この研究は、ルーマニア、ドイツ、スペイン、ポーランド、アルジェリア、イギリスの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Scientific Reports

ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

ハーブや野草の中には、まだ食品としての可能性が十分に調べられていない種が数多くあります。今回紹介する研究が注目したのは、シソ科の植物「セイヨウジュウニヒトエ(Ajuga reptans L.)」です。青紫の花を咲かせるこの植物は、ルーマニアの植物相に含まれるものの、これまであまり詳しく研究されてこなかったといいます。天然由来の機能性・香気成分への関心が高まる中、この植物が新しい食品づくりの素材になり得るのか、研究チームが基礎的な分析を行いました。

研究でわかったこと

研究チームは、ルーマニア国内の4か所で採取したセイヨウジュウニヒトエを対象に、抗酸化性の評価と香気成分の分析という2つのアプローチを組み合わせて調べました。

まず、各サンプルをメタノールで抽出し、総フェノール含量と抗酸化活性を測定したところ、4サンプルの中で「サンプル2」が最も高いフェノール含量(8.67±0.04 mg GAE/g、乾燥重量あたり)を示し、抗酸化活性も一貫して高い傾向がみられたと報告されています。

このサンプル2について、揮発性成分と香りに関与する成分をより詳しく調べるため、HS-SPME-GC-MS(固相マイクロ抽出とガスクロマトグラフィー質量分析を組み合わせた手法)およびHS-SPME-GC-O(香りを人の嗅覚で評価するオルファクトメトリー分析)が用いられました。その結果、合計42種類の揮発性化合物が同定され、そのうち16種類が実際に香りを感じさせる「香気活性成分」であることが確認されたということです。これらの成分が、花のような、あるいはハーブらしい、この植物特有の香りのプロファイルを形づくっていると考えられています。

研究チームは、フェノール含量・抗酸化活性のデータと、香気成分に関するデータを組み合わせることで、化学成分の構成と香りの表れ方との関係を多角的に捉えられると述べています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、著者ら自身が「探索的な性質のもの」と位置づけている段階の研究です。今回の結果は、セイヨウジュウニヒトエが機能性成分や香気成分の供給源として今後さらに検討する価値があるかどうかを見極めるための「基礎データ」として提示されたものであり、健康への効果や食品としての実用化が確認されたわけではありません。一つの研究であり、結論が確定したわけではない点に留意する必要があります。

まとめ

今回の研究では、ルーマニア各地で採取したセイヨウジュウニヒトエの抗酸化性と香気成分が分析され、フェノール含量の高いサンプルから42種類の揮発性化合物、うち16種類の香気活性成分が同定されたことが報告されました。身近ではないハーブの一つが、香りや機能性成分の観点からどのような特徴を持つのかを丁寧に調べた基礎研究として、今後の展開が注目されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):ルーマニア植物相由来のセイヨウジュウニヒトエ(Ajuga reptans L.)の新規食品応用への有望候補としての可能性(サイエンティフィック・リポーツ・2026年08月)

著者:Georgiana-Luminița Gavril(Department of Bioinformatics, National Institute of Research and Development for Biological Sciences, 296 Splaiul Independentei, sector 6, Bucharest, 060031, Romania)、Magdalena Wrona(Institute of Bio- and Geosciences 2, Forschungszentrum Jülich GmbH, 52428, Jülich, Germany)、Davinson Pezo(Department of Analytical Chemistry, Aragon Institute of Engineering Research I3A, EINA-University of Zaragoza, Torres Quevedo Building, María de Luna 3, Zaragoza, 50018, Spain)、Michał Świeca(Laboratory of Enzymology and Bioactive Additives, Department of Biochemistry and Food Chemistry, University of Life Sciences in Lublin, 8 Skromna Street, 20- 704, Lublin, Poland)、Anis Bertella(Food Science Laboratory (LSA), Department of Food Engineering, Institute of Veterinary and Agricultural Sciences, University Batna 1-Hadj Lakhdar, Batna, 05000, Algeria)、Lutfun Nahar(Centre for Natural Products Discovery, School of Pharmacy and Biomolecular Sciences, Liverpool John Moores University, James Parsons Building, Byrom Street, Liverpool, L3 3AF, UK)、Satyajit D. Sarker(Centre for Natural Products Discovery, School of Pharmacy and Biomolecular Sciences, Liverpool John Moores University, James Parsons Building, Byrom Street, Liverpool, L3 3AF, UK)、Cristina Nerı́n(Department of Analytical Chemistry, Aragon Institute of Engineering Research I3A, EINA-University of Zaragoza, Torres Quevedo Building, María de Luna 3, Zaragoza, 50018, Spain)