著者の所属・活動拠点の国は、アメリカ、イギリスです。
掲載誌:Lipids
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
論文のねらい
米国では、国民向けの栄養に関する公式な推奨として「アメリカ人のための食生活指針」が定期的に改訂されています。2025〜2030年版の指針には、栄養の専門家から評価された推奨がある一方で、裏付けとなる根拠が乏しいとして疑問視された推奨もありました。
この論文で著者らは、新しい指針のうち議論を呼んでいる推奨について、支持する根拠と反対する根拠の両方をまとめています。賛成論と反対論を並べて示す「ポイント/カウンターポイント」という形式をとっています。以下は論文の抄録に記載された内容にもとづく紹介です。
評価されている推奨
著者らによると、新しい指針には強い根拠にもとづく推奨が含まれています。カロリーの管理、栄養密度(エネルギー量に対してどれだけ栄養素を含むか)の重視、野菜・果物・全粒穀物をとること、そして添加糖・ナトリウム・アルコールを控えることです。これらは以前の版から引き継がれてきたものだと論文は述べています。
また、超加工食品を控えることや、添加糖を1回の食事ごと、製品ごとに制限するという推奨も好意的に受け止められていると紹介されています。
議論を呼んでいる推奨
論文が論争の中心として挙げているのは、脂肪の種類に関する推奨です。新しい指針では、バターや牛脂を含むものが「健康的な」脂肪として挙げられています。一方で、不飽和脂肪酸、とくに多価不飽和脂肪酸を多く含む種子油については指針に記載がありません。
さらに、全脂肪の乳製品やバター、牛脂、赤身肉などの動物性食品をとるよう勧める食品ベースの推奨があります。著者らは、これが飽和脂肪を総カロリーの10%未満に抑えるという長年の推奨と一致しないと指摘しています。
たんぱく質については、推奨量が引き上げられたことや、毎食20グラム以上をとるよう勧めていることにも懸念が示されているといいます。また、新しい「フードピラミッド」で動物性食品が最上部に、全粒穀物が最下部に置かれていることにも疑問が出ていると論文は伝えています。
著者らは、新しい指針の一部を支持する世界各地の食事推奨と、一致しない食事推奨の両方も取り上げています。あわせて、指針を広く普及させるための方策にも触れています。
この論文が示すもの
この論文は、新しい食生活指針を一括して肯定も否定もしていません。従来から強い根拠のある推奨は以前の版から引き継がれたものとして示したうえで、議論を呼んでいる新しい推奨について、支持する根拠と反対する根拠の両方をまとめています。公的な食事指針のどの部分に議論があるのかを整理した論文といえます。
著者:James Thomas Brenna(Dell Pediatric Research Institute, Departments of Pediatrics, of Chemistry, and of Nutrition The University of Texas at Austin Austin Texas USA)、Yan Ning Li(Dell Pediatric Research Institute, Departments of Pediatrics, of Chemistry, and of Nutrition The University of Texas at Austin Austin Texas USA)、Penny M. Kris‐Etherton(Department of Nutritional Sciences The Pennsylvania State University University Park Pennsylvania USA)、Philip C. Calder(School of Human Development and Health, Faculty of Medicine University of Southampton Southampton UK)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):James Thomas Brenna, Yan Ning Li, Penny M. Kris‐Etherton, et al. Point/Counterpoint on the Controversial 2025–2030 Dietary Guidelines for Americans. Lipids 2026-10-16. DOI: 10.1002/lipd.70088. 原著ライセンス:CC BY.