「今日は何をどれだけ食べたか」を正確に記録するのは、実は簡単なことではありません。特に高齢者の食生活を見守る場面では、食べたものをすべて計量して記録する「秤量食事記録法」が精度の高い方法として知られていますが、食品を一つひとつ量って書き留める作業は本人にとって大きな負担になります。もっと手軽に、日々の栄養状態を把握できる方法はないのでしょうか。こうした背景から近年注目されているのが、スマートフォンで手軽に食事を記録できるアプリです。今回紹介する研究は、高齢者向けの地域健康増進アプリ「かよいの場」に搭載された食事チェック機能(MCF)が、実際にどれだけ正確に栄養素の摂取量を推定できるのかを検証したものです。

研究でわかったこと

この研究では、日本国内に住む65歳以上の地域在住高齢者31名(平均年齢70.4歳)が対象となりました。参加者は10日間にわたってMCFを使い、普段通りの食事を記録するとともに、そのうち5日間については、食品を手作業で計量して記録する秤量食事記録法(WDR)も並行して行いました。そのうえで、5日間の平均摂取量をMCFとWDRとで比較し、統計的な手法(Bland–Altman分析、同等性を確認するための検定、平均差、相関係数、級内相関係数、摂取量レベルによる分類の一致度など)を用いて妥当性を評価しています。

その結果、エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、葉酸、マグネシウム、鉄、亜鉛については、MCFとWDRの推定値がほぼ同等であることが確認されました。多くの栄養素で両者の差はごくわずか(平均で0.1〜9.1%程度)にとどまり、相関の強さや一致度も中程度から強い範囲にありました。一方で、食塩相当量については、個人ごとの一致度が他の栄養素に比べてやや弱いという結果も示されています。また、摂取量を段階分けして比較する分類の一致率は77.4〜100%と高い水準でした。これらの結果から、研究チームはMCFがいくつかの主要な栄養素の推定においては良好な妥当性を示し、高齢者の食事モニタリングにおいて実用的で負担の少ない選択肢となりうると述べています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は31名という限られた人数を対象に行われたものであり、得られた結果がすべての高齢者に当てはまるとは限りません。また、食塩相当量のように個人レベルでの一致度がやや弱い栄養素もあった点には注意が必要です。高齢者を対象としたこの種のアプリの妥当性検証はまだ研究例が少ない分野とされており、今回の結果は一つの研究として位置づけられるものであり、結論が確定したわけではない点を踏まえて読む必要があります。

とはいえ、スマートフォンアプリによる食事記録は、計量を伴う従来の記録法に比べて日常生活の中で続けやすい方法だと考えられます。今回の結果は、こうしたデジタルツールが高齢者の栄養状態を把握する一つの手段として活用できる可能性を示唆するものといえるでしょう。

まとめ

今回紹介した研究では、高齢者向けアプリ「かよいの場」の食事チェック機能によって推定された栄養素摂取量が、秤量食事記録法による値と比較され、エネルギーやたんぱく質、脂質、炭水化物、葉酸など多くの栄養素で同等性が確認されました。食塩相当量など一部の指標では課題も残されているものの、日々の食事記録を手軽に行えるツールとして、今後の高齢者の栄養管理に役立てられる可能性が示されています。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:スマートフォン食事記録アプリケーションによる高齢者の栄養素摂取量推定値の妥当性検証(サイエンティフィック・リポーツ・2026年08月)