著者の所属・活動拠点の国は、スペインです。
掲載誌:Frontiers in Animal Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームは、ワイン醸造で生じる白ブドウの搾りかすを保存飼料として乳用ヤギに与えたとき、乳生産や飼料の利用効率、代謝にどのような影響があるかを調べました。搾りかすはサイレージと呼ばれる発酵保存した状態で使い、水分を除いた飼料の重量の15%を占めるように配合しました。
背景には、食品産業の副産物を家畜の飼料に活用し、資源の再利用と飼料費の削減につなげる考え方があります。著者らは、約8か月の泌乳期間を通じた影響と、経済面での収支を評価しました。
何を、どのように調べたか
スペインの実験施設で飼育するムルシアーノ・グラナディーナ種の乳用ヤギ40頭を、通常の飼料を与える対照群と、白ブドウ搾りかすサイレージを15%配合した飼料を与える群に20頭ずつ分けました。両群で産歴、体重、乳量、乳中の体細胞数が偏らないようにし、飼料のエネルギーとたんぱく質の量も同等になるよう設計しました。
飼料への適応期間を設けたうえで、体重、乳量、乳脂肪やたんぱく質などの乳成分を繰り返し測定しました。各群をさらに10頭ずつの飼育区画に分け、飼料摂取量と飲水量は区画単位で記録しました。血液検査では、血球や代謝関連の成分、抗酸化能力、炎症の指標を調べました。経済評価では、飼料費と乳の販売収入を比較しました。
主な報告結果
研究チームは、試験期間全体では、体重、乾物摂取量、乳量に飼料間の統計的に有意な差はなかったと報告しました。1頭当たりの平均乳量は、対照群が1日1.94 kg、搾りかす配合群が1日1.87 kgでした。乳脂肪やたんぱく質の量を考慮して補正した乳量にも、有意な差はありませんでした。一方、泌乳後期には、搾りかす配合群で乳脂肪率が高く、摂取した飼料エネルギー当たりの補正乳量も高くなりました。
平均飲水量は、対照群の1頭当たり1日6.16 Lに対し、搾りかす配合群では5.79 Lと有意に少なくなりました。著者らは、サイレージを含む飼料から多くの水分を取ったことで、飲み水の摂取が減ったと説明しています。
搾りかす配合群では、血液中の抗酸化能力を測るABTS試験と、抗酸化酵素であるSODの活性が有意に高くなりました。ただし、別の方法で測った抗酸化能力と、炎症の指標には有意な差がありませんでした。血球の検査値にも有意な差はなく、血清コレステロールは搾りかす配合群で高くなりました。また、乳中の尿素濃度は低下しましたが、乳中の体細胞数を対数に変換した指標は高くなりました。
経済面では、搾りかすの配合により、8か月の試験期間で飼料費が対照群より1頭当たり12ユーロ低くなり、乳の販売収入は1頭当たり4.07ユーロ多くなりました。著者らは、両者を合わせた経済的な利益を1頭当たり約16ユーロと報告しました。
この報告が示すこと
著者らは、栄養バランスを整えた飼料に白ブドウ搾りかすサイレージを乾物比で15%配合することを、乳用ヤギの基本的な生産成績を損なわずに、ワイン醸造の副産物を飼料として利用する選択肢と位置づけています。
一方、実際に取り入れやすいかどうかは飼育方式によって異なり、保存、取り扱い、給餌などの条件を考慮する必要があると述べています。農家が継続的に利用するには、現場での扱いやすさと安定した成績を示すことが課題とされています。
原著論文の著者・所属:Marina Galvez-Lopez(Institute of Agri-Food and Agro-Environmental Research (CIAGRO-UMH), Miguel Hernández University of Elche)、Gema Romero(Institute of Agri-Food and Agro-Environmental Research (CIAGRO-UMH), Miguel Hernández University of Elche)、Amparo Roca(Technical Support Service for Teaching and Research (SATDI-UMH), Miguel Hernández University of Elche)、Martin Rodríguez(Institut de Ciència i Tecnologia Animal, Universitat Politècnica de València)、José Ramón Díaz(Institute of Agri-Food and Agro-Environmental Research (CIAGRO-UMH), Miguel Hernández University of Elche)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Marina Galvez-Lopez, Gema Romero, Amparo Roca, et al. White grape pomace bale silage in dairy goat nutrition: productive, metabolic, and economic benefits of 15% dietary inclusion over a full lactation. Frontiers in Animal Science(出版社:Frontiers Media) 2026-09-16. DOI: 10.3389/fanim.2026.1940034. 原著ライセンス:CC BY.