掲載誌:Revista fisio&terapia.
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームは、重症患者における抗菌薬の使用と、腸内にすむ微生物の集まりである「腸内細菌叢」の乱れとの関係を整理し、栄養管理でどのように対応できるかを検討しました。特に、生きた有用な微生物を利用するプロバイオティクスと、有用な腸内微生物に利用される成分であるプレバイオティクスに注目し、施設内の下痢の栄養管理手順を更新するための根拠をまとめることが目的でした。
著者らは、重症患者では抗菌薬だけでなく、病気の重さや絶食、集中治療室への入院も腸内細菌叢の乱れに関係すると説明しています。感染症の治療に欠かせない抗菌薬が、腸内微生物の多様性を低下させ、下痢などの消化管の問題に関わることが、このレビューの背景にあります。
何を、どのように調べたか
本研究は、既存の研究を集めて論点ごとに整理する、探索的なナラティブレビューです。研究チームは2025年4月から2026年10月にかけて、PubMed、SciELO、Google Scholarを検索し、2023年の重症患者の栄養療法に関するBRASPENガイドラインも参照しました。
主な選定対象は、2016~2025年にポルトガル語または英語で発表され、全文を読める成人対象の臨床試験、観察研究、システマティックレビュー、メタ解析でした。入院患者や重症患者の研究を優先し、重症患者の研究がない場合には健康な成人の研究を間接的な根拠として扱いました。動物実験や試験管内の実験のみの研究などは除外しました。
タイトルと要旨を確認した後、候補文献の全文を読み、対象者、方法、主要結果、臨床への適用可能性を検討しました。抗菌薬による腸内細菌叢の変化と、プロバイオティクス、プレバイオティクス、食物繊維を用いた栄養管理について、研究間で一致する点と異なる点を整理しました。
主な報告結果
著者らは、集めた研究から、抗菌薬治療は腸内細菌叢の構成を変化させる一方、プロバイオティクスやプレバイオティクスには、腸内微生物の状態を調整し、消化管の問題を予防するうえで有望な結果があると報告しています。ただし、その効果は使用する微生物の種類や介入内容、患者の状態によって異なりました。
プロバイオティクスについて紹介された成人対象のメタ解析では、抗菌薬に関連する下痢の発生が、プラセボと比べて相対的に38%少ないと報告されていました。一方、著者らは、下痢などの症状への効果と、腸内微生物の多様性を十分に回復させることは同じではなく、プロバイオティクスが抗菌薬の影響を完全に解消するとは捉えられないとしています。
食物繊維については、経管栄養を受ける入院患者959人を含む16件の無作為化比較試験のメタ解析を取り上げています。この解析では、食物繊維の補給により、食物繊維を含まない栄養剤と比べて下痢の発生が相対的に36%少なく、根拠の確実性は中程度と評価されていました。別のレビューでは、主に水溶性食物繊維について、血圧や血流などの循環状態が安定した重症患者で、下痢などの症状に有利な結果と安全性が報告されていました。
この報告が示すこと
研究チームは、栄養管理を一律に行うのではなく、患者の病状、消化管の耐容性、介入の安全性を踏まえて個別に判断すべきだと結論づけています。施設内の手順の更新は、こうした判断の基準をそろえ、下痢の栄養管理をより安全に進める助けになると位置づけています。
ただし、検討された研究は介入方法や対象者がさまざまで、入院患者や健康な成人で得られた結果も含まれています。著者らは、この違いが重症患者全体への結果の当てはめを制限するとしており、報告の中心は、特定の製品や成分の一律使用ではなく、根拠と患者の状態を組み合わせた栄養管理にあります。
原著論文の著者・所属:Lais da Silva、Ana Karoline Gallon、Ana Paula Machado dos Santos、Bruna Paula de Assis Evangelista、Carla Andressa Martins、Leticia Alves Seufitelli、Lorena Simões Pereira、Lorenza Santini Caetano Knaack、Meyre Romanha Heringer、Patricia Ferraz Lima、Thais de Freitas Diniz、Victoria Trassi Costa Zordan
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lais da Silva, Ana Karoline Gallon, Ana Paula Machado dos Santos, et al. Disbiose intestinal associada ao uso de antibióticos em pacientes críticos: evidência para o manejo nutricional e atualização do protocolo institucional. Revista fisio&terapia. 2026-10-31. DOI: 10.69849/ra1f0596. 原著ライセンス:CC BY.