ジャンクフードやインスタント食品のような「超加工食品」を日常的に食べる生活が、まだ若く健康なはずの体にどんな影響を及ぼしうるのか。インドネシアの国防大学(Universitas Pembangunan Nasional Veteran Jakarta)の研究チームが、同大学の男子医学生を対象に、超加工食品の摂取量と血管の弾力性との関連を調べた研究をワールド・ニュートリション・ジャーナルに発表しました。血管の弾力性が低下することは、高血圧や動脈硬化といった心血管疾患に先立って現れる早期のサインとされ、研究チームはこれを「血管の老化」を映す指標のひとつと位置づけています。
忙しい医学生と血管の状態を調べる
この研究は、2025年8月から10月にかけて同大学の生理学・栄養学研究室で実施されました。対象となったのは18〜22歳の男子医学生50人で、単純無作為抽出により選ばれています。喫煙者や飲酒者、糖尿病・高血圧の既往がある人は除外され、身体活動量が中程度で、睡眠の質やストレスの程度が把握できる参加者に限定されました。なお、女性ホルモンであるエストロゲンが血管の弾力性を保つ方向に働く可能性が指摘されていることから、性差による影響を避けるため対象は男性のみに絞られています。
超加工食品の摂取量は、インドネシアの大学生向けに開発された食物摂取頻度調査票(過去30日間の食事を尋ねるもの)を基に、NOVA分類に沿って超加工食品とみなされる食品・飲料40品目を組み込んだ調査票で評価されました。回答はNutriSurveyという解析ソフトを用いて、総エネルギー摂取量や、超加工食品由来の糖分・塩分・脂質の量に換算されています。血管の弾力性は、Accelerated Photoplethysmograph(APG)SA-3000Pという非侵襲の測定機器で評価されました。指先などに光を当てて脈波を捉える方法で、同じ訓練を受けた検査者が一貫した手順で測定しています。
糖分摂取だけが弾力性の低下と関連
参加者は超加工食品から1日平均およそ1327kcal(総エネギー摂取量の約50%)を摂取しており、よく食べられていた食品はインスタント麺やフライドチキン、よく飲まれていた飲料はフルーツ味の炭酸飲料やチョコレート麦芽飲料でした。血管の弾力性を「至適」「正常」「やや低下(suboptimal)」の3段階で見ると、64%の参加者が「やや低下」に分類され、この年齢層としては血管の弾力性が低めの人が多いという結果でした。
統計解析の結果、超加工食品から摂取するエネルギーの割合や、塩分・脂質の摂取量は、血管の弾力性との間に統計的に意味のある関連は見られませんでした(それぞれp=0.471、p=0.990、p=0.763)。一方で、超加工食品由来の糖分摂取量だけは、血管の弾力性と関連が見られました。1日50gを超える糖分を超加工食品から摂取していたグループでは、弾力性が「やや低下」している人の割合が63.6%だったのに対し、50g以下のグループでは28.2%にとどまり、この差は統計的に意味のあるものでした(p=0.041、有病割合比2.256、95%信頼区間1.153〜4.406)。論文では、この関連を説明しうる仕組みとして、糖分の過剰摂取が食後高血糖を引き起こし、血管を広げる働きを持つ一酸化窒素の産生を妨げる経路が想定されると述べられていますが、この研究自体でそうした生体内の反応を直接測定したわけではないと明記されています。
この結果をどう読むか
著者らは、いくつかの限界があることを論文中で述べています。まず、超加工食品由来の栄養素は調べたものの、参加者の食事全体のパターンまでは評価していない点です。また、血液中の脂質(コレステロールなど)のデータを取っていないため、把握されていない脂質異常が結果に影響した可能性を否定できないとしています。さらに、参加者数が50人と少なく、体格指数(BMI)やストレスの程度といった他の要因の影響を統計的に調整する解析(多変量回帰分析)を行うには不十分だったこと、そして対象が単一の大学の男子医学生に限られているため、結果を他の集団にそのまま当てはめられるとは限らない点も限界として挙げられています。
また、超加工食品全体の摂取量や塩分・脂質の摂取量については有意な関連が確認されなかった一方で、参加者の66%という多くが「やや低下」した血管弾力性を示していたことから、著者らは食事以外にも、肥満度や慢性的なストレス、睡眠不足といった要因が組み合わさって血管の状態に影響している可能性があると考察しています。
まとめ
今回の研究では、健康な若い男子医学生であっても、超加工食品由来の糖分摂取が多いグループで血管の弾力性がやや低下している傾向が統計的に示されました。一方、総エネルギー摂取量や塩分・脂質摂取量については明確な関連は確認されませんでした。これは50人規模の一つの研究であり、対象や測定方法が異なれば結果が変わる可能性もあるため、結論が確定したものではありません。著者らは、超加工食品からの糖分摂取を控えることが、若い世代の血管の健康を保つうえで一つの手がかりになりうると述べていますが、これは今後さらに検証が必要な示唆にとどまります。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Azizah Salsabila Mahmud, Nurfitri Bustamam, Erna Harfiani, et al. Ultra-processed foods consumption and arterial elasticity among male medical students at Universitas Pembangunan Nasional Veteran Jakarta. ワールド・ニュートリション・ジャーナル (2026). DOI: 10.25220/wnj.v10.i1.0013. 原著ライセンス: cc-by.