著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Journal of Information Systems Engineering and Business Intelligence

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究のねらい:レシピ文を「使えるデータ」にする

料理投稿サイトの普及により、インドネシア語のレシピ文がインターネット上に大量にあります。しかしその多くは自由な書き方の文章で、「どの材料を、どれだけ、どの単位で使うか」がコンピューターで扱える形に整理されていません。著者らは、こうした情報を取り出すことが、栄養計算や糖尿病向けの食事推奨システムなどの前提になると位置づけています。

文章の中から材料名や数量といった特定の語句を見つけて分類する技術は「固有表現認識(NER)」と呼ばれます。インドネシア語のレシピ文は表記の揺れやくだけた書き方が多く、学習用に人が正解を付けたデータも限られています。研究チームは、このようにデータが少ない条件で、どのようなモデルの作り方が有効で、安定して読み取れるのかを調べました。

何を調べたか:4種類のモデルと、その組み合わせ

研究チームは、料理投稿サイトCookpadから2025年2月1日から20日にかけて収集した、インドネシア語レシピ9,868件のデータを使いました。このうち2,200件は人が正解を付けたもので、残りの7,668件は正解のないデータです。読み取る対象は、材料、数量、計量単位の3種類に絞られています。

比較したのは、インドネシア語向けに事前学習された言語モデル「IndoBERT」、文の並びを前後から読み取る従来型の手法「BiLSTM-CRF」、そしてIndoBERTにCRFと呼ばれる仕組みを加えたものと、さらにBiLSTMも組み合わせた複合型の計4種類です。CRFは、ラベルの並び方が規則に沿うように整える役割を持つ仕組みです。

そのうえで著者らは、性質の異なるIndoBERTとBiLSTM-CRFの予測を、検証用データで確かめた信頼度に応じて重み付けして合わせる「重み付きアンサンブル」を提案しました。さらに、このアンサンブルを使って正解のないレシピに自動でラベルを付け、確信度が0.85以上のものだけを学習データに追加する「疑似ラベル」による半教師あり学習も試しています。最終評価に使うテスト用データは、疑似ラベル作りから外されています。

性能は、材料名や数量の語句をひとまとまりで正しく取り出せたかを厳密に判定する方式で評価されました。指標のF1スコアは、取り出した結果の正確さと取りこぼしの少なさを合わせて示す値です。

主な結果:複雑にすれば良いわけではない

IndoBERT単独でF1スコア96.61%という高い性能が得られました。一方、IndoBERTにCRFを加えたモデルは92.99%、複合型は92.82%で、構造を複雑にしても単独のIndoBERTを上回りませんでした。著者らは、IndoBERTがすでに文全体の関係をとらえているため、CRFを加える効果が小さくなった可能性を挙げています。

提案した重み付きアンサンブルは、正解付きデータだけで学習した条件のなかで最も高いF1スコア96.79%を記録しました。疑似ラベルで学習データを増やした場合は96.72%と同程度の性能を保ちつつ、取りこぼしの少なさ(再現率)や、学習時に見ていない材料表現への対応が改善したと報告されています。

誤りの分析では、二つのモデルが異なる箇所で正解していることも示されました。たとえば「garam secukupnya(塩適量)」という表現では、IndoBERTは「適量」を数量として認識した一方で「塩」を材料として拾えず、BiLSTM-CRFは両方を正しく認識しました。逆に、別の例ではIndoBERTのほうが正しく区切れる部分もありました。著者らは、こうした弱点の補い合いが、二つのモデルを組み合わせる根拠になったと説明しています。

この研究が示すこと

この研究は、データが限られたインドネシア語のレシピ文では、モデルの構造を積み重ねるよりも、性質の異なるモデルの判断を信頼度に応じて組み合わせ、確信度の高い自動ラベルで学習データを補うほうが安定した結果につながることを示しています。著者らは、栄養計算そのものは行っておらず、インドネシア食品成分表(TKPI)との照合などに先立つ「材料・分量・単位の読み取り」の段階を強化した研究だと位置づけています。

原著論文の著者・所属:Dody Haryadi(School of Data Science, Mathematics and Informatics, IPB University, Bogor, Indonesia ; Informatics Study Program, University Al-Azhar Indonesia, Jakarta)、Imas Sukaesih Sitanggang(School of Data Science, Mathematics and Informatics, IPB University, Bogor)、Sony Hartono Wijaya(School of Data Science, Mathematics and Informatics, IPB University, Bogor)、Budi Setiawan(Department of Community Nutrition, IPB University, Bogor)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Dody Haryadi, Imas Sukaesih Sitanggang, Sony Hartono Wijaya, et al. Improving Indonesian Recipe Named Entity Recognition via Weighted Ensemble and Semi-Supervised Learning. Journal of Information Systems Engineering and Business Intelligence 2026-10-28. DOI: 10.20473/jisebi.12.3.548-565. 原著ライセンス:CC BY.