オレンジやスイカ、キュウリといった果物は加熱調理をせずそのまま食べることが多く、栄養素を効率よく摂取できる一方で、土壌や大気に含まれる汚染物質をそのまま取り込んでしまう可能性も指摘されています。ナイジェリアではこれまでにも果物の重金属汚染が報告されており、今回紹介する研究は、デルタ州ウブウィエ地方自治区の中心都市エフルンにある市場(エフルンマーケット)で売られている果物を対象に、含まれる重金属の種類と濃度を調べたものです。

エフルンマーケットは、ワリ製油・石油化学会社から約5キロメートルという工業地帯に近い、交通量の多いエフルン・サペレ道路沿いに位置する中心的な市場です。

研究でわかったこと

研究チームは、市場内の複数の場所からオレンジ(Citrus sinensis)、スイカ(Citrullus lanatus)、キュウリ(Cucumis sativus)、パイナップル(Ananas comosus)、バナナ(Musa sapientum)の5種類の果物を購入しました。各果物は水道水と蒸留水で洗浄したのち細かく刻んで乾燥させ、粉末状にしてから硝酸と過塩素酸の混合液で分解処理を行い、原子吸光分光光度計(AAS)という機器を用いて銅、ニッケル、コバルト、クロム、カドミウム、マンガン、亜鉛、鉛という8種類の重金属の濃度を測定しました。

その結果、銅・クロム・カドミウムの3種類は、調べたすべての果物で世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)が定める許容限度を上回っていたと報告されています。具体的には、銅の許容限度が0.010ppmとされる中、5種の果物はいずれも0.079〜0.120ppmの範囲でこれを超えていました。クロムも許容限度0.003ppmに対し0.010〜0.125ppm、カドミウムも許容限度0.001ppmに対し0.023〜0.034ppmと、すべての果物で上回る値が示されています。一方、ニッケルはキュウリでのみ許容限度(0.020ppm)を超える0.025ppmが検出され、他の果物では限度内にとどまりました。コバルト・マンガン・亜鉛・鉛の4種類については、調べたすべての果物でWHO/FAOの許容限度内であったとされています。

研究チームはさらに、これらの濃度をもとに、果物を1日300グラム、体重62キログラムの人が摂取した場合を想定した1日あたりの重金属摂取量(DIM)や、健康リスクの目安となる標的ハザード指数(THQ)、複数の重金属をあわせたハザード指数(HI)、生涯にわたる発がんリスク指数(CR・総発がんリスクTCR)も計算しています。その結果、THQはすべての果物・金属で1未満、総発がんリスクもすべての果物で10のマイナス4乗を下回り、多くはさらに厳しい10のマイナス6乗を下回る水準だったと報告されています。論文では、この基準に照らせば「摂取量としては大きな健康リスクにはつながりにくい」水準であるとしつつも、銅・クロム・カドミウムが個別の濃度としては許容限度を超えていた点は、今後の注視が必要な所見として位置づけられています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

論文では、果物ごとの重金属濃度の違いについて、環境中への曝露のしかたや、輸送・保管の条件、農業資材からの汚染など複数の要因が関係している可能性があるとしています。また、エフルンマーケットが工業地帯や石油精製施設に近い立地であることや、交通量の多さ、市場での取り扱い・保管方法なども、汚染に影響しうる要因として挙げられています。継続的に汚染された果物を摂取した場合には、体内への蓄積(生体蓄積)や、腎臓・肝臓への影響、神経系の障害、発がんリスクといった健康影響につながる可能性があるとも述べられています。

ただし著者ら自身が、この研究が単一の市場のみを対象とした小規模なサンプルによるものであり、経時的な追跡調査を行っていないため、汚染源を特定した因果関係の証明には至っていない点を限界として挙げています。そのうえで、市場で売られる果物の重金属汚染を継続的に監視すること、環境規制の強化や農業practicesの改善、定期的な食品安全調査の実施が今後望まれるとしています。

まとめ

今回の研究は、ナイジェリアの一つの市場で売られている5種類の果物を対象に、銅・ニッケル・コバルト・クロム・カドミウム・マンガン・亜鉛・鉛という8種類の重金属濃度を測定したものです。銅・クロム・カドミウムがすべての果物で許容限度を超えて検出された一方、算出された発がんリスクなどの指標は低い水準にとどまったとされています。単一の市場・小規模な調査であることから、著者らも結論の一般化には限界があるとしており、今後の継続的なモニタリングの必要性が指摘されています。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:エフルンマーケットで販売されている一部の果物における重金属の評価(西アフリカ保健関連科学ジャーナル・2026年08月)