この研究は、インドネシア、オーストラリアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Jurnal Kesehatan
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
なぜ「菌株ごとの違い」を調べたのか
プロバイオティクスとは、適切な量をとったときに宿主の健康に役立つとされる生きた微生物のことです。腸内にすむ微生物の集まり(腸内細菌叢)のバランスを整えたり、腸の壁の働きを支えたり、免疫の反応を調整したりする手段として、近年関心が高まっています。
ただし、研究チームは、プロバイオティクスの効き方は菌の種類、とりわけ「菌株」によって異なる(菌株特異的である)にもかかわらず、異なる菌種どうしの利点を比べた根拠はまだ限られていると指摘しています。そこで本研究は、特定の菌株が腸の健康の改善や消化管の不調の管理にどの程度有効かを、既存の研究を集めて整理・評価することを目的としました。
どのように調べたか
著者らは、医学・栄養学の論文を広く収録する三つのデータベース(PubMed、Scopus、Web of Science)を使い、2014年から2024年までに英語で発表された論文を検索しました。検索語には「プロバイオティクス」「ラクトバチルス」「ビフィドバクテリウム」「サッカロミセス・ブラウディ」などを、「腸の健康」「腸内細菌叢」「免疫機能」「炎症」「腸管バリア」といった語と組み合わせています。
最初に見つかった176件から重複28件を除き、148件を題名と要旨で絞り込み、36件を本文まで読んだうえで、最終的に条件を満たした12件を分析対象としました。対象としたのは、特定の菌株を扱い、消化管・腸内細菌叢・免疫に関する結果を報告し、介入内容が明確に記された査読済みの原著論文です。
対象となった研究は、菌株も対象者も介入方法も期間も評価指標もばらばらだったため、著者らは数値を統合する統計解析(メタアナリシス)は適切でないと判断し、菌種ごとに整理して記述的にまとめる方法をとりました。なお論文中には、この研究をメタアナリシスと呼ぶ記述も併存しています。
報告された主な結果
12件を通して一貫していたのは、効果が菌株に依存するという点でした。最もよく調べられていたのはラクトバチルス属とビフィドバクテリウム属です。ラクトバチルス属は、腸の壁のバリア機能を高め、病原菌の定着を競合的に妨げ、抗菌性の物質をつくり、腸粘膜の免疫反応を調整することで、下痢や過敏性腸症候群(IBS)の症状の改善と結びついていたと報告されています。ビフィドバクテリウム属は、炎症を抑える方向に働くサイトカインの産生や短鎖脂肪酸の合成を促し、腸内細菌の多様性を高めるといった免疫調整の働きが一貫して示されました。
細菌ではなく酵母であるサッカロミセス・ブラウディについては、抗生物質の使用にともなって起きる下痢(抗生物質関連下痢症)の予防に関して、最も強い臨床的根拠があったとされています。病原体の定着を妨げ、細菌が出す毒素を無力化し、乱れた腸内細菌叢の回復を早める働きが、含まれた研究で報告されました。一方、アッカーマンシア・ムシニフィラやバクテロイデス・ユニフォルミスといった新しい候補は、粘膜バリアの維持や代謝調節の面で有望な仕組みが示されたものの、扱った研究数が少なく、根拠は上記三つの属ほど確かではないと位置づけられています。
複数の菌株を組み合わせた製剤は、作用の仕組みが互いに補い合うため単一菌株より幅広い利点を生みやすい一方、著者らは、その優位性を一般化することはできないとしています。結果は菌株どうしの相性、用量、期間、病態によって変わるためです。また、プロバイオティクスを届ける食品の側も重要で、ヨーグルトやケフィア、チーズなどの乳製品は保存中や消化管を通る間の生存に適した条件を備えている一方、発酵野菜や穀物・植物由来の飲料といった植物性の食品も有効な担体になり得え、乳糖不耐の人や植物性の食事を好む人に適していると整理されました。菌体を保護膜で包むマイクロカプセル化や、菌株と食品の性質を合わせる選択が、生存率を保つうえで有効な方法として挙げられています。
この総説が示すこと
この総説が伝えているのは、「プロバイオティクス」とひとくくりにして効果を語ることはできない、ということです。同じ属や種であっても、菌株が違えば酸や胆汁への耐性も、腸で果たす働きも異なります。著者らは、現時点で最も一貫した根拠があるのはラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属、サッカロミセス・ブラウディの三つだとしたうえで、菌株ごとの臨床的な推奨を定めるには、設計のしっかりしたランダム化比較試験がさらに必要だと述べています。
著者:Khairun Nisa Berawi(Physiology Department, Medical Faculty, Universitas Lampung, Bandar Lampung, Indonesia)、Sutopo Hadi(Chemistry Department, Math & Science Faculty, Universitas Lampung, Bandar Lampung, Indonesia)、Maria Erna Kustyawati(Agriculture Product Technology Department, Agriculture Faculty, Universitas Lampung, Bandar Lampung, Indonesia)、Aprina Aprina(Nursing Department, Poltekkes Kemenkes Tanjung Karang, Bandar Lampung, Indonesia)、Michele Adiva(Molecular Science Department, Science Faculty, University of Adelaide, Adelaide, Australia)、Rizki Arisandi(Physiology Department, Medical Faculty, Universitas Lampung, Bandar Lampung, Indonesia)、Norbertus Marcell Prayogi(Physiology Department, Medical Faculty, Universitas Lampung, Bandar Lampung, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Khairun Nisa Berawi, Sutopo Hadi, Maria Erna Kustyawati, Aprina Aprina, Michele Adiva, Rizki Arisandi, Norbertus Marcell Prayogi Potency of a Specific Probiotic in Promoting Health Quality: A Study of Microbiota Gut Brain Axis. Jurnal Kesehatan 2026-09-09. DOI: 10.26630/jk.v17i2.5644. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。