ヤムイモは西アフリカで古くから主食として親しまれてきた作物です。ゆでたり、蒸してついたりと調理法も多様で、食卓に欠かせない存在とされています。ただし都市化が進み所得や物価が変化するなかで、人々がどのような理由でヤムイモを食べ続けているのかは、必ずしも自明ではありません。今回紹介する研究は、ナイジェリアの首都アブジャの都市世帯を対象に、ヤムイモの消費パターンを左右する要因を統計的に調べたものです。

どのように調べたのか

研究チームは、アブジャの都市部に暮らす450世帯を対象に、Googleフォームを使った構造化アンケートで一次データを収集しました。ヤムイモを消費する世帯を網羅した名簿が存在しなかったため、回答者は無作為抽出ではなく利便的抽出(コンビニエンスサンプリング)という方法で集められています。得られたデータは、記述統計、カイ二乗検定、重回帰分析という三つの手法で分析されました。

研究でわかったこと

まず消費の実態として、ヤムイモの食べ方では「ポンデッドヤム(すりつぶしてついたもの)」が42.0%と最も好まれ、次いで「ゆでヤムイモ」が27.3%を占めていました。また、輸入品種よりも国産(現地生産)の品種を好むと回答した世帯が66.0%にのぼった点も示されています。

次に、何が消費パターンを左右しているのかという分析です。カイ二乗検定では、世帯の所得水準とヤムイモを食べる頻度との間に統計的に有意な関連は見られませんでした(χ²=18.34、自由度12、p=0.071)。一方、重回帰分析では、価格の影響力だけが消費パターンを有意に予測する要因として示され(標準化係数β=0.602、p<0.001)、所得水準や世帯人数は有意な予測因子とはなりませんでした。この回帰モデル全体では、ヤムイモ消費パターンのばらつきの51.0%を説明できたと報告されています(決定係数R²=0.510、調整済みR²=0.462、F値=24.86、p<0.001)。

これらの結果を踏まえ、研究チームは、ヤムイモの価格を安定させることや供給網を強化することが、都市世帯の間でヤムイモ消費を持続させるうえで重要だと結論づけています。具体的な提言としては、輸送インフラへの投資、収穫後の損失を減らすための貯蔵技術の改善、良質なヤムイモ品種の生産と市場供給を後押しする政策づくりが挙げられています。

この研究を読むうえで注意したいこと

この調査は、アブジャという特定の都市に暮らす450世帯を、名簿に基づく無作為抽出ではなく利便的抽出という方法で集めた結果に基づいています。そのため、得られた傾向がアブジャの都市世帯全体や、ナイジーの他地域、ほかの国の消費者にもそのまま当てはまるとは限りません。あくまで一つの調査研究であり、価格と消費行動の関係について結論が確定したわけではない点に留意する必要があります。

まとめ

今回の研究では、アブジャの都市世帯においてポンデッドヤムやゆでヤムイモが好まれ、国産品種への支持が根強いことが示されました。そのうえで、所得や世帯人数よりも価格の動きがヤムイモの消費パターンに強く関わっている可能性が示唆されています。食料品の価格変動が食習慣にどう影響しうるかを考えるうえで、参考になる一例と言えそうです。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:D.A. Agbonika, T.O. Banjo, Ibrahim S.K Sani, et al. 2026 Vol-6 Issue-2 | DETERMINANTS OF YAM CONSUMPTION PATTERNS AMONG URBAN HOUSEHOLDS IN ABUJA, NIGERIA. アフリカ農業・関連科学ジャーナル (2026). DOI: 10.5281/zenodo.22302602. 原著ライセンス: cc-by.