スーパーで買った牛ひき肉は、表面積が大きく空気や水分にも触れやすいため、塊肉に比べて細菌が増えやすい食材とされています。加熱調理の前段階でどれだけ菌を減らせるかは、食中毒予防の観点から関心の高いテーマです。合成の食品保存料は効果が確認されている一方で、健康への懸念から「天然由来の抗菌素材」への関心も高まっています。今回紹介するイラクのディヤラ大学獣医学部の研究チームによる論文は、身近な食材であるレモン果汁と、その主成分であるクエン酸を使い、牛ひき肉中の細菌数がどう変化するかを調べたものです。

研究では、牛ひき肉のサンプルに人為的に高濃度の細菌を接種したうえで、新鮮なクエン酸を2.5%、5%、7.5%、10%という4段階の濃度で加え、3時間、6時間、12時間、24時間という異なる時間にわたって作用させ、総菌数(生菌数)の変化を測定しています。同様にレモン果汁についても、濃度と処理時間を変えて同じ実験が行われました。

クエン酸・レモン果汁でどれだけ菌が減ったか

結果として、クエン酸を加えた場合には総菌数が19.8%から41.3%(log CFU/ml換算)の範囲で減少したと報告されています。一方、レモン果汁を加えた場合の減少幅は12%から19.6%(同)で、クエン酸を使ったときよりも減少幅は小さい傾向が見られました。

また、クエン酸の抗菌効果は濃度と処理時間に依存する形で現れたとされています。具体的には、濃度が低く処理時間が短い段階では菌の抑制効果は限定的だった一方、濃度を上げ、処理時間を長くするほど効果が高まったと述べられています。つまり「少量をさっとかける」よりも、ある程度の濃度と時間をかけて浸すような使い方のほうが、菌数の減少という点では効果が大きかったということになります。

この研究を読むうえでの位置づけ

この論文は、著者らが人為的に高い菌数を接種したひき肉サンプルを用いた実験結果であり、家庭や店舗で通常販売されている牛ひき肉にそのまま同じ効果が再現されるかどうかは、この要旨の範囲では述べられていません。また、味や食感、調理後の風味への影響についても言及はなく、あくまで「総菌数の減少」という指標に注目した基礎的な研究です。一つの研究であり、これをもって特定の使用方法の安全性や有効性が確立されたと断定できるものではありません。

なお、この研究は日本の研究機関によるものではなく、著者はイラクのディヤラ大学獣医学部公衆衛生学科に所属しており、論文中に日本の食品や食習慣への言及も見当たりません。

まとめ

今回の研究では、牛ひき肉にクエン酸やレモン果汁を加えることで、総菌数が減少する傾向が確認されたと報告されています。減少の度合いは、使用する濃度や作用させる時間によって変わり、クエン酸のほうがレモン果汁よりも大きな減少幅を示したとされています。ただし、これは接種菌を用いた実験室レベルの結果であり、実際の食品衛生上の効果や安全な調理法を直接示すものではない点には注意が必要です。今後、より実際の食品に近い条件での検証が積み重ねられることが期待されます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Mariam A. Jalil, Raad J. Hammadi. Microbiological characteristics of minced Beef treated with Lemon Juice (Citric acid). ディヤラ獣医科学ジャーナル (2026). DOI: 10.71375/djvs.2026.04305. 原著ライセンス: cc-by-nc.