ローズヒップという名前を聞いたことがある人は多いかもしれません。ハーブティーやジャムの材料として親しまれているこの果実は、イヌバラ(Rosa canina)という野生のバラの仲間から採れます。実はこのイヌバラ、育つ場所によって栄養の中身がかなり違うのではないか、という視点から行われた研究があります。

今回紹介するのは、イランに自生するイヌバラ8集団を対象に、果実の栄養成分や機能性成分を詳しく調べた研究です。うまく活用できれば、機能性食品や栄養補助食品の原料として役立つ可能性があるとして注目されています。

何を、どうやって調べたのか

研究チームは、イラン国内の異なる地域から集めたイヌバラの果実を、皮も種もまるごと粉末にしました。そのうえで一般成分(炭水化物・タンパク質・脂質など)、ミネラル含量、抗酸化物質やビタミンCなどの機能性成分を分析しています。

分析には、成分を標準的な方法で測定する一般成分分析に加え、ICP質量分析やHPLC、分光光度法といった手法が使われました。

集団ごとに個性がはっきり分かれた

結果として、8つの集団の間には無視できない違いが見られました。まず、Saveh(サーヴェ)という集団は、炭水化物が39.46%、脂質が1.89%と最も多く、エネルギー量も100gあたり187.13kcalと最高値を示しました。

さらにSaveh集団は、抗酸化活性が34.30μmol Fe²⁺/g、総フェノール含量が92.87mg GAE/gと、これらの指標でも他の集団を上回っています。

一方、Sonqor(ソンコル)という集団は毛色が違いました。タンパク質が3.71%、食物繊維が2.41%と、この2つの成分ではSonqorが最も豊富だったのです。

ミネラルや色素成分に注目すると、また別の集団が際立ちます。MahabadとAjabshirの2集団は、カリウムやマグネシウム、鉄といったミネラルに加え、アントシアニンやカロテノイドといった色素成分でも高い値を示しました。

フェノール化合物の中では、カテキンが最も多く含まれていました。フェルラ酸については、どの集団でも含有量に大きな差がなく、比較的安定していたということです。

ビタミンCの含有量にも幅がありました。8集団全体では100gあたり95.34mgから397.13mgまでの範囲に分布し、最も高い値を示したのはYasuj(ヤースージ)集団でした。

この研究をどう読むか

研究チームは、これらの結果からSaveh、Mahabad、Ajabshirの3集団が特に有望だと位置づけています。栄養価を高めたり、抗酸化作用を持つ機能性食品の原料として使える可能性がある、という見方です。

ただし、これはイラン国内の特定の8集団を対象にした一つの研究です。ここで得られた数値や傾向がイヌバラ全般に当てはまるかどうかは、この要旨だけからは判断できません。また、実際に食品へ加工した際の効果や、人が摂取した場合の影響についても、この研究の範囲では触れられていません。

まとめ

同じイヌバラでも、生育した集団によって炭水化物やタンパク質、抗酸化活性、ビタミンCなどの含有量は大きく異なっていました。この研究では、Saveh、Mahabad、Ajabshirといった集団が、地域資源を生かした機能性食品開発の候補になりうることが示されています。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:イヌバラ(Rosa canina)集団の包括的な栄養・ミネラル・フィトケミカルプロファイリングにより機能性食品・ニュートラシューティカル開発に適したエリート遺伝資源を解明(フィトリサーチ・アンド・テクノロジー・2026年08月)