加工食品には保存料、着色料、乳化剤、甘味料など複数の添加物が同時に含まれていることが少なくありません。これまでの研究は単一の添加物に注目したものが多く、実際の食生活で起きている『複数の添加物への同時曝露』が健康にどう関わるのかは十分にわかっていませんでした。今回、フランスの成人を長期間追跡した大規模コホート研究で、日常的に摂取されている添加物の組み合わせ(混合物)のパターンと、高血圧や心血管疾患の発症との関連を調べた結果が報告されました。
どのように調べたのか
研究の対象は、フランスの成人112,050人(平均年齢42.8歳、女性が79.0%を占める)です。2009年から2024年にかけて、参加者から6か月ごとに複数回、24時間分の食事内容を記録してもらい、実際に食べた食品の商業ブランド情報まで収集しました。これをもとに食品組成データベースやラボでの分析結果と照合し、一人ひとりがどの添加物をどの程度摂取しているかを推定しています。
その上で、非負値行列因子分解という統計手法を用いて、実生活の食事の中で実際に『同時に』摂取される傾向にある添加物の組み合わせパターンを複数抽出しました。そして、年齢や生活習慣などの要因を調整した上で、それぞれの組み合わせパターンへの曝露が、追跡期間中央値7.92年の間に高血圧、心血管疾患全体(CVD)、脳血管障害(CVA)、冠動脈疾患(CHD)の発症とどう関連するかを解析しました。
どの組み合わせがどのリスクと関連していたか
解析の結果、複数の添加物混合物パターンが、高血圧や心血管疾患の発症リスクの上昇と関連していることが示されました。
- 炭酸ナトリウムなどを含む混合物1は、高血圧(ハザード比1.14)およびCVD(ハザード比1.12)の発症と関連
- 加工デンプン、ペクチン、グアーガムなどを含む混合物2は、高血圧(ハザード比1.12)、CVD(ハザード比1.18)、CHD(ハザード比1.26)の発症と関連
- 炭酸塩、リン酸塩、α-トコフェロールを含む混合物4は、高血圧(ハザード比1.12)、CVD(ハザード比1.13)、CHD(ハザード比1.16)の発症と関連
- クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、アセスルファムKを含む混合物5は、高血圧(ハザード比1.19)の発症と関連
一方で、混合物3については統計的に有意な関連は認められませんでした。さらに、添加物同士が単独の効果の合計以上に影響し合う『相乗作用』や、逆に打ち消し合う『拮抗作用』を示唆するような交互作用も探索的に見つかったと報告されています。
この研究をどう読むか
この研究は、単一の添加物ではなく実際の食生活で起こりうる『複数の添加物の組み合わせ』に着目した点が特徴です。ただし、これはあくまで一つの観察研究であり、示された関連が添加物の摂取そのものによって引き起こされたものかどうか、またどのような仕組みでリスクと結びついているのかは、この研究だけでは確定できません。著者らも、こうしたメカニズムを解明するにはさらなる研究が必要だと述べています。
今回報告されたハザード比はいずれも1.1〜1.3程度の範囲であり、リスクが大きく跳ね上がるという結果ではありません。特定の添加物や食品を『危険』と断定するものではなく、今後同様の研究が積み重ねられることで、添加物の組み合わせと健康との関係についての理解が深まっていくことが期待されます。
まとめ
フランスの成人11万人以上を対象とした今回のコホート研究では、複数の食品添加物の組み合わせパターンのうち、いくつかが高血圧や心血管疾患、冠動脈疾患の発症リスクの上昇と関連することが示唆されました。一方で関連が見られなかった組み合わせもあり、添加物同士の相互作用の可能性も指摘されています。これは一つの研究であり結論が確定したわけではなく、今後の研究の積み重ねが注目されます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):M Payen de la Garanderie, A Hasenböhler, Paola Yvroud-Hoyos, et al. Food additive mixtures and hypertension and cardiovascular diseases incidence in the NutriNet-Santé prospective cohort. BMCメディシン (2026). DOI: 10.1186/s12916-026-05132-z. 原著ライセンス: cc-by.