著者の所属・活動拠点の国は、トルコ、モンテネグロです。
掲載誌:International Journal of Food Science & Technology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
サワークリームやヨーグルトのような発酵乳製品では、冷蔵保存中も乳酸菌が乳酸を作り続けます。そのため酸味が強まり、乳酸菌自身も生き残りにくくなることがあります。発酵に使う菌の組み合わせや、製品に加える成分によって、こうした保存中の変化は異なりうると考えられています。
トルコの研究チームは、ヨーグルト用の市販スターター菌(発酵を始めるための菌)に、チーズ由来の乳酸菌を「補助菌」として加えたサワークリームを試作しました。さらに、糖の一種であるトレハロースを加えるかどうかで配合を変え、保存中の菌の生存、酸度、色、食感、官能評価(人が食べて評価する試験)を比べました。トレハロースは昆虫や植物、菌類などに含まれる二糖類で、食品では甘味料や安定剤、保湿剤などとして使われています。
何をどう調べたか
スターター菌には、ヨーグルトでおなじみのストレプトコッカス・サーモフィルスとラクトバチルス・ブルガリクスを含む市販の混合菌を使いました。補助菌は、ミハリチというチーズから分離されたラクチプランチバチルス・ペントーサスまたはラチラクトバチルス・カーバタスです。脂肪分約18%のクリームにこれらの菌を加え、トレハロース1%の有無を組み合わせて4種類の配合を作りました。カーバタス入り(C)、ペントーサス入り(P)、それぞれにトレハロースを加えたもの(CT、PT)です。
試料は35℃前後で発酵させ、pHが約4.7に下がった時点で4℃の冷蔵保存に移しました。保存1日目と15日目に分析を行い、菌の生き残りは「生存割合指数」で表しました。これは15日目の生菌数を1日目の生菌数で割った値で、1に近ければ菌数が維持され、1を下回れば減少、1を上回れば増加したことを意味します。加えて、酸度、色、食感、消費者による好みの評価、8人の準訓練パネルによる風味などの詳しい評価を行いました。
主な結果
サーモフィルスの生存割合指数はCTで15.33と最も高く、C(2.05)、PT(1.26)が続きました。P は0.11で、保存中に菌数が減少していました。ブルガリクスでもCTが14.33で最も高く、PT(9.36)、C(6.66)の順で、Pは0.15でした。同じ補助菌どうしで比べると、CはCT、PはPTのほうが、トレハロースを含む配合で指数が高くなっていました。乳酸菌全体の指数はCが1.98で最も高く、Pは0.91と1をわずかに下回りました。ただし、これは乳酸菌全体の値で、補助菌そのものは個別に数えていません。
酸度は保存開始時には全試料でほぼ同じでした。保存中の上昇は、CTとPTのほうがCとPよりも小さかったと報告されています。
保存が進むと、すべての試料で明るさの指標が下がり、硬さが増しました。食感の測定では、器具が試料に入り込む際の仕事量が減り、器具を引き抜く際の抵抗は増えました。好みの評価では、見た目や食感、総合的な受け入れやすさが全試料で高い点数を保ち、試料間で統計的に意味のある差は見られませんでした。
研究が示すこと
この研究は、補助菌の種類やトレハロースの有無といった配合の違いによって、冷蔵保存中のスターター菌の生き残りや酸度、食感などに差が出ることを示しました。また、どの配合でも官能評価は高い水準を保っていました。
一方で著者らは、慎重な解釈を求めています。今回の実験には、市販スターター菌だけの試料や、補助菌なしでトレハロースだけを加えた試料が含まれていません。補助菌も個別に数えていません。そのため、観察された差をトレハロース特有の効果や、補助菌そのものの生存を直接示すものとは見なせないとしています。詳しい官能評価もパネルが8人と小規模でした。論文は今回の成果を、4種類のサワークリームの保存中の特徴を記述的に比べたものと位置づけています。
原著論文の著者・所属:Tülay Özcan(Bursa Uludag University, Department of Food Engineering , Bursa ,)、Lutfiye Yilmaz‐Ersan(Bursa Uludag University, Department of Food Engineering , Bursa ,)、Gokce Keser(Bursa Uludag University, Department of Food Engineering , Bursa ,)、Raziye Aslı Keser(Bursa Uludag University, Department of Food Engineering , Bursa ,)、Deniz Aksöz(DMA Transmission , Podgorica ,, Montenegro)、Melike Ciniviz(Bursa Uludag University, Department of Food Engineering , Bursa ,)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tülay Özcan, Lutfiye Yilmaz‐Ersan, Gokce Keser, et al. Effects of Trehalose and Cheese-Derived Adjunct Cultures on Starter Culture Viability and Quality of Milk-Based Sour Cream. International Journal of Food Science & Technology 2026-10-15. DOI: 10.1093/ijfood/vvag219. 原著ライセンス:CC BY.