この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

何のための研究か

熟成プーアル茶(熟茶)は、独特の風味と健康面での期待から広く飲まれているお茶です。ただし研究チームは、その風味の好まれやすさにはまだ改善の余地があると指摘しています。そこで、味わいの質を高め、商品の形を広げる方法として、別の植物と混ぜ合わせる(ブレンドする)やり方に注目しました。

組み合わせの相手として選ばれたのがアメリカ人参(ウコギ科のPanax quinquefoliusの根を乾燥させたもの)です。論文によれば、アメリカ人参は中国で古くから用いられてきた素材で、2023年には中国で食品原料と伝統的な生薬の両方として使える素材として正式に認められました。著者らは、アメリカ人参と熟成プーアル茶が風味と成分の両面で互いを補い合う特徴を持つと述べています。アメリカ人参はジンセノサイド類やフラボノイド類を多く含み、熟成プーアル茶は茶ポリフェノールや発酵によって生まれた成分、そして特徴的な熟成香を備えているという整理です。

一方で、これまでのアメリカ人参と熟成プーアル茶のブレンド研究は、官能評価(人が味や香りを評価すること)や個別の成分の分析に偏っていたと著者らは述べます。混ぜる割合を変えたときに、香りのもとになる揮発性の成分と、味に関わる不揮発性の成分がどう変わり、それが全体の品質とどう結びつくのかについては、体系的な理解が不足していたということです。この研究は、混合比率を最適化し、品質を評価するための土台を示すことを目的としています。

どのように調べたか

研究チームは、熟成プーアル茶の粉末とアメリカ人参の粉末を混ぜ合わせた試料を用意し、官能評価、理化学分析、香り成分の網羅的分析(フレーバロミクス)、不揮発性成分の網羅的分析(ノンターゲットメタボロミクス)を組み合わせて比較しました。網羅的分析とは、あらかじめ狙いを定めた特定の成分だけを測るのではなく、検出できる成分を幅広くまとめて捉えようとする手法です。

本試験に先立って、どのアメリカ人参素材を使い、どの範囲の配合比率を検討するかを決めるための予備選抜が行われました。東北産の人参の細根、東北産の人参の切片、文登産の人参の切片という3種類の素材を比較した結果、文登産のアメリカ人参切片が採用されました。続いて添加量を5%、15%、25%、35%と変えた試料を比べ、本試験ではアメリカ人参を15%、25%、35%加えた3種類のブレンド(SP3、SP2、SP1)が選ばれています。比較の基準として、熟成プーアル茶粉末のみ、アメリカ人参粉末のみ、および市販のアメリカ人参プーアル茶製品もあわせて分析されました。市販品にはアメリカ人参と熟成プーアル茶以外にチコリの根やキクも含まれるため、他の原料の影響を避ける目的で、アメリカ人参と熟成プーアル茶だけからなる2成分系のブレンドが別に用意されたと説明されています。

官能評価は中国の国家標準に沿って実施され、茶学または食品関連分野の博士課程の学生5名が評価に参加しました。外観、水色(すいしょく、お茶の液の色)、香り、味をそれぞれ100点満点で採点し、重みをつけて総合点が計算されています。成分の測定には、水浸出物、遊離アミノ酸、茶ポリフェノール、可溶性糖の分析や、高速液体クロマトグラフィーによるカテキン類・フラボノイド類の定量が用いられました。香り成分は電子ノーズと二次元ガスクロマトグラフィー質量分析で調べられ、不揮発性成分は超高速液体クロマトグラフィー質量分析で分析されています。

報告された主な結果

実験で用意したブレンド(SP1〜SP3)のうち、官能評価の総合点が最も高かったのは、熟成プーアル茶粉末75%とアメリカ人参粉末25%からなるSP2でした。SP2の特徴として、キクを思わせる香りを伴う熟成香、まるみがあってコクのある味わい、はっきりとした甘い後味が挙げられています。

成分については、アメリカ人参の割合が増えるにつれて、カフェインとエステル型カテキン(ガレート基が結びついたカテキン類)の含有量が減り、可溶性糖の含有量が増えるという傾向が報告されました。香り成分の分析では、SP2の中で2-メチルブタナールと(E)-2-オクテナールが、香りに寄与している可能性のある候補として挙げられています。ただしこれらは暫定的に同定された成分であり、香りへの寄与も候補としての位置づけであると論文は述べています。

不揮発性成分の分析では、暫定的に注釈が付けられた成分の特徴が合計1,171件得られました。試料間で違いが見られた代表的な成分には、フラボノイド類、フェニルプロパノイド関連の化合物、ジンセノサイド関連の成分が含まれていました。著者らは、こうした成分の違いは主に2つの原料それぞれが持ち込む成分と、その配合比率の変化を反映したものだと説明しています。

この研究が示すこと

この研究は、アメリカ人参を混ぜる割合を変えると、官能的な評価と化学成分の両方が連動して変わることを、複数の分析を組み合わせて描き出したものです。人参を増やせば増やすほど良いわけではなく、実験した範囲では25%を加えた配合で総合的な評価が最も高くなったという点が、配合設計を考える上での具体的な手がかりになります。

著者らは、ここで得られた成分の違いが、ブレンド製品の配合の最適化と品質評価のための参考になると位置づけています。原料の由来や混ぜ方が製品の風味と成分にどう表れるかを整理する土台として、この研究の意味を読み取ることができます。

著者:Man Zou(College of Tea Science, Yunnan Agricultural University)、Ying Liu(College of Tea Science, Yunnan Agricultural University)、Xiujuan Deng(College of Tea Science, Yunnan Agricultural University)、Xin Fang(College of Tea Science, Yunnan Agricultural University)、Yetao Xiao(College of Tea Science, Yunnan Agricultural University)、Zuzhen Wang(College of Tea Science, Yunnan Agricultural University)、Guangxing Li(College of Tea Science, Yunnan Agricultural University)、Shuheng Zhang(College of Tea Science, Yunnan Agricultural University)、Baijuan Wang(College of Tea Science, Yunnan Agricultural University)、Xinghua Wang(College of Tea Science, Yunnan Agricultural University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Man Zou, Ying Liu, Xiujuan Deng, et al. Integrated flavoromics and metabolomics characterize flavor and chemical composition differences in American ginseng–ripe Pu-erh tea blends. Frontiers in Nutrition 2026-09-28. DOI: 10.3389/fnut.2026.1963132. 原著ライセンス:CC BY.