著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

高強度ファンクショナルトレーニング(HIFT)は、筋力トレーニング、持久的な運動、日常動作に近い動きを高い強度で組み合わせる運動スタイルで、近年愛好者が増えています。運動で消費するエネルギーが大きいため、食事からのエネルギーが足りなくなるおそれがあります。仕事や家庭と両立しながら専門的な栄養指導を受けずに練習する愛好者は、特にこうした状態に陥りやすいと考えられています。

著者らが注目したのは「エネルギー利用可能性(EA)」です。EAは、食事で摂ったエネルギーから運動で使ったエネルギーを差し引いた残りを、脂肪を除いた体重(除脂肪量)1kgあたりで表した値で、体の基本的な働きに回せるエネルギーの目安とされます。この値が低い状態を「低エネルギー利用可能性(LEA)」と呼びます。LEAは、国際オリンピック委員会(IOC)が示す「スポーツにおける相対的エネルギー不足(RED-S)」の主な原因とされています。RED-Sは、エネルギー不足によって体の機能や運動能力が損なわれる状態を指します。

これまでの研究は、持久系競技、体重や見た目が重視される競技、トップアスリートを対象としたものが中心でした。そのため、レクリエーションとしてHIFTに取り組む人については十分に調べられていませんでした。研究チームは、この集団でLEAに当てはまる人の割合を調べ、EAが回復や運動のきつさの感じ方、睡眠、骨密度とどう関連するかを検討しました。

どのように調べたか

参加者は、週5回以上のHIFTを6か月以上続けている18〜40歳の愛好者30人(女性18人、男性12人、平均年齢31.2歳)です。全員が2週間、平日の週5日にコーチの指導のもとで同じ内容のトレーニングを行い、合計10回のセッションに参加しました。

食事は、トレーニング日に本人が記録した食事記録からエネルギー摂取量を算出しました。運動で消費したエネルギーは、腕に装着する計測機器で推定しました。除脂肪量はDXA(二重エネルギーX線吸収測定法)で測定し、これらを組み合わせてEAを計算しました。EAが除脂肪量1kgあたり1日30kcalを下回る場合をLEAと分類しています。

あわせて、運動後に感じたきつさ(RPE)、運動前の回復の自己評価(PRSとTQR)、睡眠時間、睡眠の質を問う質問票(PSQI)、DXAで測った骨密度を調べました。骨密度は、同年代の基準と比べた値(Zスコア)で評価しています。さらに安静時代謝量を測定し、除脂肪量から予測される値との比も求めました。この比は、エネルギー不足に体が適応して代謝を抑えているかどうかの目安になります。

主な結果

2週間の平均EAは除脂肪量1kgあたり1日24.9kcalで、30人中24人(80%)がLEAの基準に当てはまりました。ただし、食事記録では摂取量が実際より少なく記録されることがあるため、この高い割合は慎重に解釈する必要があると著者らは述べています。

一方、LEAに当てはまる人とそうでない人の間に、運動のきつさの感じ方、回復の自己評価、睡眠時間、睡眠の質、骨密度のいずれでも統計的に意味のある差は見られませんでした。EAの値そのものも、これらの指標と有意な関連を示しませんでした。代謝が抑えられていることを示す基準に当てはまったのは4人で、全員がLEAに分類された人でしたが、LEAかどうかとの統計的な関連は認められませんでした。参加者全体の平均値は、代謝抑制の目安を上回っていました。

補足的な分析では、睡眠時間が長い人ほど回復の自己評価(TQR)が高いという中程度の関連が見られました。ただし、多くの比較を行う中で得られた結果であるため、著者らはこれも慎重に解釈すべきだとしています。また、参加者数が限られているため、この研究で検出できるのは主に大きな差であり、小さな差は見逃された可能性があることも示されています。

この研究が示すこと

計算上はLEAに当てはまる人が多かったものの、2週間という短い観察期間では、回復、睡眠、骨の指標に目に見える影響は確認されませんでした。著者らは、エネルギー不足の影響は不足の程度や続く期間によって現れ方や時期が異なり、短期間では表に出にくい可能性があると考えています。そのうえで、RED-Sにつながりうる長期的な影響を防ぐため、愛好者についてもエネルギー状態、食事による補給、回復の習慣を継続的に確認していくことが支持される、とまとめています。

原著論文の著者・所属:Gabriella Vlattas(Athletic Training Research Lab, Department of Exercise Science, University of South Carolina, Columbia, SC, United States)、Xuewen Wang(Athletic Training Research Lab, Department of Exercise Science, University of South Carolina, Columbia, SC, United States)、Andrew Ortaglia(Department of Epidemiology and Biostatistics, University of South Carolina)、Siqi Hong(Athletic Training Research Lab, Department of Exercise Science, University of South Carolina, Columbia, SC, United States)、Toni Torres-McGehee(Athletic Training Research Lab, Department of Exercise Science, University of South Carolina, Columbia, SC, United States)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Gabriella Vlattas, Xuewen Wang, Andrew Ortaglia, et al. Low energy availability in recreational high-intensity functional training athletes: associations with health and performance outcomes. Frontiers in Nutrition 2026-10-23. DOI: 10.3389/fnut.2026.1953641. 原著ライセンス:CC BY.