著者の所属・活動拠点の国は、ドイツです。

掲載誌:Food Chemistry

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

チョコレートは、製造の過程で発酵、焙煎、そして「コンチング」と呼ばれる長時間の練り上げ工程を経るため、高度に加工された食品といえます。食品のタンパク質は、加工の中で糖などと反応する「メイラード反応」によって変化することがあり、その結果できる物質は終末糖化産物(AGEs)と呼ばれます。

著者らによると、チョコレートでのAGEsの生成については、これまで発表されたデータが少なく、内容にも食い違いがありました。そこで研究チームは、チョコレートに含まれるタンパク質の変化を量として捉える方法を開発し、実際のチョコレートで測定することを目指しました。

何を調べたか

研究チームは、チョコレートに含まれるタンパク質全体を対象として、その変化の量を測る新しい定量法を開発しました。タンパク質が作られた後に受ける化学的な変化は「翻訳後修飾」と呼ばれます。今回の手法では、メイラード反応によってできる9種類の生成物と、それ以外の3種類の翻訳後修飾に加え、フロシンという物質を測定しました。

測定には、液体クロマトグラフィーで成分を分離したうえで質量分析によって特定・定量する、HPLC-MS/MSと呼ばれる方法が用いられました。対象はミルクチョコレートとダークチョコレートです。

主な結果

論文によると、カカオ由来のタンパク質は、ミルクチョコレートに含まれる乳タンパク質(カゼイン)と比べて、はるかに多くの修飾を受けていました。たとえばAGEsの一種であるN6-カルボキシエチルリシンは、カカオタンパク質ではタンパク質1kgあたり322mgだったのに対し、カゼインでは57mgでした。

また、予想外の結果として、N6-ホルミルリシンという物質が主要なAGEとして見つかり、その量はタンパク質1kgあたり最大1251mgに達しました。

チョコレート全体でみると、AGEsの合計量はミルクチョコレートで100gあたり17.3mg、ダークチョコレートでは平均で100gあたり33.5mgと報告されています。

研究が示すこと

著者らはこれらの結果から、チョコレートは人の食事においてAGEsを摂取する重要な供給源の一つであると位置づけています。この研究は、チョコレートのタンパク質全体を対象にした定量法を示し、カカオ由来のタンパク質がカゼインと比べてはるかに多く修飾されていることを報告しました。一方、発酵や焙煎といった個々の工程でどれだけ修飾が生じたかについては、抄録には測定結果として示されていません。

原著論文の著者・所属:Thomas Heymann(Institute of Chemistry - Food Chemistry, Martin-Luther-University Halle-Wittenberg, Kurt-Mothes-Str. 2, D-06120 Halle/Saale, Germany)、Marcus A. Glomb(Institute of Chemistry - Food Chemistry, Martin-Luther-University Halle-Wittenberg, Kurt-Mothes-Str. 2, D-06120 Halle/Saale, Germany. Electronic address: [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Thomas Heymann, Marcus A. Glomb. Characterization of posttranslational protein modifications isolated from Milk and dark chocolate. Food Chemistry 2026-09-09. DOI: 10.1016/j.foodchem.2026.151124. 原著ライセンス:CC BY.