ベースの代替品を使った場合には、葉酸の摂取量はむしろ増加することも報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、あくまでスイス市場で販売されている製品の表示情報や既存のデータベースをもとにした分析であり、実際に人がこれらの製品を食べて栄養状態がどう変化したかを直接調べたものではない点に注意が必要です。また、対象となったのはスイスで流通する製品に限られており、他の国・地域の市場状況にそのまま当てはまるとは限りません。一つの市場調査研究であり、これをもって植物性ヨーグルト全般の栄養価が一律に評価されたわけではない点も踏まえておく必要があります。
研究チームは、植物性ヨーグルト代替食品は種類によって栄養組成にかなりのばらつきがあり、強化が限定的であることから、現状では乳製品ヨーグルトと栄養的に単純に置き換えられるものではないと結論づけています。植物性食品への移行を栄養的に無理なく進めるためには、強化の取り組みの改善や、根拠に基づいた消費者への情報提供が必要だとしています。
まとめ
植物性ヨーグルトは選択肢として広く普及しつつありますが、今回の調査では製品によって栄養成分に差があり、微量栄養素の強化が行われている製品はまだ少数派であることが示されました。乳製品ヨーグルトから植物性代替品への置き換えを考える際には、パッケージの栄養表示を確認するなど、製品ごとの違いを意識することが一つの手がかりになりそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:スイスにおける発酵植物性ヨーグルト代替食品:栄養的妥当性と強化の実態(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年08月)