著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Plant Science Today

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究のねらい

インドの小麦生産では、生育の終盤に高温にさらされる「ターミナル・ヒートストレス」が収量を押し下げる大きな要因とされています。これは穂が出て実が育つ大切な時期に暑さが重なることで、気候変動の影響を受けやすい問題だと研究チームは位置づけています。

研究チームは、種をまく日を変えると生育や生理的な性質、収量がどう変わるのか、またその影響が品種によってどう異なるのかを調べることを目的に、6つの小麦の遺伝型(品種・系統)を比較しました。

どのように調べたか

実験は2023〜24年の「ラビ期」(インドで冬に作物を育てる作期)に畑で行われました。種まきの日は、早まき(11月5日)、適期まき(11月25日)、遅まき(12月20日)の3通りです。種まきが遅いほど、穂が出て実る時期がより暑い季節にずれ込み、高温の影響を強く受ける設定になっています。

研究チームは、草丈や植物体の重さ(バイオマス)などの生育の指標、穂の長さや1穂あたりの粒の重さ、粒重(テストウェイト)といった収量に関わる性質、葉の葉緑素の量、そして最終的な穀物収量を記録しました。これらのデータは、種まきの日と品種という二つの要因の影響を分けて調べる統計手法(二元配置分散分析)で解析されています。

主な結果

報告によると、種まきの日は主な生育・収量の性質のすべてに有意な影響を与えていました。早まきと適期まきでは、草丈が高く、バイオマスが多く、穂が長く、1穂あたりの粒の重さや粒重も大きくなり、収量は高く安定していました。

一方、遅まきでは生育終盤に強い高温ストレスがかかり、生育や葉緑素の量、収量が大きく低下しました。平均収量は、適期まきの1ヘクタールあたり約4.55〜4.56トンから、遅まきではわずか1.41トンへと急落したと報告されています。

品種による違いも見られました。UP2565とUP2844は高温条件でも一貫して成績がよく、バイオマスや粒重、収量の安定性を比較的保っており、著者らはこれらが高温に強い性質を持つことを示すとしています。反対にPBW343は高温の影響を強く受け、生育や光合成の能力、収量が目立って低下しました。

この研究が示すこと

この研究は、小麦の高温による減収を抑えるうえで、種まきの時期を適切に選ぶことが重要であり、あわせて高温に強い品種を見極めることも大切であることを示しています。著者らは、適期の種まきとUP2565やUP2844のような高温に強い品種の組み合わせが、気候の変動のもとで小麦の生産を維持するための有効な手立てになりうると結論づけています。

原著論文の著者・所属:D J Kamla(Department of Horticulture, School of Agricultural Sciences, Shri Guru Ram Rai University, Patel Nagar 248 001, Uttarakhand, India)、P Rabiya(Department of Agronomy, School of Agricultural Sciences, Shri Guru Ram Rai University, Patel Nagar 248 001, Uttarakhand, India)、K Hitendra(Department of Entomology, School of Agricultural Sciences, Shri Guru Ram Rai University, Patel Nagar 248 001, Uttarakhand, India)、S Sarvesh(Department of Botany, Dayanand Brijendra Swarup (Post-Graduate) College, Dehradun 248 001 Uttarakhand, India)、K Rupinder(Department of Agriculture, Tula’s Institute, Dehradun 248 001, Uttarakhand, India)、C Girish(Department of Seed Science & Technology, School of Agricultural Sciences, Shri Guru Ram Rai University, Patel Nagar 248 001, Uttarakhand, India)、S Shweta(Department of Microbiology, School of Basic & Applied Sciences, Shri Guru Ram Rai University, Patel Nagar 248 001, Uttarakhand, India)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):D J Kamla, P Rabiya, K Hitendra, et al. Genotypic performance of wheat (Triticum aestivum L.) for terminal heat stress across different sowing dates. Plant Science Today 2026-09-15. DOI: 10.14719/pst.11679. 原著ライセンス:CC BY.