著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Molecules

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ココナッツは植物性食品の原料として注目されています。その果肉に含まれるたんぱく質の60〜75%は「グロブリン」と呼ばれる種類です。ただし、天然のままのココナッツグロブリンは、油と水、あるいは空気と水の境目に集まって働く力が弱いとされます。著者らによれば、そのため市販の乳清たんぱく質や大豆たんぱく質と比べると、乳化性(油と水を混ぜた状態を保つ働き)や泡立ちの性質が十分ではありません。

たんぱく質の働きは、分子の立体的な形と深く関係しています。大豆やエンドウ豆などのたんぱく質では、酸性条件で加熱すると分子がほどけて集まり直し、乳化性や泡立ちが良くなることが報告されてきました。一方、ココナッツグロブリンが同じような処理で時間とともにどう変化するのかは、連続的には調べられていませんでした。そこで研究チームは、酸性で加熱したときの構造の変化と、食品素材としての性質の変化を、時間を追って対応づけることを目指しました。

何を調べたか

研究チームは、ココナッツミルクからグロブリンを取り出しました。これをpH2.0の酸性溶液(たんぱく質濃度0.2mg/mL)にして85℃で加熱し、0時間から24時間まで、時間を区切って試料を採取しました。

各試料について、さまざまな項目を測定しました。分子が集まってできるβシート(たんぱく質の鎖が板状に並んだ構造)の多さは、特定の蛍光色素の光り方で調べました。このほか、分子の大きさの変化、電子顕微鏡で見た形、水をはじく性質を持つ部分が表面にどれだけ出ているか(表面疎水性)、粒子の大きさを測りました。あわせて、泡の立ちやすさと泡の持続性、乳化の働きと乳化状態の安定性も評価しました。

主な結果

著者らは、構造の変化が三つの段階に分かれると報告しています。0〜6時間は、もとの構造がほどけ、大きな集合体がいったん小さく分かれる段階です。6〜12時間は、βシートに富む構造が盛んにできる段階で、βシートを示す蛍光は12時間で最も強くなりました。12〜24時間は、集合体がさらに寄り集まり、大きく密になっていく段階です。この時期には蛍光が弱まりましたが、論文はこれをβシートが失われたためではないと説明しています。集合体が密になり、色素が結合する場所が内側に埋もれたためと考えられるとしています。また、加熱の全期間を通して目立った沈殿は見られませんでした。

食品素材としての性質は、最もよくなる時期が性質ごとに異なっていました。乳化の働きを示す指標は10時間で最大の186.90m²/gとなり、24時間では47.73m²/gまで下がりました。泡の立ちやすさは、加熱前の約86.67%から、12時間で最大の150%に高まりました。一方、泡の持続性と表面疎水性は20時間で最も高くなりました。研究チームは、泡の立ちやすさが中程度の大きさの粒子が多い時期にピークを迎えた点に着目しています。この時期は粒子が境目へ素早く集まりやすく、のちにできる大きく密な集合体は丈夫な膜をつくって泡を長持ちさせたと解釈しています。ただし、乳化状態の安定性は加熱していない試料で最も高く、24時間で最も低くなりました。加熱によってすべての性質が良くなったわけではありません。

研究が示すこと

この研究は、酸性での加熱時間を変えると、ココナッツグロブリンの構造が段階的に変わることを示しました。さらに、その構造の変化に応じて、乳化の働き、泡の立ちやすさ、泡の持続性がそれぞれ異なる時点で最もよくなることも明らかにしました。著者らは、加熱の条件、分子の構造、食品素材としての性質の関係を結びつけた点を成果として挙げています。同時に、ほかのpH条件や実際の食品の中で同じ効果が得られるかは、まだ確かめる必要があるとしています。

原著論文の著者・所属:Xiaoyan Liu(Hainan Engineering Center of Coconut Further Processing, Coconut Research Institute, Chinese Academy of Tropical Agricultural Sciences, Wenchang 571339, China)、Fuming Deng(Hainan Engineering Center of Coconut Further Processing, Coconut Research Institute, Chinese Academy of Tropical Agricultural Sciences, Wenchang 571339, China)、Yufeng Zhang(College of Modern Agriculture and Bioengineering, Shangluo University, Shangluo 726000, China; Hainan Engineering Center of Coconut Further Processing, Coconut Research Institute, Chinese Academy of Tropical Agricultural Sciences, Wenchang 571339, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Xiaoyan Liu, Fuming Deng, Yufeng Zhang. Heat-Induced Structural Evolution of Coconut Globulin and Its Techno-Functional Properties. Molecules 2026-10-10. DOI: 10.3390/molecules31203613. 原著ライセンス:CC BY.