著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。

掲載誌:Exposure and Health

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

研究チームは、米国に暮らすアジア系住民が、どのような経路で有害な金属を体内に取り込んでいるのかを、既存の研究から整理しました。背景には、米国の全国調査で、アジア系住民の血液や尿に含まれる一部の金属の濃度が、他の人種・民族集団より高いと報告されてきたことがあります。

このレビューでは、体内への取り込みを示す血液・尿・毛髪などの測定結果と、食事や製品、仕事などの曝露源をまとめ、アジア系住民の中での違いや、これまで十分に調べられていない点を明らかにしようとしました。

何を、どのように調べたか

研究チームは医学文献データベースのOvid MEDLINEを使い、1990年から2023年7月20日までに英語で発表された研究を検索しました。対象は、米国生まれ、または国外で生まれて米国に暮らすアジア系住民について、金属の曝露源や体内濃度を調べた査読済み論文です。検索結果に手作業で見つけた論文も加え、最終的に58本を分析しました。

58本のうち51本は、ある時点の曝露や体内濃度などを調べる横断研究で、7本は個別の患者などを扱う症例報告でした。48本は曝露源を扱い、10本は曝露源を特定せずに体内濃度を報告していました。研究チームは、金属の種類、調査対象、測定方法、食事・消費者製品・職業・住環境などの経路ごとに内容を整理しました。測定試料や単位、分析方法が大きく異なるため、各研究の濃度を統一して一つの推定値にまとめることはしていません。

主な報告結果

著者らは、他の人種・民族集団と比べて体内濃度が高いという報告が比較的一貫していた金属として、水銀、ヒ素、カドミウムを挙げています。特に水銀では、魚介類を多く食べることと、血液や毛髪の濃度が高いことが、複数の研究で併せて報告されていました。魚種によって汚染の程度は異なり、マグロやメカジキなどは水銀濃度が高い魚として挙げられる一方、エビやティラピアなどは低いと報告されていました。国外生まれのアジア系住民は、米国生まれの住民より水銀の測定値が高いという報告もありました。

ヒ素については、より毒性の強い無機ヒ素の主な曝露源として米が挙げられました。また、伝統的な治療薬に含まれるヒ素による重い中毒の症例報告もありました。カドミウムでは、喫煙が血液や尿の濃度の高さと最も一貫して関連しており、食事からの曝露源として野菜や穀類も報告されていました。

鉛については、アジア系住民の体内濃度が他の集団より高いかどうかは、研究によって結果が分かれました。一方、曝露源としては、輸入された治療薬、香辛料、化粧品、陶器や釉薬を使った食器、たばこ、建設・住宅修繕作業など、多様なものが挙げられました。移民の子どもや若者、移住して間もない人で血中鉛濃度が高いという報告もあり、曝露の状況は金属だけでなく、出生地や移住歴、生活条件によっても異なっていました。

この報告が示すこと

著者らは、アジア系住民の金属曝露を一つの原因で説明するのではなく、食事、喫煙、伝統的な治療薬、輸入製品など、重なり合う経路として捉えています。「アジア系」という大きな区分だけでは、出身集団や移住歴、社会経済的な条件に応じた違いが見えにくくなる、というのがこの報告の重要な意味です。

ただし、検索は一つのデータベースと英語論文に限られ、各研究の質を正式に評価する手続きも行われていません。測定方法や対象集団にも違いがあるため、研究間の濃度をそのまま比較したり、同じ結果を報告した論文の多さを証拠の確かさとみなしたりすることはできません。このレビューは、曝露源と集団内の違いを整理したものであり、すべてのアジア系住民に共通する曝露の姿を示すものではありません。

原著論文の著者・所属:J. Doris Chi(School of Public Health, Yale University, New Haven, CT, 06520, USA)、Amy E. LaVertu(Hirsh Health Sciences Library, Tufts University, Boston, MA, 02111, USA)、Sabrina Balmaseda(Bouvé College of Health Sciences, Northeastern University, Boston, MA, 02115, USA; Institute for Clinical Research and Health Policy Studies, Tufts Medical Center, Boston, MA, 02111, USA)、MyDzung T. Chu(Department of Medicine, Tufts University School of Medicine, Boston, MA, 02111, USA; Institute for Clinical Research and Health Policy Studies, Tufts Medical Center, Boston, MA, 02111, USA; Woman, Mother + Baby (WoMB) Research Institute, Tufts Medical Center, Boston, MA, 02111, USA)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):J. Doris Chi, Amy E. LaVertu, Sabrina Balmaseda, et al. Environmental Sources of Toxic Metal Exposure Among Asian Populations in the United States: A Descriptive Review. Exposure and Health(出版社:Springer Science+Business Media) 2026-11-04. DOI: 10.1007/s12403-026-00822-8. 原著ライセンス:CC BY.