思春期の入り口にあたる10〜14歳の時期は、身体と心が大きく成長する重要な段階であり、十分な栄養が欠かせません。特にタンパク質は成長期に必須の栄養素ですが、発展途上国ではタンパク質摂取の不足や栄養状態の悪化が公衆衛生上の課題として指摘されてきました。今回紹介する研究は、ナイジェリア・オスン州イレイフェのイフェ・セントラル地区(Ife Central Local Government Area)に暮らす思春期前期の子どもたちを対象に、タンパク質摂取が必要量を満たしているかどうか、そして栄養状態がどうなっているかを調べたものです。

どのように調べたのか

この研究は横断的記述調査として実施され、10〜14歳の思春期前期の若者365人が単純無作為抽出法によって選ばれました。データ収集には、社会人口統計学的特性・食事パターン・24時間思い出し法による食事調査を含む、半構造化された自己記入式の質問票が用いられました。身体計測データはWHO AnthroPlusソフトウェアを用いて栄養指標が評価され、タンパク質摂取の充足度は推定平均必要量(EAR)と推奨食事摂取量(RDA)に基づいて判定されました。得られたデータはIBM SPSS Statistics version 25を用いて解析され、有意水準はp<0.05に設定されました。

研究でわかったこと

調査の結果、参加者の94.0%は十分なタンパク質摂取をしていることが示されました。一方で栄養状態を見ると、低体重(underweight)が6.6%、過体重(overweight)が8.8%、肥満(obesity)が2.5%、発育不良(stunting)が8.2%の割合で見られ、低栄養と過栄養が同じ集団の中に共存している状況が報告されています。

タンパク質摂取の充足度と年齢別BMI(BMI-for-age)との間には、統計的に有意な関連は見られませんでした(p=0.060)。一方で、社会経済的地位は栄養状態に有意な影響を与えており、社会階層が高い子どもほど良好な栄養指標を示す傾向が確認されました。この結果から、著者らはタンパク質摂取そのものよりも、社会経済的な要因のほうが栄養状態への影響が大きい可能性があるとしています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、これまで国の栄養研究において見過ごされがちだった思春期前期という年齢層に焦点を当て、地域に即したデータを政策立案や介入活動のために提供する点に意義があるとされています。ただし、これは特定の地域・年齢層を対象とした一つの横断調査であり、この結果だけで栄養状態とタンパク質摂取の関係が一般的に確定したわけではない点には留意が必要です。著者らは、バランスの取れた食事や食品の多様性を高めること、そして社会経済的な不平等を減らすことが、思春期の栄養健康を維持し、持続可能な開発目標(SDGs)の目標2「飢餓をゼロに」に向けて前進するための重要なステップであると述べています。

まとめ

今回の調査では、ナイジェリア・イフェ・セントラル地区の思春期前期の子どもたちの多くが必要なタンパク質量を満たしている一方で、低体重・過体重・肥満・発育不良といった栄養面の課題が併存していることが報告されました。また、栄養状態にはタンパク質摂取そのものよりも社会経済的な要因が大きく関わっている可能性が示唆されています。今後、こうした地域特有のデータをもとに、思春期の栄養改善に向けた取り組みが検討されていくことが期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:ナイジェリア・オスン州イレイフェにおける思春期前期のタンパク質摂取充足度と栄養状態:横断的記述調査(アジアン・ジャーナル・オブ・メディシン・アンド・ヘルス・2026年08月)