「炎症」と聞くと、けがや感染症のときに起こる一時的な反応を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし近年、日々の食事内容が体内で慢性的な軽い炎症状態を促したり抑えたりする可能性が注目されており、これは肥満をはじめとする様々な慢性疾患と関わりが深いとされています。特に、大人になってからの生活習慣病リスクを考えるうえで、成長期である青年期(思春期)の食事や食べ方の傾向を早くから把握しておくことは重要だと考えられています。今回紹介する研究は、10〜19歳の青年を対象に、食事の「炎症を起こしやすさ」を示す指標と、摂食行動や肥満との関係を調べたものです。
どのように調べたのか
この研究は横断的研究として実施され、栄養・食事療法の外来を受診した10〜19歳の青年140名が参加しました。研究チームは参加者の社会人口統計学的データ(年齢や性別など)、身長・体重などの身体計測値、摂食行動、そして3日間の食事摂取記録を収集しました。
3日間の食事記録をもとに「食事性炎症指数(Dietary Inflammatory Index, DII)」というスコアが算出されています。これは食べたものの栄養素構成から、その食事が体内の炎症反応を促す方向に働きやすいか、逆に抑える方向に働きやすいかを数値化したものです。また、摂食行動の評価には「青年における摂食行動尺度(AYDÖ)」という質問票が用いられました。
研究でわかったこと
参加者の平均年齢は13.0±2.1歳で、52.8%が女子でした。体格指数(BMI)の平均は21.54±4.53 kg/m²、体脂肪率は平均23.86±7.16%と報告されています。BMIの分類では45.4%が「普通体重」、24.1%が「軽度肥満(過体重)」のグループに該当していました。
摂食行動尺度(AYDÖ)の平均点は325.3±63.5点で、参加者の66.7%が「良好」なレベルの摂食行動を示すという結果でした。一方、食事性炎症指数(DII)の平均は2.7±3.05で、数値としてはやや炎症を促進しやすい方向に傾いていたことがうかがえます。
栄養素との関係を見ると、DIIはエネルギー、タンパク質、炭水化物、脂質、一価不飽和脂肪酸・多価不飽和脂肪酸、食物繊維、そしてビタミンB1(チアミン)、B2(リボフラビン)、B6、A、D、E、K、Cの各ビタミン、葉酸、カルシウムの摂取量との間に、統計的に意味のある「負の関連」(=これらの栄養素をよく摂っている人ほどDIIが低い=炎症を抑える方向の食事傾向にある)が認められました。
一方で、摂食行動のスコアと、肥満に関する指標(BMIや体脂肪率など)やDIIとの間には、明確な関連は見られなかったとされています。ただし、ビタミンAとビタミンDの摂取量については、摂食行動スコアとの間に弱い正の相関が確認されました。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
研究チームは結論として、今回の調査ではDIIと摂食行動、そして肥満との間に明確な関連は認められなかったとまとめています。その上で、DII・肥満・摂食行動はいずれも、遺伝的要因、環境要因、行動要因が複雑に絡み合って形作られるものであり、こうした多面的な視点からのさらなる研究が必要だと述べています。
この研究は特定の外来を受診した140名という限られた集団を対象にした横断的な調査であり、ある一時点でのデータをもとにした関連の検討にとどまります。そのため、ここで見られた関連(あるいは関連が見られなかったこと)から、因果関係やすべての青年への一般化を断定的に導くことはできない点に留意が必要です。ある一つの研究として位置づけ、今後の研究の積み重ねを踏まえて理解することが望ましいでしょう。
まとめ
今回の研究では、青年期の食事内容から算出した食事性炎症指数(DII)が、エネルギーや各種ビタミン・ミネラルの摂取量と負の関連を示す一方、摂食行動や肥満との明確な関連は認められなかったと報告されています。炎症と食事、そして肥満や食行動との関係は単純ではなく、今後さらに多角的な研究が求められるテーマだと言えそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:青年における食事性炎症指数と摂食行動および肥満との関連(メルシン大学保健科学ジャーナル・2026年08月)